メール受信設定のご確認をお願いいたします。

AdverTimes.からのメールを受信できていない場合は、
下記から受信設定の確認方法をご覧いただけます。

×

新旗艦店を通じ、“進化するブランドの姿”を伝える――COACH Japan

share

企業やブランドの持つメッセージや世界観を伝える手段として重要な役割を担うブランドツール。一口にブランドツールと言えど、目的によってその種類や手法もさまざま。特にグローバル規模で展開する企業やブランドが用いるツールは緻密なコミュニケーション設計がなされ、情報発信の仕方も多岐に渡る。今、グローバル企業はどんな意図や背景のもと、どのようなツールを通じてメッセージを発信しているのか。ひとつひとつのツールをもとに掘り下げる。

ここでは、『広報会議』2013年6月号に掲載中の連載「グローバルブランドのプレミアムなブランドツール」の全文を転載します。


東京・表参道の旧「ハナエ・モリビル」跡地に今年4月、表参道の新たなランドマークとして誕生した複合施設「oak omotesando(オーク表参道)」。その表通りに面した1階部分にコーチの旗艦店「コーチ表参道」がオープンした。合計210個の半透明のガラスキューブをヘリンボーン状に組み合わせたデザインが印象的なファサードだ。店舗のコンセプトは“ライブラリー(図書館)”。設計は、日本人建築家・重松象平氏が率いるOMA(Office for Metropolitan Architecture)ニューヨーク・オフィスが担当し、建築やデザイン業界からも注目を集めた。

国内9店舗目となる同旗艦店の店舗面積は、1階と2階のフロアで463平方メートル。商品のディスプレイにも使用できる棚(ガラスキューブ)を組み合わせ、図書館のように商品を整理しながら展示できるよう設計されている。「表参道店は、ライフスタイルブランドへの進化がテーマ。幅広いライフスタイル商品をディスプレイすることもできる半透明のガラスキューブを用いて、店舗の外観と内観が一体化するイメージでつくられました。表参道は、世界的に著名な建築家が設計したブランドショップがひしめく特別なエリア。ブランドの世界観と存在感を発信するための要素として、建築そのものも大きな役割を担っています」(コーチ コーポレート・コミュニケーションズ 石田敦子氏)。

brand_tool_A-2

■街と一体化する“ライブラリー”がテーマの新旗艦店
4月にオープンした表参道新旗艦店。ガラスキューブを配し、“ライブラリー”をコンセプトにデザインされた。アパレルやシューズまでトータルに展開するライフスタイルブランドとしての存在感を発信すべく、入り口から最も目につく位置にシューズサロンを設けるなど新たな世界観を打ち出す。

オープン前には、メディアを対象としたプレス内覧会を店舗で実施。建築に対するこだわりを伝えたいとの思いから、今回初めて建築やデザイン、ライフスタイルのメディアを対象とした内覧会も行った。「今回は建築やストアの内観についてより細かい部分まで伝えたいと考え、通常の内覧会とは別の機会を設け、内覧会を開催しました。この建築観点でのメディア向け内覧会では、店舗の設計を手がけた重松氏がNYから来日し直接説明するというセッションを中心に展開し、メディアの方々にとっても満足度の高い構成が実現できたと思います」。

brand_tool_B

■店舗のコンセプトを伝えるこだわりのノベルティ
フェイスブックキャンペーンとして、オープン後4日間に渡り各日先着100名に配られたノベルティにもコンセプトを伝えるためのこだわりが詰まっている。今回配布されたのは、透明のクリスタルで作られた「クリアブロックゲーム」。プレス内覧会でもメディアに配布された。

ソーシャルメディアを用いた店舗集客への取り組みも積極的に行う。現在約7万8000人のファンを持つコーチ・ジャパンのフェイスブックでは、店舗オープン10日前から毎日、表参道店限定の商品をモチーフとしたカウントダウンを実施。店舗オープンに向けたフェイスブック限定キャンペーンも展開した。特に注目を集めたのが、オープン後4日間に渡り各日先着100名様限定でスペシャルプレゼントとして配布された透明のクリスタルで作られた「クリアブロックゲーム」。ガラスキューブの組み合わせを特徴とした店舗コンセプトを伝えるべく制作されたものだが、毎日オープンの30分前には整理券がなくなるほど高い人気を博した。また、オープン後4日間に渡り、モデルがブランドロゴの入った風船を通行人に配布。表参道にシルバーの風船が溢れ、話題喚起のきっかけを創り出した。「コーチは、毎月新商品を発表するなど商品展開のスピードが速いのが特徴。平均で、お客様は毎月一回店舗を訪れることもあり、毎回ワクワク感を与えられる取り組みを行いたいと考えています」。

ブランドの世界観を伝える取り組みの全ては、コーチでよく使われる表現である“マジック&ロジック”というコンセプトから。質の高い製品、そして消費者への戦略が練られたアプローチと最高の演出が揃ってこそ消費者にブランドらしさを届けられるという方針で、ブランドのトップを務めるルー・フランクフォート氏の言葉でもある。新たな旗艦店を軸に、進化するブランドの姿を発信していきたい考えだ。

 

■“進化するブランドの今”を伝えるソーシャルメディア
オープン前に開催されたプレス内覧会。多くのメディアや著名人が訪れ、店舗オープンを盛り上げた。店舗オープンを記念し、表参道店限定で桜をモチーフにしたハンドホルダーや風船を配布。内覧会では南青山のフレンチレストラン「NARISAWA」のフィンガーフードが配られた。

 


現在約7万8000人のファン数を持つ、コーチ・ジャパンの公式フェイスブックページ。新店舗オープン時には、10日前からページ上でカウントダウンを行い、キャンペーンなどを展開した。運営はウェブチームが行う。
ソーシャルメディアでは、フェイスブックとあわせてミクシィを活用中。ミクシィのユーザーには、ブランドのメインターゲットである20~30代女性が多いことから、2つのSNSを使うことでターゲット層への確実なリーチを狙う。

Close up
インナーコミュニケーションにも力を入れているコーチ・ジャパン。企業広報担当が中心となり、毎月1回、東京本社勤務の社員や全国の店舗スタッフを対象に社内向けニュースレターを発行している。写真は表参道店オープンに向け、“特別版”として合計5回に渡って発行された「Omotesando News」。新旗艦店オープンに向けた動きを、ブランドに携わる社員全員に知ってもらえるよう、5回シリーズで発行した。「ブランド力を高めるためには、ブランドの“今”の動きを全スタッフが共通して知ることが必要。新店舗オープンも、一部のスタッフだけに関わる動きでなく全国のスタッフに知ってほしいと制作しました」(石田氏)。

また、日本独自のユニークな「資格制度」も2010年から導入。レザーや修理に関する知識を備えた“スペシャリスト”になるための試験制度など、ブランド活性に向けた取り組みを積極的に行う。

brand_tool_K

店舗オープンに向け作られた社内向けニュースレター。

brand_tool_L

右はストアスタッフの“スペシャリスト”に授与される特製バッジ。毎年1回、レザーと修理に関する試験が行われる

COACH:1941年にニューヨーク・マンハッタンの小さなロフトでスタートしたのがブランドの始まり。女性と男性のための洗練されたバッグ、アクセサリー、ギフトなどを扱うライフスタイルブランド。「高い品質」「揺るぎない本物志向」「優れた価値」の伝統を忠実に守りながら、進化を続けている。