コラム

「シェアしたがる心理」のこれからを考える

ブロックチェーンが築く「シェアされる広告」の新たなかたち

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「『シェアしたがる心理』のこれからを考える」と題している通り、この連載はシェアという情報行動のこれからを見晴らすことを目的としているが、今回は連載のどこかでぜひ紹介したいと思っていたひとつの啓発的な論文をピックアップして議論を進めていきたい。

日本広告業協会(Japan Advertising Agencies Association:通称JAAA)は毎年公募で懸賞論文を募集しており、今後の広告コミュニケーションないしそのビジネスが向かう方向を指し示すようなビジョナリーな論考を顕彰している。

僕自身は毎年そこで受賞した論文をチェックするようにしているのだが、その第46回懸賞論文において、電通の竹内好文氏が執筆し金賞を獲得した「ブロックチェーンが、『愛される広告』の扉を開く『鍵』となる。」を読んで、そのクリアで未踏的なアイデアに非常に感銘を受けた。

しかもその内容は、拙著『シェアしたがる心理~SNSの情報環境を読み解く7つの視点~(以下、シェア心)』でフォーカスした内容とも大きく関連するものだった。

ブロックチェーンという先進的な技術の可能性を、コミュニケーションビジネスにうまく引き寄せることに成功したその論文の読解をもとに、ユーザーのシェア行動を組み込むことで広告ビジネスが進化するビジョンを描きたい。

なお、このJAAAの懸賞論文は毎年金賞~銅賞までオンライン上で公開されている。本稿で取り上げるのはあくまでも論文のエッセンスに過ぎないので、より厳密な議論が展開されている本文をぜひ参照してほしい。

愛される広告とは「シェアされる広告」である

広告コミュニケーションの世界では常に量と質の議論がなされてきた。例えば、皆に届き心に残る広告の「質」をどう捉えるか?──といったように。竹内氏の論文では、「愛される広告=シェアされる広告」という定義がなされている。僕自身、まずこの等値概念がとてもシンプルかつ本質的だと感じた。

そして、論文の中心的アイデアは、いままで計測ができなかった「どれだけ愛されているのか」ということをブロックチェーン技術の導入によって計っていこうというものであり、さらに、ブロックチェーンによってシェアされる広告の記録のチェーンを築くことが広告コミュニケーションビジネスの新しい領域を拓くことができるという主張へと拡張されていくのだ。

確かに、ブロックチェーンとは、単純化すれば何らかのトランザクションのスタンプ(履歴)の総体であり、その履歴の正しさをみんなで証明(Proof)し、その堅牢性を保っていく仕組みのことだ。分散型台帳技術と呼ばれることもあるが、台帳とはその履歴の記録であり、分散型とはどこか一か所で行うのではなく皆で草の根的に行うことに由来する。

その意味で、ブロックチェーンはまったく新しいものではなく、ウェブのそもそもの理念の実現に他ならないという人々もいる。それを示すかのように、技術の革新性をもってSNSが実現したウェブ2.0につづくウェブ3.0なのだと指摘する人もいれば、そもそものウェブの理念を実現するのだという意味で「ウェブ0.0」だと位置づける人もいる。

2017年を席巻したビットコインのような仮想通貨も、それがお金の行き来・やりとりというトランザクションを記録するという意味においては、その機能のうち限定的なもの・派生的なものに過ぎない。したがって、広告が届いたり、それを誰かにシェアしたり……といったトランザクションもブロックチェーンの扱いが届く範疇に他ならないということになる。

もちろん、いまでもあるポストがどの程度シェアされたのか、そういったスコアは出るものの、それがどのような経路をたどり、2次、3次……n次と拡散されたのか?はたまた別のプラットフォームへと飛び火するなど、様々なマッシュアップを経て広がっていく現象をいかにトレースするのか?──といった課題については、まだ取り組みが尽くされているとはいえない現状がある。

次ページ 「広告接触率(ACR)と広告増殖率(AGR)」へ続く

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