コラム

ビデオコミュニケーションの21世紀〜テレビとネットは交錯せよ!〜

2018年、テレビ視聴計測が変わる。それは、広告業界の「平成」が終わる準備かもしれない。

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リアルなデータが取得できることで、何が変わるのか

まず「視聴ログ」です。

テレビや録画機がいま、かなりネットにつながっている状態です。個々のテレビや録画機で、実際に番組がどう視聴されているか、リアルなデータがテレビメーカーに集まっています。これが「視聴ログ」。ネットでは当たり前の実数データが、テレビ視聴でも見ることができるようになってきたわけです。

調査分析の会社インテージは、子会社のIXTにより、この視聴ログをテレビメーカー数社から集め、分析に使えるようにクリーニングして提供する体制を整えました。

視聴ログは、リアルなデータとして価値があります。それに複数のメーカーから集めているので、かなりの母数になります。例えば、高知県のような人口の少ない県でも、それなりの数のデータになる。

この視聴ログをどう使うかは多様な方法があるわけですが、もっともアクティブな使い方と言えるひとつが、例えばDatoramaというツールを使うこと。

BI(ビジネス・インテリジェンス)と呼ばれるツールがありますが、Datoramaが標榜するMI(マーケティング・インテリジェンス)は、その進化形と言えそうです。複数のデータを組み合せて確認できるのですが、それをリアルタイムに自在に扱えるのが特徴です。

例えば、インテージの視聴ログからCMオンエア量を抜き出して商品の売上データと一緒にグラフ化する。これを毎日チェックするなんてことも可能です。「CM打ったら十分、売上につながったな」とか、「いまひとつなのでデジタル広告をもっと投下しよう」とか、そういったことがリアルタイムにできる。これをコンスタントに提供できるよう、インテージとDatoramaは提携を発表しています。

これまでのツールの場合、一つひとつのグラフが一つひとつのウィンドウに表示され、PC画面がウィンドウで埋め尽くされて、自分が今、何を見ているのかわからなくなったりしました。Datoramaの場合、自分が「これ」と「これ」と「これ」を見たいというグラフを一画面に並べて見ることができる。頭が混乱しかねなかったのが、落ち着いてデータを眺められる。しかも、ちょっとした変更なら自分でできちゃうそうです。

この図は、テレビCMの出稿がターゲットに目標通りリーチできているかを追っているシミュレーションです。ライブモニタリングで毎日、追っているのをキャンペーン途中で確認しているわけです。この図では、ノルム値を越えて推移しているので、「OK!」という状態。

こういうデータは、これまでキャンペーンが終わってから、調査会社からレポートとして受け取っていました。終わってから「ああ、うまくいったんだな」とか「うまくいかなかったな」とかを確認する。そうすると、キャンペーン期間中に対策は打てないわけです。次回、気をつけようね、としか言えない。

でも、Datoramaを使えば、リアルタイムで追ってキャンペーン途中で確認し、うまくいってなかったら、その時点で対処できる。まさにライブモニタリングです。

こうやって、詳しく説明してどれくらいわかってもらえているのかわかりませんが、インテージの視聴ログとDatoramaの話をして、何を言いたいかと言うとですね。

もう広告代理店に任せている場合ではない、ということです。あるいは、広告代理店はスポンサー企業に置いてかれちゃうかもよ、ということです。

広告業界の「平成」に、終わりが近づいている

広告代理店に丸々任せて、良くないことは全部、広告代理店のせいにしちゃう、みたいな業界文化がありましたよね。広告代理店のほうも「なんかあったら泥を被るのが代理店だ」とか言って、それがカッコいいつもりだったし、スポンサー企業は「あいつらのせいにして済ませちゃおう」みたいなこと、本当にありました。

Datoramaの画面を見て、説明を聞いて私が感じたのは、こりゃあマーケティングに関わる人は主体的にならなきゃいけないし、主体的になるのが面白くなるんだろうなあ、ということです。

今回、紹介したテレビ視聴計測の新しい動きは、大きく見れば全部そうなんです。企業コミュニケーションは「個人」に向かっている。一人ひとりとの接触をできるだけ緻密に把握し、リアルタイムに手を打っていこう。そうなっていく、ということなんです。

私は80年代に広告業界に入りましたが、その時にすでにでき上がっていたコミュニケーションの枠組みがあって、ずっと基本は変わらないまま30年経っちゃいました。昭和にでき上がったシステムを、平成はずっと続けていたに過ぎません。

そんな平成が終わろうとしている中、広告業界の「平成」も終わりが近づいている。新しい年号にふさわしく生まれ変わりがすでに始まった。それが2017年の暮れに、みなさんに紹介したかったことです。

年号が変わったら、この業界はどんな方向へ進んでいくか、楽しみじゃないでしょうか?2018年は、それを見通して準備に奔走する一年かもしれませんね。ほら、面白くなってきたでしょ?

境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)

1962年福岡市生まれ。1987年東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したあとロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Borer」を発刊し、テレビとネットの最新情報を配信している。著書「拡張するテレビ ― 広告と動画とコンテンツビジネスの未来―」 株式会社エム・データ顧問研究員/電通総研フェロー お問合せや最新情報などはこちら

 

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