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コラム

「シェアしたがる心理」のこれからを考える

ブロックチェーンが築く「シェアされる広告」の新たなかたち

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あるべき広告のポテンシャルを引き出す

デジタル化が進んだ今日の情報環境に生きる私たちは、個人の情報を提供することで利便性を得るようなサービスを多数活用している。それがなければ日々の生活は成り立たないと僕自身も強く感じているが、竹内氏の議論は、このような現代のリアリティにも目が届いている。

少々の単純化をあえて行うと、ACR=「接触」にフォーカスしすぎれば、その果てにはパーソナルデータに基づいたプロファイリングへと行き着くことを避けられないだろう──効率的にはそうするのが正しいためだ。しかしながら、そうした状況への問い返しが起きていることは、いまや世界的な思潮になりつつある。

そして、現在の巨大プラットフォーマーがデータを占有する環境は、このまま一方的に進むとは思えず、ユーザー自身が情報を管理する時代へとシフトする兆しも徐々に明確化していくはずだ。

もちろん、一方が他方を置き換えるという単純な「A or B」の話ではなく、「A and B」というように混ざり合う中で情報環境が変化していく未来シナリオに備える必要がある。そのような情報環境の変化に、コミュニケーションビジネスに携わる人々はどう対応していくのかが問われている。

広告と販促は違う

少々迂回するようだが、そこに関連して個人的に思っているテーマが、「広告(Advertising)と販促(Promotion)は異なるものであるにもかかわらず混同されがち」という事案だ。

僕なりの広告の定義は、ブランドと生活者との間に、これまでにないかたちのつながりを生みだすこと、そのようなコミュニケーションの総体というふうにとらえている。一方の販促は、生活者の中に顕在化したニーズをプッシュするもので、厳密には両者の機能は異なっている。

例えば、ECサイトで調べたものの買うことを控えた商品に、各所で追いかけられてウンザリしたという経験は多くのユーザーが味わっていると思われるが、これは広告というよりも販促に近い。ニーズが顕在化されており、あとはプッシュするだけだとオンライン上の行動履歴や各種データをもとに判断されているのだから。

しかしオンライン上でそのようなかたちの経験が爆発的に広がったことで、理解がともなわないまま、いま述べた販促的なものも含めてすべてが「広告」と括られて嫌われ者になってしまっている側面は間違いなくあると感じる。

もちろん、広告と販促は綺麗に二分できるものではないかもしれない。両者が混じるような領域もないとは言えない。しかし、広告って実はそういうものだったよねという再認識を、そしてそれを通じた広告コミュニケーションの別のありようを、竹内氏は独自の視点から照射してくれたように僕自身は読み解いた。

まだトレースされていない「シェア」を適切に計測し、広告コミュニケーションが届く側/届ける側の双方に利益となるような制度を設計することに取り組めば、広告コミュニケーション産業の成長に結びつく機運はまだ確かに存在すると示唆されているように思われるのだ。

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