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アウディ、ローソン、ライフネット生命保険が語る「デジタル時代のブランド戦略論」

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UXの定義をどのように捉えるか

—UXを考える上では、どのようなことが課題だと捉えていますか。

井上:「UXが重要」ということには誰もが賛同しますが、そもそも、どういうタイプのUXがあるのか、何をUXとするのかが、あまり認識されていないと感じます。Webサイトの表示速度がUXだと認識している経営者も少なくない。ただ注意すべきは、UXはブランドを形成するあくまで一つの要素でしかないということです。ブランドフィロソフィへの共感をはじめ、ブランドとしての価値をつくる活動は別に行う必要があります。商材にもよりますが、UXだけでブランドがつくられるわけではない。ただデジタル時代では、とりわけ重要であるにもかかわらず、UXが見過ごされがちだということが問題なのです。

白井:ローソンのようにリアルな店舗を持っている場合は、リアル空間でのUXこそが重要です。レジにおけるオペレーションもその一つであり、世の中においてコンビニエンスストアが担う役割が広がっている分、レジ内のオペレーションも複雑化しています。ローソンでは約20万人の店舗スタッフを抱えており、先ほどお話したように、オペレーション全般の効率化も今後に向けた大きな課題だと考えています。

岩田:多くの人にとっては、保険自体、できればあまり考えたくないものだと思います。それでもきちんと情報を見ていただくためにはどうすれば良いのかを常に考えています。最先端のUXを取り入れることが解であるとは限りません。それよりも、デバイスに応じて提供する情報の量や質を変えることのほうが重要かもしれない。PCの場合は1 ~ 10まで情報を出す一方で、スマホの場合は情報を要約して掲載したほうが、結果として商品理解が進むこともあります。

効率良くフリークエンシーを高める

—SNSの浸透によって接触機会が増え、以前よりも企業とユーザーの距離感は近くなりましたね。

井上:そうですね。その文脈で言うと、自動車業界では純粋想起が重要だと考えています。国内においてAudiの純粋想起が高くないことは課題であるため、現在は「1日1Audi」をチーム内での一つの標語にしています。これは、1日1回何かしらの形で「Audi」という単語に触れてもらおうというもので、施策投入のタイミングを計算するなどして、ターゲットとなる方に可能な限り毎日Audiブランドに触れてもらえるよう工夫しています。ある企業からメールマガジンが毎日届くと、ユーザーはウザいと感じてしまいますよね。ただ毎日その企業に接することで、いざ必要になったときに「一応あの企業も見ておくか」と思われたりもする。当然どう想起されるかといったことも重要なので、やりすぎないなどのバランスは重要です。自動車に関して言えば、純粋想起のためにはフリークエンシーが重要だと認識しており、デジタルだからこそできるブランディングだと捉えています。

日本ローソンの情報を発信しているSNS「WeChat」(中国名は微信)。同サービスは、中国全土で6.5億人以上のアクティブユーザーを有する。

白井:たしかに、フリークエンシーは重要ですよね。当社でもTwitterは1日に数回投稿していますが、最近は、より見てもらえる時間を考え、効率的にフリークエンシーを上げることを考えています。たとえば、朝は通勤中にスマートフォンを見る人が多く、昼や夜にローソンに立ち寄ってもらう情報を朝に投稿することが多くなっています。また、インバウンド需要の高まりから、「WeChat」でローソンの情報を発信し、「Weibo」での発信も準備しています。新しいサービスに先行して取り組み、ネット上などで事例として紹介されると、それほど広告を投下しなくともフォロワー数を増やすことができます。

ライフネット生命保険では、HPのほかに「ライフネットジャーナル オンライン」というオウンドメディアを通じて、コンテンツマーケティングも実践している。

岩田:当社もテレビCMやオンライン広告、経営陣によるソーシャルメディアでの活動、セミナーなどを通じて、どれだけお客さまとの接触機会をつくれるかを考え、活動しています。また、デジタル上で盛り上がったことはすぐに忘れられがちですが、6、7年前に公開したエンタメ系のコンテンツを見て当社のことを知り、最近加入したという契約者もいます。デジタル上の施策においては、単純な接触回数のコントロールだけではなく、しっかりと記憶に残り、購買行動につながるような施策を継続して展開していくことが、重要だと考えています。

次ページ 「座談会を終えて…」へ続く