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谷山雅計審査委員長と振り返るTCC賞2014(後編)

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TCC賞の発表から1ヶ月が経ち、6月からアド・ミュージアム東京ではTCC広告賞展が開催されている。ここでは今年の受賞作品とそのアイデアのコアを記した企画書やコンテも見ることができる。こうしてあらためて全作品が揃い、並んだところで、TCC賞の今年の審査はどうだったのか。TCC賞の広報・PRを務めたNEWSYタカハシマコトさんが聞きました。

※前編はこちら


TCC賞2014審査委員長 谷山雅計氏(谷山広告)

聞き手:タカハシマコト(NEWSY)

メディアや仕組みが新しくなろうと、やはりコアアイデアが重要

タカハシ:新人賞応募数は前年より微増となり、一般部門の応募はかなり増えました。審査当日に受賞結果を発表したこともあり、今年は受賞作品がSNSで拡散し、ネットニュースにも掲載されました。これまでよりTCCが一般に開かれた、という印象がありました。

谷山:昨年の審査委員長である佐々木宏さんが、受賞作品それぞれの代表コピー決めて、コピーで発表した方法を今年も引き継がせてもらいましたが、よい点と誤解される点両方あるなと、正直思いました。

審査をした人なら誰でもわかることだと思いますが、今は一行か、多行かといったら、多行で勝負している広告が圧倒的に多い。

「ぜんぶ雪のせいだ。」や「エラそうに新聞なんて読みやがって!!!」以外の、ほぼ多くのものは多行の力で選ばれています。

でも発表のときに、「ソフトバンク」〇〇篇と発表してしまうと、それってどのCM?そんなタイトルだったの?ということになり、人の話題にのぼりにくい。だから、「この広告のポイントはこのコピー」とはっきりと示したほうが話題にはしてもらいやすかったのではないかと思います。

一方でこういう形で発表すると、そこだけを評価したのか?と思われてしまうこともあって…。批判的な意見は、そうした理由から生まれているんじゃないかなと思い、難しさを感じました。

コピーライターズクラブだから、審査では言葉のことを思いつつも、当然全体を見ている。全体を見て評価しているわけですが、それぞれの言葉をポンと発表したほうが、いろいろな人が関心を持つ「きっかけ」にはなりやすいと感じました。

その中でWeb上の反応を見ていてなるほどと思ったのは、サントリーBOSSの高見盛。実は皆、CM全体以上にこの一行がいいと思っていたんだということに気づかされました。

「この惑星には、愛されるという勝ち方もある。」という一行がいい!という声が圧倒的に多かったので、ああ、そうか、あれはそのコピーが決め手だったんだと納得しました。

ものを売るための本質の言葉を選ぶのか、その広告の中で記憶・印象に一番残る言葉を選ぶのか、どの言葉をチョイスするのかは正直なところ難しいです。

タカハシ:今年の特徴として「CAUTION 雪道は怖い」や、「ぜんぶ雪のせいだ。」と、偶然どちらも雪ですが(笑)、みんなが「あ、それ知っている」というものが選ばれて、世の中と広告の関わり方が少し近くなった感じがします。

谷山:広告は「それ、知っている」という状況にするためにつくっているから、世の中で有名になったものを評価したいという気持ちは審査委員長としても、個人としてもあるんです。

一方で、「この出稿量では世の中に知られることが難しいだろう」と思われるものももちろんあって、広告賞としてはそういうものも評価すべきであると。

昔は新聞の突出し広告がいくら素晴らしくても、それが世の中に知られるには限界があったかもしれない。でも、いまはWebの力によって、ちょっとしたことでも知られやすくなっている。審査しながら、これ、そんなに知られているんだと驚くこともありましたから。

そして、「これWeb上でも話題になっていた」とか、意外に自分がそういうことを気にする人間だということもわかった(笑)。広告で目指すことは、出稿量以上の効果を生み出すことでしょうが、いまはそういう予算の限界は知恵を使うことで、昔より超えやすくなっているのかもしれないですね。

本田技研工業の「Sound of Honda / Ayrton Senna 1989」もWebで話題を集めたものですが、TCC賞ではその仕組みを含めて評価されたといえるでしょう。

これは世界の広告賞を総ナメにしている仕事ですが、実は僕は最終的なTCC賞では投票しませんでした。

けれど、あの作品がTCC賞の一つに選ばれたことで、賞に多様性が生まれたと思います。コアなアイデアという本質の部分は変わることなく、新しい技術、テクノロジーによって、新しい表現が生まれてくる、とても優れた例だなと思いました。

次ページ 「世の中がコピーを話題にするようになったのは」に続く