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コラム

クリエイティブシティ アムステルダムから送る「越境のススメ」 

元CMプランナーがラーメン店をプロデュース。クリエイターの「越境力」

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豊富なタレントで溢れるオランダならではのコラボレーション

ここからは具体的にオランダでの経験をご紹介します。

来春、オランダのデルフトという学生が多く住む街でラーメン店をオープン予定なのは、現在、滋賀県彦根にある「にっこう」。店主の西川浩司さんは、ご家族でオランダに移住して、ラーメン店を始めるといいます。西川さんは、「いつかは日本のラーメンで、世界を相手に勝負したい」と以前から考えており、ヨーロッパ各地を巡った後、ビザ的な条件なども考慮して最終的にオランダで開店することに決定したそうです。

来春、オランダのデルフトへで開業予定の滋賀県彦根のラーメン店「にっこう」とオーナーの西川浩司さん

筆者がブランディングやエクスペリエンスデザイン、そして店舗設計や店舗プロデュースの経験があるということで、西川さんのラーメン店のプロデュースのお話をいただきました。

すでに物件は押さえている西川さん。その物件をどうデザインするかというところから、プロジェクトがスタートしています。ちなみに、その物件は元々飲食店ではなかったので、文字通りゼロからデザインをしなくてはいけません。とはいえ、筆者が図面を引けるわけではなく…。

ここで、オランダの利点が生きてきます。

オランダはダッチ建築、ダッチデザインと言われるように、建築関係の世界トップランナーです。第二次世界大戦で、ドイツ軍の空爆を受けて街が壊滅してしまったハーグやロッテルダムなどは、その後、新しい建物を再建し、今ではダッチ建築の見本市のような近未来都市的な場所になっています。

補足ですが、ダッチデザインとは論理的なコンセプトを持ちつつ、アートのような自由さを大胆に表現した建築様式です。レム・コールハースなど現代の建築界に大きな影響を与えた建築家を数多く輩出しているものです。そして、今や全世界で活躍しているオランダの建築デザイナーたちがアムステルダムには集結しているのです。これを利用しない手はありません。

ということで今回は、今やオランダを代表する(ご本人たちは「まだまだ若手です」と言いますが)NL Architectに相談してみました。というのも、実は、ここには山本弦さんという日本人の建築家がいるのです。ヨーロッパでは日本食ブーム、ラーメンはおしゃれでイケてる日本食の代表です。ここはやはり、日本のDNAをわかっているスタッフが必要だと思ったのです。

NL Architectに所属する日本人建築家の山本弦さん

NL Architectオフィスの様子

このNL Architect一つとってもわかるのですが、働いているスタッフは文字通り世界中から集まっており、世界中で有名建築を手がけています。今や中国などからも引く手あまたの状態です。しかし、面白いのは世界多国籍軍団でありながら、建てるものはダッチ建築になるということです。こうしたところでも、オランダのクリエイターエコシステムが機能しているわけです。

そして、働き方という観点から、さらに面白いことがあります。今回は山本さんに仕事の依頼をして、めでたく一緒にコラボできることになりましたが、これがNL Architectという会社で関わるのではなく、山本さん個人で関わってくれるというところです。つまり副業です。日本だと、ソフトバンクが「副業OKにした!」というのがニュースになりますが、オランダでは副業は普通なのです。ちなみに、これ、意外とクリエイターにとっては、活躍の場が広がるし、いろんな人と協働しやすいのでいいですよ。

次ページ 「日本との違いは仕事の取り組み方」へ続く