絶賛相次ぐ12月公演の演劇『水仙の花』
澤本:僕は昨日、山内さんの芝居を見てきました。
中村:中村:12月4日~13日までやっている『水仙の花 narcissus』(城山羊の会/作・演出 山内ケンジ)。今回の公演のテーマは?
山内:テーマ・・・別にないな(笑)。
中村:澤本さん言える範囲で、これから楽しみにしてらっしゃる方もいると思うので。
澤本:明日まであるからネタバレしちゃうとあれですけど、演劇っていろいろあって、たとえばひたすら笑わせにいこうとするのがあるじゃないですか。今、世田谷のパブリックシアターでやっている福田雄一さんの演劇(『才原警部の終わらない明日』)だと、とにかくコント的なことを積み重ねていって、ストーリーをつくっていく。でも、山内さんの演劇は他と比べて、何が言いたいのかわからないけど、そのうちに世界に取り込まれていって、最後ちょっと怖いなと思う、毎回。
中村:他の演劇とちょっと違うんですね。
澤本:今回も面白かったんですよ。でも、面白かった理由が自分のことを後ろから突かれてる感じで。「お前、こういう人間なんじゃないか?」みたいなことを言われている気がして。共感しちゃいけないだろうけど、共感しちゃったという感じが。説明になってないね。
権八:人間の暗部というか、言葉で説明できないような如何ともし難さみたいなものがいつもあるじゃないですか。山内さんのお芝居って。今回は僕見てないんですけど、そういうことですよね。共感しちゃいけないけど、しちゃうみたいな。
澤本:そう。今度上映される映画もそうだけど、普通、人ってここで笑っちゃいけないというところがあるでしょ。人が死ぬとか。そこで笑っちゃうんだよね。すごく面白いの。なんで俺は人が殺されてるシーンで笑っちゃうんだろうと。たぶん自分は、本当はそういうのを持っていながら隠しているというのをつまびらかにされる感じが映画にも演劇にもあって。
権八:ちなみに、山内さんご自身も澤本さんが言ったようなことを意識してお芝居は書かれているんですか?
山内:意識かどうかわからないですけど、ハッピーエンドや明るく楽しく前向きなものというのは書いたことはないですね。CMでもそうですけど。
権八:決して明るく楽しいという風にはくくれないものが多いですよね。どこかそういうことを少し引いた視点で揶揄しているような、うすら笑っているような。
中村:湯川専務の話も結局、専務は降格したり、滝沢秀明くんにいいところをずっと持っていかれちゃったり。視点で言うと悲哀ですよね。
権八:だから、ああいう上手ではない素人の人が出る薄気味悪さやそういうのも含めて楽しむというか。ある種、悪趣味的なところがあるんだけど。たまたま今日、螢光TOKYOの前田康二こと“マエコー”がLINEしてきて、今回のお芝居があまりにも良かったと。彼らがいつも公演のチラシをつくってるんですよね
山内:そうそう。前田さんや手島さんが。
権八:感想を山内さんにメールしたんですって。そしたら山内さんから「そういうことは僕に言わずに拡散してください、SNSで」と言われたらしくて(笑)。それちょっと読んでいいですか。お芝居「水仙の花 ナルシサス」の感想です。
螢光TOKYOの前田康二さんから権八さんへのLINE
本当にとんでもない劇ですごすぎるレベル。本も演出もレベルがやばい。いろいろな意味で今まででダントツの劇だ。まりか(松本まりか)は半開きの口も顎の動きももちろんエロいけど、声。小さい声でよく聞こえる。そう、この劇、静かなんですよ。吹越満さんもそういう声だから、冒頭から静かだから息がしにくい。僕は何回も唾を飲んで、その音が隣に聞こえて恥ずかしかった。途中は変にリアルでベタでわかりやすくて面白すぎなんだけど、最後のちょい前あたりから何か様子が変で、最後グシャングシャンにわからなくなるから、でも美しい画と音でわかるからもうどうでもよくなる。みんな息止めて変な感じで、変な脳内物質が出るようなすごい劇です。すごいレベルです。三鷹(三鷹市芸術文化センター)は深浦加奈子さんが守り神のような気がして、そういう意味で深浦さん仕込みの静かな凄まじさをハイレベルな演者が淡々とこなしていて、岡ちゃん(岡部たかし)、岩谷さん(岩谷健司)も大人の魅力ですごいし、輪子(安藤輪子)ちゃん、あの歳で全てわかってるし。あぁ、でも吹越さんがやっぱりこの大人の空間を生み出してるんですね。本当に大人。本当、どんな領域に山内さんはいってしまうんでしょう。怖い。ベタと繊細さの巧妙な融合。それを美しく見せる。あぁすごい。ありがとうございました。
澤本:そんな長いLINE送ってくるの(笑)?
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