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企業はネット上の「批判」「誹謗中傷」にどう向き合えばいい?(後編)

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SNSやブログを通じて誰もが自由にコミュニケーションができる今、不特定多数からの批判にさらされるリスクも身近なものになった。個人や企業、メディアはどう対応すべきか。ネット社会のメディアリテラシーを問う座談会の後編です。
※前編はこちら

企業は批判にどう向き合うべき?

徳力基彦(アジャイルメディア・ネットワーク 取締役 CMO ブロガー)
NTTなどを経て、2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーとして運営に参画。「アンバサダーを重視するアプローチ」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。

徳力:2014年末に起きたまるか食品の「ぺヤング」ゴキブリ混入事件は、最初に企業側が「あるわけない」と思い込んでしまい、写真をアップした人を結果的に悪役にしてしまいました。しかし、この写真をアップした人は結構なぺヤングファンだったんですよね。で、実際に調べたら、製造工程で混入した可能性が高いことが分かり、最終的には生産ラインを止めることになりました。本当のクレームなのか、それともネット上の愉快犯なのかの見定めが重要だと思います。

浜田:ネット上の一部の意見なのか、それとも大多数がそう感じているのかの見極めも大切ですよね。根強いベッキーへの批判でもそれを痛感しました。

徳力:不倫関係の炎上は難しいですよね。日清食品が今年3月に放映した矢口真里さんを起用したカップヌードルのテレビCMが放送停止した件が象徴的でした。矢口さんの起用の仕方のセンスが良かったかどうかは別の議論が必要ですが、ネット上では評価している人も多かった。ただ、子供が見ている時間帯にもあのテレビCMを流してしまったので、主婦層が怒る気持ちも分かります。

境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)
東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したのちロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料マガジン「MediaBorder」発行人。

境:それは、どういう種類のクレームだったのでしょう?

徳力:カップヌードルのCMの場合はネット炎上というよりも、主婦層からのリアルな電話クレームだと推測しています。最近も、エイチ・アイ・エスが旅行中の飛行機内で東大美女が隣に座って得意分野をレクチャーするという企画を発表した後に、中止に追い込まれたケースがありました。企業が企画を途中で中止するケースが増えてますよね。

境:こちらは、ネット炎上ということですね。

徳力:個人的には、何をやるにしても批判はありえるので、今後は企業側の理念とか覚悟が重要になってくると思っています。エイチ・アイ・エスのケースで言えば、「東大」と「美女」はどちらも炎上しやすい要素です。ある程度炎上を覚悟して話題を狙いにいくのであれば、胸を張ってやるべきだったと思います。「エイチ・アイ・エスは旅行の移動時間も楽しくします」とか「今後の旅行の新しい形として隣に座る人を選べる旅行を提案する」というような意図をセットで発信していれば、もう少し今回の企画の捉えられ方も違ったと思うんですよね。せっかくの企画を発表した後で簡単に取り下げることは、企画全体の背景に非があったことを認める形に見えますし、企業のブランドイメージにとっても良くないように思います。

中川淳一郎(編集者/PRプランナー)
一橋大学商学部卒業後、博報堂で企業のPR業務を請け負う。2001年に退社。PR活動、ライター、雑誌編集などを経てニュースサイト編集者となる。現在は編集・執筆の他、情報発信に関するコンサルティング、プランニングを行う。

中川:そうですね。「東大美女」以外に第5弾ぐらいまで準備して、バリエーションがあると良かったかもしれないですね。

浜田:ゴール設定があり、志がしっかりしていれば、「自分たちの考えはこうです」と主張できますよね。「AERA 2015年9月14日号」では、LGBT特集を組みました。そのときにティファニーが出稿してくれた純広告は男性同士のカップルが指輪をはめているというある意味〝トガった〟表現でした。その広告にもインスパイアされて、内容を考えることがで、その号の表紙のAERAの「A」という文字はレインボーにしました。やるならその問題に真剣に向き合う、という姿勢を見せたいと思ったのです。

徳力:そうですよね。コミュニケーションに携わるのであれば、その表現は研ぎすまさなければいけない時代になったということなんだろうなと感じています。炎上する可能性のある企画をやるのであれば、どこから攻撃されてもちゃんと反論できるような理念とか覚悟を持ってやることが重要なのかなと思います。

話題になるということは、必ず何かしらの批判が起きやすい状態だと思います。でも企業の宣伝的には全く話題にならないのも困りますよね。

境:東京五輪のエンブレムをはじめ、世の中が「炎上したら、撤回する」というトレンドになっています。撤回しないムーブメントを発信することも必要でしょう。

そういえば、以前に日本テレビの土屋敏男プロデューサーから聞いたのですが、電波少年の放送終了後に掛かってくるクレームの電話に、番組出演者の松村邦洋さんを出させて、実際にクレームの電話を掛けてきた人のところに土下座にいかせるという企画を行ったようです。その様子をクレームの翌週に放映したところ、批判の電話が一切無くなったようです。

浜田:それも、メディアの姿勢と、コンテンツの制作力ということかもしれませんね。

次ページ 「メディアや受け手の「責任」はどこへいく?」へ続く