自分たちが考える強みが、お客さまにとっての魅力とは限らない
常に対象者が18歳の高校生である近畿大学、若者を対象にブランド展開をしているアダストリアにとって、人口減少が続く環境は大きな課題。近畿大学の世耕氏は「対象人数が減っていくため、志願者をどう確保していくかが課題。広報活動は志願者の獲得が大きな目的」と話す。
「大学の世界は『関東では早慶、MARCH、関西では関関同立、産近甲龍』という言葉ができてしまっているほど、上下入れ替えのないリーグ戦とも言える。この状況を打破するためには、コミュニケーション力を鍛えていくしかない」(世耕氏)。
近畿大学は、14学部48学科あり、医学から芸術まであらゆる分野を網羅する日本屈指の総合大学だ。しかし、大学案内に全ての特徴を掲載すると、ただただ厚い冊子になってしまい、破棄されることが目に見えている。それもそのはず、他の学部の情報は大半の学生にとって必要はないのだ。そこで世耕氏らは「ファッション誌のような感覚で見てもらえる大学案内にしたい」と考えた。
「他大学との差別化を図った。賛否両論の意見はあるが、学生が実際に気になるのは、この大学に入ったらどんな人と学ぶことになるのかだと思う。大学として言いたい、設備や研究成果などは志願者である高校生にはあまり興味を持たないこと。志願者の視点に立って、求められるコンテンツを考えた」(世耕氏)。
アダストリアの久保田氏は「当社の場合、グローバルワーク、ローリーズファーム、ニコアンドなど各ブランドの認知度は高いが、会社の認知度が低い。良い人材を確保するためには知名度が必要。個々のブランドの認知拡大に力を入れるか、コーポレートブランドの認知拡大に努めるか、バランスが難しい。まさに大学の各学部と大学自体の認知度のどちらに注力すべきか、という世耕さんが抱える課題に近い」と話した。
同社は今秋、化粧品事業にも参入をした。8月29日にはコスメブランド「カレイドエビーチェ」が大阪に初出店を果たした。化粧品事業への参入理由について久保田氏は「アパレルは嗜好品であるため、はっきりとキャラクターのたったペルソナに向けることが重要。ペルソナが明確だと、ファッションから化粧品、その他のライフスタイル用品へと横展開がしやすくなる」と、今後の展開も視野に入れる。
この久保田氏の発言を受け、小林製薬の荒木氏は「当社の商品は、困っている人が明確にいて、その人のためにつくっている。いわば、たったひとりのお客さまをターゲットにしている」と共感を示した。
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