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絶滅危惧種の違法な密貿易の抑止に期待。 放射性同位体による年代特定法をユタ大学K.ウノ教授らが開発

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7月1日、CITES(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)の国際会議に出席したオバマ大統領は、野生生物の違法取引(密輸)を防止するために、アメリカ大統領令を執行することを告知した。背景には、象牙を筆頭に、稀少生物の国際貿易が、ウガンダの反政府武装勢力「神の抵抗軍(Lord’s Resistance Army: LRA)」の資金源になっているためである。近年、象牙の取引のために虐殺されるゾウの数は急増しており、アフリカのゾウの数は過去40年間で130万頭から60万頭に減ってしまったと推定されている。


没収されてシンガポールからケニアに戻ってきた象牙のなかに立つケニアの野生生物保護チームのメンバー。
All Right reserved ©IFAW Think Twice

ワシントン条約(CITES)の締結により、1990年以降、象牙の貿易は禁止されている。ところが、いまも象牙の密貿易は後を絶たない。というのは、ワシントン条約はその締結以前、1989年までに採取された象牙の貿易までは禁止しておらず、これまで、いつ採られた象牙なのかを特定することは困難だったからである。象牙はいったん製品化されてしまうと、違法性を立証するのが難しい。いつの時代のものか、特定するのが難しく、1989年より前の古いものに見えるような専門の加工業者も存在しているためだ。

そんななか、象牙の年代を特定する技術が開発されたことが発表された。英誌『エコノミスト』や『ナショナル・ジオグラフィック』などが報じたところによると、ユタ大学のケヴィン・ウノ教授らが発見した放射性同位体を用いた方法は、象牙が切り取られた年代を正確に特定することが可能であるという(原典はBomb-curve radiocarbon measurement of recent biologic tissues and applications to wildlife forensics and stable isotope (paleo)ecology, in the journal Proceedings of the National Academy of Sciences)

実は、この方法は、大気圏内核実験によって生じた放射性同位体によるものである。ウノ博士の方法は、象牙の放射性同位体である「炭素14」を使用する。炭素14は半減期が5730年と長く、物質の年代を数十年単位の正確さで特定できる性質をもっている。この方法は、考古学など様々な活用が可能で、特定の象牙の破片が、いつ頃育ったゾウからとられたものかを明らかにすることもできる。

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