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コラム

全日本広告連盟 創立60周年特集

従来発想から脱け出せ――塩越隆雄氏(全広連青森大会組織委員会会長、東奥日報社代表取締役社長・主筆)

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広告界の業界団体である公益社団法人全日本広告連盟(全広連)が今年10月、創立60周年を迎えるに当たり、記念大会が5月に青森で開かれました。この企画は全広連と来春60周年を迎える宣伝会議とのコラボレーションの一環で、青森大会のレポートや地域ごとの取り組みを紹介します。

一次産品が最大の資産

全日本広告連盟の長い歴史の中でも、青森で大会を開くのは初めてのことです。東北での開催は2002年の岩手大会以来11年ぶり。しかも、60周年の節目ということで、地域を挙げて取り組んできました。ご参加いただいた皆様に厚く御礼申し上げます。

青森での大会開催に手を挙げたきっかけは新幹線でした。2010年12月、県民の長年の悲願だった東北新幹線が新青森まで全線開通しました。アクセス向上により、地元経済にも明るさが見えたと期待がふくらんだ矢先、あの東日本大震災が発生しました。未曾有の被害に遭った東北は、まだまだ復興の途上にありますが、全国の皆様のご支援により、少しずつ元気を取り戻しつつあるところです。

年初から「アベノミクス」が何かと話題ですが、輸出産業が少ない青森でその恩恵を実感することはほとんどありません。一方で、ガソリン価格の高騰は地元漁業にとって深刻です。政府主導の景気刺激策の効果は一様ではないと言わざるを得ません。

青森は昔から、農業、漁業などの第一次産業を主体としてきました。もっとも自慢できるのは、この素晴らしい自然や質の高い一次産品です。長年にわたって手塩にかけてきた、こうした資産に価値を付けていく取り組みが至るところで進められています。

素材生かしヒット生む

これまで国や県を挙げての大規模開発などさまざまな取り組みをしてきましたが、ほとんどはうまく行きませんでした。もともと、地域にない産業を持ち込んでも難しいということでしょう。

リンゴも米も魚も、採れたものを生のままで売るだけでなく、生産から加工、流通を含めたあらゆる取り組みを進めています。県や自治体のほか、地元の銀行も農業や漁業に出資しています。県外のノウハウも取り入れながら、試行錯誤を重ねています。

こうした取り組みが大きく花を咲かせるにはまだ時間がかかると思います。ただ、素材となる産品はここでしか採れないものばかりです。地域を挙げてじっくり育てていくことが重要です。

地元からのヒット商品も出ています。例えば、鮭の軟骨の抽出物を使った化粧品や健康食品。これは地元企業の角弘(青森市)と弘前大学との共同研究で生まれたもので、PRもほとんどせずに大ヒットしています。無農薬のリンゴも通常では手に入らない人気ぶりです。農薬を使わずにリンゴを栽培するのは大変なことで、この取り組みが注目され、映画化されました。阿部サダヲさん、菅野美穂さん主演の「奇跡のリンゴ」として、ちょうどこの6月から全国で公開されています。

こうしたヒットの鍵とも言えるのは、いずれも従来の発想から一歩抜け出せたかどうかです。鮭もリンゴも素材はすでにあります。そこからどんな価値を生み出すかが鍵を握っています。

優れた商品なら輸出の可能性も広がります。陸奥湾のホタテはフランスにも輸出されています。

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