コラム

ヒーローたちの必殺マーケティング術

テレビの敵か、味方か。ユーチューバーのカウンターマーケティング

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芸能人のユーチューバーは、なぜつまらないか

ところで、先日(3月10日放送)の「IPPONグランプリ」は久しぶりの神回でした。共通のお題に対して複数の芸人さんが回答する大喜利形式のテレビ番組で、芸人さんの回答も秀逸ですが、それを引き出したお題が素晴らしい。

例えば、「『1m2cm』これ何の長さ?」という問いに対して、博多大吉さんの回答が「吉田沙保里と谷亮子が安全にすれ違える距離の限界」。

制作者と出演者の高次元の技の応酬はかなりの見応えがありました。テレビバラエティとしての完成形と言えるのではないかと思います。

良くも悪くもテレビはメインカルチャーとして成熟してしまった。

それに対してYouTubeは、既存のあるいは主流の体制的な文化に対抗する文化。テレビに対するカウンターカルチャーです。

テレビとは対極のアンダーグラウンドから生まれたカルチャーでは、テレビでは見ることのできない素人の悪ノリや、クソみたいな企画の方が歓迎されます。コンテンツの完成度をあえて低くすることを面白がっているのです。

そこでは芸能人は完全に場違いな存在です。芸能人のユーチューバーを見ていると、金持ちの親戚が自分の学校の文化祭にやってきて、空気を読まずにはしゃいでるのを見ているようないたたまれない気持ちになってしまいます。

「芸能人」はテレビで見たほうが断然輝いて見えるのです。逆もまた然りで、「ユーチューバー」がテレビに出ても全く真価を発揮できません。

ユーチューバーのマーケティング

人々の注目が集まれば広告媒体としての価値は上がります。有名なユーチューバーになると、とんでもない広告収入を稼いでいるそうです。実にうらやましい限りです。

ゲーム会社にとってゲーム実況は効果的なプロモーションになると思いますし、文房具やコスメを使って見せた動画のおかげで売り上げが跳ね上がったという話もよく聞きます。

番組を丸ごと広告にしてしまうことは、今のテレビ番組ではやってはいけないことになっています。しかし、ユーチューバーのつくる動画のほとんどは番組の体をしたコマーシャルなんですよね。

民放連の定めるテレビの放送基準には「児童の射幸心や購買欲を過度にそそらない」など、番組内の広告の取り扱いに関して厳格な取り決めがあります。

YouTubeにはまだそこらへんに関して曖昧さと自由があるぶん、広告主にとって魅力的なメディアに見えているのかもしれません。テレビにとってはちょっと分が悪い戦いです。

このように動画のテーマと商品やサービスがダイレクトに結びつく動画の広告効果はまだ理解できますが、本編の動画と関係のない企業プロモーションの広告効果には疑問符がつきます。

お目当ての動画の最初に強制的に見せられるCMや、再生数秒後に必ず画面の下に出てくるバナーを不快に感じる人は少なくないのではないでしょうか。

ターゲットのセグメントはできるのでリーチの精度は多少上がるかもしれませんが、本質的には町中のティッシュ配りや折り込みチラシと大差ないような気がします。

これからはユーチューバーもメディアとしての付加価値やアイデアがないものはどんどん淘汰されていくと思います。単に視聴回数だけを指標とした広告収入は今後低下していくのではないでしょうか。

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