【前回コラム】「志は高く、目線は低く。」はこちら
まずは、自分の実感で商品と向き合う。
ある商品を担当した時、僕がいちばんはじめに考えることは、「自分は、その商品を買いたいか?」ということです。
「買いたいとすれば、どこを気に入って買うのか?」
「買いたくなければ、何が気に入らないのか?」
「自分の知ってるあの人はどうだろう?買いたいと思うだろうか?」
そのようなことを考えながら企画に入るようにしています。自分の実感の中で、具体的に商品と向き合うことで、自分と商品との距離がぐんと近くなるように思います。
客観的なデータももちろんだいじですが、それを活かせるかどうかは自分次第。自分がそのデータから何を読みとれるか、どんなことを感じとれるか、ですもんね。同じデータを見たとしても、人それぞれに捉え方が違っていていいと思います。だからこそ、いろんな発想が生まれるのだと思うのです。
人それぞれに感じることが違う、それは実にすばらしいことなんじゃないでしょうか。
僕は、自分の実感を信じたいです。だいじにしたいし、もっと磨きたいです。自分の実感を信じて、できるだけ自分らしい企画をつくりたいと思っています。
なるほどと思った意見は素直に受け入れる、そういう柔軟さは持っていなくちゃと思っていますが、僕たちの仕事はいい意味で「公私混同」すべき仕事だと思うのであります。
アイデアは、自分のまわりにたくさん落ちている。
アイデアは、自分の実感の中や生活のまわりにたくさん落ちています。
僕の場合も、自分の経験をもとにしてつくった企画がけっこうあります。
たとえば、月桂冠「ザ・カップ」のCMの場合もそうでした。
僕がまだ若いころ、ある仕事を頼まれたときに、うちの営業部長から、
「この仕事は、おまえの好きなようにやっていい。ただな、支社長からこの仕事は絶対に獲れと言われてるんや…。いや、おまえの好きなようにやってくれていいんやで。ただな、支社長からは…」
というような、かなり嫌なプレッシャーをかけられたことがありまして(笑)。そのときのことを思い出してつくったんです。
会社帰りのサラリーマン。
電車、帰り道、さらには自宅の部屋、風呂場などなど、
あらゆる場面でそのサラリーマンのすぐ後ろにぴったりくっついて、
「こんどの仕事はすべてキミに任せる。ただし、失敗は許されんぞ…。」と
繰り返しつぶやき続ける上司。
サラリーマンがザ・カップのふたを開けた瞬間に上司が消え、
その上司は幻(プレッシャー)だったことがわかる。
で、ほっとしてお酒をのむサラリーマン。
そこに「忘れましょう」のスーパー。
関西テレビが新社屋に移転したときのCMも、自分が新入社員のころのことをネタにしました。今はそういうことはいっさいなくなりましたが、当時はボーナス日になると、うちの社内を北新地のお店のママさんたちが歩き回られていまして…。目的はツケの取り立てです(笑)。そんな昔の光景を思い出して、お店のママさんたちが移転を知らずに、無人の旧社屋を訪れたとしたら…きっと焦るだろうなあ(笑)、などと想像しながら企画したんです。
無人の関西テレビの旧社屋に、クラブのママさんたちが現れて、
ママ 「カンテレさーん!おれへんがな…。カンテレさーん…!
えらいこっちゃ、逃げたんちゃうか…。ツケ払うてえーーー!」
スーパー 関西テレビは、引越しました。
サウンドロゴ カンテーレ引越し♪※このバージョンの他に、「バイク便篇」と「出前篇」も。
この2つのCMはけっこう話題になりましたし、賞もいろいろいただきました。自分の実感や経験は、実際の仕事につながります。アイデアというものは、結局は自分の中にあるものからしか生まれない、ということなんでしょうね。
皆さんも実践されていることだと思いますが、身の回りのおもしろいことや好きなことをストックしておくと、きっとどこかで役に立つと思います。
ちなみに、このコラムを書いている今日は、昔からずっと仕事をしている仲間と昼ごはんを食べ、お茶を飲みまして。いつものようにいっぱいしゃべって、あほな話で盛り上がりました。そういう日常の何気ないことの中にアイデアの素が落ちてたりするんですよね。
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