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コラム

アンバサダー視点のススメ

丸亀製麺のファンに向けた取り組み「試食部」は、なぜ生まれたのか

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【前回の記事】「カルビーには「お客様の声」に耳を傾ける企業精神が根付いている」はこちら

今回のゲスト

トリドールホールディングス マーケティング部
大洞マキ氏

2005年より人材採用活動全般、PA採用センターの設立、人材教育などに従事。その後、CSR部門、ES部門の立上げを経て、2012年よりマーケティング部を立上げ、現在に至る。「丸亀製麺」テレビCM制作をはじめとする国内全業態のマーケティングおよび販売戦略を担務、現在はデジタルマーケティング、アンバサダー活動、各業態のブランドイメージ戦略を推進中。

 

トリドールホールディングスの「丸亀製麺」は2016年から、アンバサダープログラムとしてファンに新商品を紹介する「丸亀試食部」を行っています。具体的には新発売の告知におけるジレンマなど、今までブランドが抱えていた課題を解決するためにファンと一緒に新しいプロモーションに取り組んでいます。さらに、これまで見えづらかったソーシャルメディアでの成果を評価する指標のあり方にも取り組みを広げています。ファンの活動を可視化することで見えてきた試食部の成果について話を聞きました。

発売後1週間の機会ロスを解消したい

藤崎:私は個人的にも丸亀製麺のうどんが大好きなので、そのビジネスモデルに興味を持っていました。店舗の独特の雰囲気も含めてファンはたくさんいるため、いわゆるファンマーケティングであるアンバサダープログラムに取り組んだのは自然な流れだと思いました。とはいえ、どのように理由で始めたのか。あるいは効果を上げているのか。お聞きしたいことばかりです。

大洞:はい、アンバサダープログラムに取り組んだきっかけは、新商品の周知を改善することでした。

丸亀製麺では季節限定商品や新商品を定期的に発売しており、お客さまが発売を知る手段は、店頭に貼るポスターが主流です。理想でいえば、発売に先だってプレスリリースや宣伝を行い、そこから心待ちにしていた常連のお客さまが発売日にいらっしゃって、となるんですが、リリース以外の事前告知は行っていません。また、新商品のテレビCMをオンエアするのは発売1週間後なんです。

藤崎:そうだったんですね。なぜですか。

大洞マキ氏

大洞:一番はオペレーションの心配です。例えばテレビ番組で紹介された翌日は、多くの店舗でお客さまが急増して混乱する場合があります。話題になることは大変ありがたいのですが、丸亀製麺の場合は粉から麺をつくるのも、すべて店舗で手づくりなのです。

できたてをお出しするのが何よりものコンセプトなので、現場のオペレーションが混乱して、お客さまに良いサービスが提供できなくなるリスクを避けたいというのが一番の理由です。

また、新商品のプロモーションに力を入れ過ぎて、店舗にいっせいに人が来た結果、お店が混雑して、お客さまがゆっくり食事できないのも申し訳ないという考えもあります。

藤崎:確かに全部店舗でイチからつくっている業態なので、仕入を多めに入れておけばいい、といったものではないですよね。

大洞:そうなんです。新商品はいずれ食べてもらえますし、お客さまの滞在時間も短い業態ですので、スムーズに商品を出せる体制を最優先すべきという意見が社内では強かったのです。

その結果、悩ましい状況が生まれます。当然のことですが発売から10日間は、新商品の販売数が伸び悩むんですね。それを変えたくてソーシャルメディアに力を入れていた時期がありましたが、なかなか大きな動きがつくれずに悩んでいました。

藤崎 実氏

藤崎:そこで、アンバサダープログラムに着目したというわけですね。

大洞:社内説得には指標が必要でしたが、最近はその効果をようやく数値化できるということでしたので取り組むことにしました。

藤崎:企業の担当者の方にとっては新たにソーシャルメディア系の施策を行いたくても、かけた予算分だけのリターンをどうやって計り、KPIを立てていくかというのは課題ですよね。

大洞:そこは私たちにとっても悩ましい部分でした。それがある程度、数字で示せたので、スモールスタートで始めることにしました。

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