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コラム

戦略PR視点で、大学・地方・アートを考える

3限目「先生!大学の広報って何をするんですか?」「オープンキャンパスの売りのコンテンツは何ですか?」

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結局…あなた自身がコンテンツ!

大学のオープンキャンパスに話を戻す。

講義のカリキュラムの詳細、教授陣のプロフィールや人柄などにも触れてもらうことはもちろん大切だ。現役生の創造した作品や企画したプロジェクトを見てもらう機会も大切にしたい。一方で、高校生たちが本当に知りたいのは、実際に通っている学生たちのこと。例えば…どこの出身のどんな学生がいるのか、どんな生活をしていて、どんな顔、どんな話し方なのか。バイト先はどこで、時給はいくらくらいで、雪の日はどうやって通学しているのか。休みの日はどういったところに遊びにいくのか。授業は楽しいのか。出欠の確認は厳しいのか。入試は大変だったのか。AO入試までに何を準備すればいいのか。ゼミではどんなことをするのか。。。

もちろん、あんまり偏った個人的な意見ばかり高校生に伝えてしまってはいけないが、人は身近な「ナマの声」を聞くと安心する。特に大学についての「本音」を聞かせてもらえれば、大学に好意を持ってもらえるのが普通だ。

これを「共感」と呼ぶ人が多い。

戦略PRでは戦略立案上、「空気作り」という言葉をよく使う。しかし「空気作り」は「考え方(コンセプト)」である。いわゆる「旧来のパブリシティー」(商品のスペック訴求)との対比の意味合いが強い。

結論として「空気作り」はひとつの企業や団体が、少しばかり頑張ったとしても、そう簡単に「作る」ことはできない。

また戦略PRの立案自体が「メディア露出」を必ずしも担保する(保証する)ものではない。メディア露出を狙うためには、そのための施策と準備が別途必要となる。

「ふわふわっ」としていてよくわかりません!

そう。どうにもこうにも「ふわっ」としててつかみ所のない活動だという印象を、常に戦略PRは持たれがちだ。

私は戦略PRの企画を企業などに提案する際、多くの場合、エクストリームユーザー(極端なユーザー)とまずは接してみる。「極端」であるからこそ、こうしたユーザーから得るものは多い。

仮に、オープンキャンパスの例に置き換えて考えてみる。

遠方からオープンキャンパスに来てくれるような高校生がいる。こうした高校生の多くはありがたいことに、この大学に入りたいとすでに思ってくれている。(マーケティング用語での「エクストリームユーザー」に近い)

こうした学生の「ナマの声」に耳を傾ける。

それほど熱心ではないけれど少し興味を持ってくれている一般的な高校生の声とは異なる「洞察力」や独特の「ニーズ」が含まれていることがある。こうした声をマメに拾い、自分たちの方がチューニングを行っていく。

私が広報の手法や戦術を、時にあまりこだわりなく、どんどん変え続けていくのはこうした理由からだ。自分自身の思い込みや潜入感を、スクラップ・アンド・ビルドして立ち位置(ドメイン)を変化させていくしか成功の道はない。

どこかで昔聞いたような「ベタ」な表現になるが、成功する戦略PRの「コツ」は、奇をてらったアイデアや、高いコストをかけた派手な企画を行うことではない。成功するまで「チューニング」をし続け、自分自身の戦術を変化し続けることにある。戦略は滅多に変えないが、戦術は毎日変えたいくらいだ。

「先生!大学の広報って何をするんですか?」「オープンキャンパスの売りのコンテンツは何ですか?」という学生からの素朴な質問が「戦略PR」に関する、ずいぶんとややこしい話になってしてしまった。