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コラム

いま、地域発のクリエイションが面白い!第2弾

温故知新のクリエイティブマインドで、これまでにないプロダクト開発にも挑戦

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「これからの日本は、地域が元気にする!」――ネットの登場により、日本全国どこにいても、遠く離れた他の地域と、さらには国境を超えて広い世界と向き合うことができる現在。
地域で活動するクリエイターは、その土地の特性を生かしたプロダクトやサービス、表現を生み出すのはもちろんのこと、その魅力を世界に向けて発信することで、業界全体に大きなムーブメントを起こしたり、日本の、そして各地域の魅力を再認識してもらうきっかけをつくることもできるようになりました。
コミュニティの密度が高いからこそ実現する企画、その地に暮らしているからこそ発想できるアイデア。テクノロジーの発展によってそこに情報の発信力、メッセージの拡散力が加わったことで、地域で働くクリエイターができることの可能性は大きく広がりつつあります。
第1弾の好評を受けて実現した、この 「いま地域発のクリエイティブが面白い! Vol.2」には、広告のみならず、プロダクト、パッケージ、空間、建築と幅広い領域のクリエイター9人が登場。地域で働くクリエイターが感じている「限界」、そして「可能性」とは?
等身大で、自分の仕事の今と、未来に向けた思いを語ります。
   


STARRYWORKS inc. 木村幸司

kimura

はじめまして。大阪のプロダクション、STARRYWORKS inc.の木村幸司です。
デジタル領域を中心に、主に関西で広告やブランディングの仕事をしています。

昨年、会社を設立して7年目を迎えました。周年を記念したプロジェクト「DANCE」では、大阪と東京で映像や照明、独自開発した入力デバイスなどを使い、9つのインタラクティブな作品すべてが会場内で流れる1つの音楽にシンクロするという、空間全体を使った体験型の展示を行いました。デジタル領域の表現をぎゅっと凝縮した空間は多くの人に楽しんでいただくことができ、その後の人や仕事のつながりが大きく広がりました。

プロダクトやエンターテインメント領域に大きな可能性

「地域発のクリエイション」というテーマでのリレーコラムということですが、ただ生まれ育ったのが大阪で、そこで自分たちが良いと思うものを作ることを仕事として続けていきたいと思っている――ただそれだけだったりします。ですので、特に「この地域だから」というこだわりはありませんが、今後の展望について思っていることを書いてみたいと思います。

インターネットの登場以降、個人の発信力がどんどん強くなってきて、内容の面白さや重要度が高ければ、情報は一人歩きし、瞬く間に世界中に広がるようになりました。今後それはさらに加速し、マス媒体や大企業と、一個人の発信力は限りなく対等に近づいて行くのではないかと考えています。

そんな世界の中では、プロダクトの情報を広く告知するために大きな広告予算をかける必要性が低くなり、プロダクトそのものに先進性や魅力的なデザイン・機能・価格設定などがあれば、消費者が勝手に情報発信してどんどん広まっていく。逆に、有名タレントを起用してプロダクトの魅力を訴えても、一般消費者からの評価が低ければ、認知だけは広まってもなかなか購買には結びつかなくなると思います(大阪人ってすごくシビアなので、特にそういう傾向が強そうです)。

あくまで僕の考えですが、もしそんな世界になったら、できあがったプロダクトを良さそうに伝えるためのクリエイティブじゃなくて、良いプロダクトを作るためのより本質的なクリエイティブや、消費者がクリエイティブに直接対価を払うようなエンターテインメントの分野などにシフトしていかないと、5年後、10年後にはクリエイターの存在価値はなくなっているんじゃないかと思っています。

そうした中で、数年前から、まずは自社でB to Cのプロダクトやサービスを作りたいと考えていて、はじめに作ってみたのが「いろぴこ」という知育アプリです。

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「いろぴこ」

言葉を覚え始めるころの子どもは、母親がりんごを見せて「あか」と言うと、それを真似して「あか」と言います。しかし、「あか」という言葉が「Apple」の意味なのか、「Red」の意味なのか、はじめのうちは理解していません。そういった子どもが色の概念を理解できるようになるためのツールとして作りました。

開発のきっかけは、社員の一人が子どもの様子を見ていたときのこと。当時ちょうど言葉を覚え始めたくらいの子だったのですが、その子が、色の概念は理解できてないけれど、単純に親の真似をして「あか」と言っているんだなということに気づいて。ごく身近な人のために作ることで、高いモチベーションで細部までこだわって制作できました。

ちなみに「いろぴこ」というネーミングは、「いろ」の部分を「かず」や「かな」などに変えてシリーズ化したいと考えて決めました。

いくつか賞をいただいたり、App Storeのレビューでも高評価をいただいていますが、ビジネスとしては相当な赤字です(笑)。ですが現在も、他にもいくつかのプロダクトやサービスを企画・制作中なのでいろいろ仕掛けていきたいと思っています。

次ページ 「“温故知新”のクリエイティブ目指す」に続く