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コラム

クリエイティブシティ アムステルダムから送る「越境のススメ」 

アムステルダムの中心にある「ファブラボ」で起きていること

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【前回コラム】「世界でいま最も熱いクリエイティブシティ、アムステルダム」はこちら

「Waag Society」(ワーグソサエティ)

今回は、最もアムステルダムらしいクリエイティブ組織「ワーグソサエティ」をご紹介します。

前回の記事で、アムステルダム市内の真ん中にある歴史的な建物が、今は市民に開放され、自由なものづくりに取り組むファブラボになっていると紹介しましたが、実はこの場所、ただのファブラボではないのです。

このファブラボは「ワーグソサエティ」というクリエイティブ・ラボが運営しています。

今回は、この「ワーグソサエティ」とはどんなところか?何をしているところなのか? いかにクリエイティビィティにあふれているのか?2017年7月に行ったプロデューサーへのインタビュー(インタビュー相手が、すでに別組織に転職してしまった)と、現在、ワーグソサエティでインターンをしている日本人学生の木原共さんの話などを交えてお届けします。

アムステルダムの中心で起こるイノベーション

ワーグソサエティとは、「最先端技術を用いて、それを広く市民に公開し、イノベーションを起こし、社会課題を解決していくことを目的とした組織です」とサイトにはあります。

ワーグソサエティは、ネット創世期でもある1990年代中盤にスタートしており、オランダではデジタルメディアのパイオニアでもあります。とはいえ、もちろんネット周りだけのテクノロジーを扱っているわけではなく、バイオテック、アート、そして社会課題といったような、一見すると、あまり関わりや繋がりがなさそうな分野を、縦横無尽に行き来しているクリエイティブ・ラボといったイメージです。

1回目の記事にも書いたように、ワーグソサエティが入居している建物は、「計測所」として1488年に建設されました。日本では「銀閣寺」が建てられた頃ですね。当初は職業別の組合であるギルドとして使用されていたようで、外科組合の解剖学の講義などが行われていたようです。つまり、その当時から、常に先端科学の研究が行われていた場所でもあったということです。

1488年に建設された計測所。現在は市民に開放されている。

ちなみに、これが、江戸時代にオランダから日本に伝わった「蘭学」の正体です。さらに、あのレンブラントの有名な絵画「テュルプ博士の解剖学講義」が描かれた舞台でもあるのです。こう聞くと、かつて学校で習ったことが、一気にリアリティを伴って頭の中で繋がった方も多いのではないでしょうか。

レンブラントの「テュルプ博士の解剖学講義」
画像提供: Mauritshuis, The Hague.

この場所はアムステルダムにとって最先端技術を学ぶことのできる場所、最新の知識の共有ができる場所であったのです。こうした歴史的背景があるので、アムステルダムのど真ん中にあるこの場所は、オランダ人にとって最先端技術を学ぶのにふさわしい場所であり、またワーグソサエティも、この場所でプロジェクトやワークショップ、またファブラボなどを通して、最先端技術を市民に提供しているというのです。

アムステルダムに来たことがある方は、レッドライトと呼ばれる観光地をご存知だと思いますが、ワーグソサエティはそのど真ん中。周りには、コーヒーショップ(アムステルダムでコーヒーショップといえば、有名なアレです)と、飾り窓があふれているエリアです。

そんな場所にある、この建物内には最新の3Dプリンターや工作機械などさまざまな設備が完備されており、市民はプロジェクトに参加すれば誰でも使用することができるようになっています。

アムステルダムのクリエイティブを支えているのは、こうした施設や組織だけでなく、実はこういところに参加する市民そのものだったりもするのです。

次ページ 「『市民がクリエイター』のアムステルダム」へ続く