日本とオランダで共通の社会課題をクリエイティブで解決する
この「越境」プロジェクトでは、博報堂アイ・スタジオの技術、ノウハウ、経験といったリソースに、世界中から集まったアムステルダムのクリエイターの能力と、メディアラボ並びに、クリエイティブ・アクロスのネットワーク、またそれらの組織が所属する、アムステルダム応用科学大学のファシリティや、場合によってはヨーロッパNo.1クリエイティブシティであるアムステルダムのバックアップのもとに、日本とオランダで共通の社会課題を解決するデザイン、プロダクト、サービス開発などを行います。クリエイティブ×テクノロジー×サービスデザイン×リサーチといった感じでしょうか。
今回は、国籍の違うクリエイターたちが大勢参加するので、まずは社会課題の設定から自分たちでやってみようと企画しています。ヨーロッパだと難民や宗教問題、人種差別といったことが課題に上がりますが、おそらく日本との共通課題ということだと、渋滞解消、環境問題、ゴミ問題、健康対策などが共通課題となりそうです。こうやって共通課題をちょっと考えてみるだけでも、「越境」気分が味わえるのではないでしょうか。
プロジェクトは、およそ半年ほどの期間を想定しており、期間中1カ月ほどは、アムステルダムでの共同作業期間を設けます。お互いの知見をシェアし合うようなセミナーを交互にやってみたり、アムステルダムで活躍するゲストクリエイターを呼んでのセッション、彼らとの協働作業や、世界からメディアラボに集まるタレントとのネットワーク構築などを行いながら、最終的には何らかのアウトプットを世の中に送り出すことを目的としています。
理想形としては、ここで生まれたソリューションが、プロトタイプで終わることなく、実際のプロダクトとして売り物になるといいかなと思っています。おそらくクライアントも世界中がターゲットになるでしょう。
こうしたプロジェクトを行う上で、アムステルダムが本当に優れている点は、何度もこのコラムでも書いていますが、世界中からタレントが集まっていることです。クリエイティブ・アクロスのボードメンバーだけでも、オランダ、メキシコ、ブラジル、アメリカ、ドイツ、日本という構成です。きっとここでの経験は、日本では得られないものになると思います。
そしてこちらも連載では何度となく伝えていますが、筆者が個人的に強く思っているのは、日本人クリエイターの優秀さ。もちろん言葉の問題などはあるかもしれませんが、クリエイターとしての実力は平均すると世界でも、かなり上位ランクだと思っています。つまり世界でも十分通用するのです。自信を持って、こうした世界的な感覚を掴んでほしいなあと、いつも思っています。だからこそ「越境」をススメていたりもするわけですが…。
私たちニューロマジックアムステルダムでは、この他にも、日本のクライアントの課題解決のためにアムステルダムのクリエイティブタレントをマッチングしたり、ヨーロッパの先端の、あるいは最適なクリエイティブ集団とコラボプロジェクトを行うなどといった、日本のみなさんの「越境」プロジェクトのお手伝いも行っています。
ひとつこのコラムを書かせてもっていて面白いなあ、と思うことがあります。それはコラムに反応を返してくれる方たちが、圧倒的にコンサルティングファームやデザインファーム、エンジニアやテクノロジスト系の方が多いことです。そもそも「越境」がしやすいのかもしれませんが、日本の広告クリエイティブ界の能力の高さを身にしみてわかっている筆者からすると少し複雑でもあります。逆にいうと、クリエイターの方たちはすでに「越境」しているということかもしれませんが。
そもそも「越境」するのに、何も構えることはありません。博報堂アイ・スタジオとクリエイティブ・アクロスがコラボレーションプロジェクトを即決したように、身も心も軽く「越境」してみませんか。ダメだったら、すぐに止めればいいだけの話ですから。
吉田和充(Creative Business Development/Branding Designer/Creative Director/保育士)
1972年東京生まれ。1997年慶應義塾大学卒業後、博報堂入社。CMプランナー/ディレクターとして、40社、400本以上のCM制作を担当。ACCグランプリ、コピー賞などを獲得。
在職中に1年間の育児休暇を取得し、家族でアジア放浪へ。2016年、子どものクリエイティブな教育環境を重視してオランダへ移住。2017年現在、Neuromagic Amsterdam BV CEO、個人事務所SODACHI CEO、STYLA TOKYO クリエイティブディレクター。広報広告全般からマーケティング、企業の成長戦略策定、ブランディング、新規事業立ち上げ、新商品開発、Web制作、サービスデザイン、海外進出などクリエイティブ業務全般を担当。
アムステルダム市との協働プロジェクトとして、アムステルダム市の「粗大ゴミの処理問題」にも取り組む。
元サラリーマンクリエイターの海外子育てブログ『おとなになったらよんでほしい|おとよん』連載中。
「クリエイティブシティ アムステルダムから送る「越境のススメ」 」バックナンバー
- 広告は未来をデザインするものであってほしい(2017/12/14)
- 「サービスデザイン」の最前線を、マドリッドのグローバルカンファレンスで体感してきた(2017/11/21)
- 元CMプランナーがラーメン店をプロデュース。クリエイターの「越境力」(2017/11/08)
- Brexit問題がアムステルダムのクリエイティブ産業を活性化する?(2017/10/19)
- オランダのクリエイティブ人材を輩出する教育機関「メディアラボアムステルダム」(2017/10/04)
- アムステルダムの中心にある「ファブラボ」で起きていること(2017/9/20)
- 世界でいま最も熱いクリエイティブシティ、アムステルダム(2017/9/07)
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