コラム

ニューヨーク突撃記 PARTY NYCの挑戦

避けて通れない大問題。「英語」について

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英語ができないディレクターは「人間失格」

しかし、それはまあ良いのです。「ハァ?」なんて言われても死にはしません。

2011年、PARTY設立当時、カンヌで川村と一緒にFAST COMPANYのインタビューに出たのですが、延々としゃべり続ける川村と一言しか発しない私の落差は、今でもネタになるほど

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問題は仕事です。パートナーの川村は、少年時代アメリカで育って、海外の会社で仕事もしてきた人間なので、ネイティブスピーカーと言っても良いほど英語をしゃべります。

 川村さんの過去に連載していたコラム「世界のクリエーティブ」はこちら

社員のトムはベルギー出身です。これは本当にそうなのですが、西ヨーロッパの人たちって、みんな基本的に英語を含めて数カ国語をしゃべるのです。彼は、オランダ語とフランス語と英語をしゃべることができます。

だから、PARTY NYは、コアメンバーが日本人2人ベルギー人1人という構成ではありますが、すべて英語でコミュニケーションを行います。

打ち合わせも英語。当たり前ですがプレゼンも英語。世間話も英語。
最初はトムともまともにコミュニケーションをとることができなかったくらいですから、端的に言うと、「仕事にならない」のです。

私はクリエイティブディレクションやテクニカルディレクションを生業にしています。一人でデジタルの制作をしたりしていることなどもありますが、基本的にはコミュニケーションできないと話にならない職種ではあります。

ここでは、私のような職種の人間の場合、「英語がしゃべれない=無能」なのです。誇張でも何でも無くて、「英語がしゃべれない=人間失格」です。

実際問題、日本で日本語で仕事をしている自分の能力を10とするならば渡米初期の私なんて0.1くらいのものでしかなく、幸いにも川村がいるから、どうしても理解できない重要なポイントを日本語で説明してもらって理解してどうにか受け答えしてやっと0.2くらい、という状況でした。

川村も、私が理解できないと「あーもう。しょうがないなー」的な感じで日本語に訳すことにはなるので、どんどん人間としての自己肯定感は低下していきます。川村は、米国の雑誌で「世界のクリエイター50人」に選ばれるようなすごい人です。それに引き替え私は床に脱ぎ捨てられた靴下のようなものでしかありません。しかもハゲています。「せめて川村もハゲれば良いのに」なんて思うこともしばしばです。

英語上達のためのとっかかりを探し求めた5カ月間

全然内容を理解できない、その上で発言することもできないブレインストーミングを想像してみてください。もしあなたが企画を生業にしている人ならば、それは地獄であるはずです。現実的には、地獄どころか、眠くなってきます。当然です。人間、脳に対して情報の入出力が無いと、眠くなります。

ここまでのコラムでいろいろかっこいいことを書いてきましたが、これが現実です。ニューヨークの仕事の現場では、英語がしゃべれない人間は無視されます(もちろん、プログラマーやデザイナーと言った、職人的な側面のある人はまた違います)。

私は絶望しました。気がつけば、楽天メソッドで構築された「3週間で英語が完璧にしゃべれるようになる!」みたいな情報商材のウェブサイトを眺め続けていたり、しまいにはGoogleで「英会話 ロボトミー手術」みたいなキーワードで検索をかけて、ダイエットにおける脂肪吸引のように物理的に英語力が向上する方法が無いかを探したりしている自分がいました。

冷静に考えて、私は1つの仮説を立てました。言語能力というのは二次関数のような成長曲線を描くはずだということです。

最初のうちは理解もできないし、話すこともできない。だから眠くなる。しかし、少しでも理解できて話すことができれば、眠さも減り、学習量は増えていくはず、ということです。何かとっかかりがあれば、それをきっかけにどんどんコミュニケーションの量が増え、どんどん英語力が向上するはずだ、と考えました。だからまずはとっかかりをつくるための努力をしました。

とっかかりが無ければ、ニューヨークにいようがどこにいようがしゃべれるようになるわけがない。それは事実だと思います。ずっとこちらに住んでいるのに、あまり英語をしゃべれない人だって結構いるのです。

次ページ 「「何でもいいから話す」が大事」へ続く

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