コラム

「シェアしたがる心理」のこれからを考える

ブロックチェーンが築く「シェアされる広告」の新たなかたち

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広告接触率(ACR)と広告増殖率(AGR)

論文の中では、そのようにブロックチェーンによってシェアされる広告の広がりや効果が把握できるようになれば、以下のような指標を私たちは扱えるようになると主張している。

広告接触率:Ad Contact Rate(以下ACR)
これはスペースとしての広告に関する指標で、そこに置かれた広告に生活者がどれだけ接触したかを示す。

広告増殖率:Ad Growth Rate(以下、AGR)
こちらはカタチとしての広告についての指標で、媒体から離れたコンテンツ、メディアというよりメッセージ内容そのものがどれだけ拡散したのかを示す。

竹内氏の論文をもとに筆者が作成

両者を腑分けしたうえで、現代のデジタル環境においてはカタチとしての広告が増えていること、そしてその効果の把握が不十分であることを指摘する。「枠」の考え方だけではカバーしきれない統合キャンペーン(Integrated Communication)の時代において、カタチとしての広告がいかにシェアされたのか、つまりその広告の愛され度合いはどの程度だったのか測るのがこのAGRという考え方である。

このように説明すると、「ネット上でバズるコンテンツの価値を正確に計ろうということ?」と咀嚼しそうになるが、議論の射程はそこにはとどまらない。

拙著『シェア心』で中心的に考察したのは、ユーザー間の自然発生的なコミュニケーションであり、そこでのシェア行動に見られる特徴を「タグる(『ハッシュタグ』と『情報の手繰りよせ』から来た造語)」や「シミュラークル」というキーワードとともに形象化した。第6章のケーススタディでも採り上げた「#ポカ写」(大塚製薬が実施した写真投稿型のキャンペーンで、ポカリスエットを使った“映える”写真を女子高生が中心となって撮影しシェアした)は、ブランド側が場をセッティングする形ではあったものの、ユーザーが広めたことで効果的な、さらには共創的なコミュニケーションへ昇華されたことを思い出したい。

ブランドやパブリッシャーが一方的に仕掛け、その完成したコンテンツが広がっていく(=バズる)ようなものだけでなく、生活者が参加することでプロセスをともに補完していくようなシェア施策の重要性も高まっているのだ。

そういったブランドと生活者との「共創的なコミュニケーション」のかたちによって、すなわちユーザー側のシェアの蓄積によってはじめて築けるブランドエクイティがある。AGRは、その意味でブランドを考える上でも非常に役立つ指標だと考える。

天野彬『シェアしたがる心理』(宣伝会議)から引用

さらにいえば、こうしたAGRといった指標が実測可能になれば、拙著で展開したシミュラークルのような社会的・文化的なコンセプトをよりマーケティング実務の領域へと引き寄せていくことができるはずだと感じられた。

次ページ 「あるべき広告のポテンシャルを引き出す」へ続く

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