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コラム

楽天大学学長が語る「EC温故知新」

ソーシャル時代に「ファンが集うコミュニティ」が自然発生したバラ苗店のSNS活用法とは?

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この事例を通して、私が大切だと思うのは次の3つです。

(1)熱のこもったマニアックな情報の発信元にはコミュニティができる

木村さんは、「バラに関係ないことはつぶやかないようにしています。というか、バラのことしかやりたくないだけですが」と笑って言います。このように、コンテンツが明確にバラに絞られているのが、「バラの家」の成功の一因です。雑記的に食べたものや風景写真などをアップしていると、そのまわりには「バラ愛好家のコミュニティ」はできにくくなります。

また、木村さんは最近では、バラ愛好家のメンタル面でのケアを意識しています。たとえば、あるとき台風で多くの人が枝を折られてしまった。そんなときに技術的な対応だけでなく、心の持ちようも伝えます。『バラは折れても根が元気なら次々と新芽が出るので、2週間もすれば今回の被害なんか気にならなくなります。前向きにいきましょう』という感じで。そうすると、お客さんから「ちょうど庭に出て気持ちが落ち込んでいたけど、店長のつぶやきで気が晴れました」という返信が届きます。

「売るためのコンテンツ」を考えて発信するのではなく、バラの専門家としてバラ好きな人と会話を楽しんでいるうちに、自然とコミュニティができあがる。これは「ソーシャル(人とのつながり)」として理想的なあり方ではないでしょうか。

(2)商品ではなく、成功体験を売る

買った人が成功体験を味わえるお店には、リピートのお客さんが増えます。買う前に成功体験を味わわせてくれるお店には、新規のお客さんが増えます。買う前も買った後も成功体験のチャンスを提供し続けてくれるお店には、コミュニティができます。

「バラの家」では、実店舗の「バラ塾」で参加者の反応を直接見ながら磨き上げたコンテンツを、ウェブにアップするという流れが確立しつつあります。実際、目を見て話をしていると「この人はここがわかっていないんだな」というのがよく見えるのだそうです。それを元に、自分の伝え方を改善しています。そうしてでき上がったウェブコンテンツに触れた人は、購入前にも購入後にも「バラをうまく育てられた」という成功体験を味わうことができるので、自然と「バラの家コミュニティ」への滞在時間が長くなっていくのです。

木村さんは、「ソーシャルは、ラーメンでいうと“スープのだし”」だと言います。「プロモーション効果で考えると“厚切りチャーシュー”などはドカーンとくるのに対して、スープのだし自体だとインパクトは大きくない。でも、結局、おいしいと気に入られて常連になってもらうポイントはそこ」という意味です。

(3)フロー型コンテンツとストック型コンテンツの違いを意識する

ここまでのところでは、TwitterとFacebookについてしか触れてきませんでしたが、木村さんが一番力を入れているのは「ブログ」です。きれいなバラの写真を入れたり、バラの育て方について写真を多用して解説するなど、毎日更新しています。お客さんも日々の習慣のようにして読んでくれているといいます。

コンテンツ発信を企画する際に、持っておきたいのが「フローとストック」という視点です。TwitterやFacebookで書いたことは、基本的には流れていってしまいます(フロー型のコンテンツ)。これに対して、ブログの場合は、ストック型に近くなります。考え方としては、ストック型のブログを「旗艦コンテンツ」としつつ、それをフロー型のコミュニケーションで紹介するような使い分けをすると、せっかく時間と手間を注いだコンテンツが「消費されて終わり」にならずに済むのでオススメです。ストック型のコンテンツがあれば、コミュニティに後から入ってきた人にも見てもらえるので、コミュニティへの参加ハードルがそれだけ下がることにもなるのです。

※この連載では、「EC温故知新」というテーマで、「自動販売機型のネットショップにはできない売り方」でお客さんを魅了する事例などを中心に紹介していきます。