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コラム

ビデオコミュニケーションの21世紀〜テレビとネットは交錯せよ!〜

逆襲するテレビ〜視聴率は世帯から個人へ、量から質へ

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クライアントがテレビに求めているのは「セグメント・マス」

さてVR Forumに一週間先んじて開催されたテレビ広告ビジネスフォーラムでも、これに非常に近い話がでてきました。「対応している」と言っていいくらい。ADKマーケティング・ソリューションズ事業役員データインサイトセンター長の沼田洋一氏がこんなスライドを見せてくれたのです。

ADKマーケティング・ソリューションズの沼田氏作成のスライド。

これは在京キー局のタイムテーブルです。プレミアムビール、発泡酒・新ジャンルビール、機能系ビールの3つのカテゴリーのそれぞれのビール飲用者がどの番組をよく見ているかをヒートマップで示しています。例えばプレミアムビールはテレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」をよく見ている。意外にTBSの深夜番組も濃いですね。

これが発泡酒・新ジャンルビールになると、ニュース番組もありつつ、バラエティが出てくる。日曜夜の日本テレビの「テッパン枠」も入ってくるわけです。なるほどなー、と思いますよね。

ビデオリサーチは、言ってみればこれがわかるようにします、ということなのでしょう。2つのフォーラムは対の関係のように見えます。

テレビCMの役割が変わってきつつあるのだなあ。そんなことを感じました。不特定多数に対してとにかくCMを見てもらって日本人全体の認知を図る。そういう大雑把なところから、もっと対象を絞り込んだ、こんな商品なのでこんな番組を見てる人にCMを見てもらおう、そういう役割になろうとしている。

それを決定的に言い表していたのが、サントリーの宣伝部部長であり日本アドバタイザーズ協会の電波委員会副委員長でもある牧野清克氏が言っていた「セグメント・マス」という言葉です。

サントリー宣伝部長・牧野清克氏作成のスライド。

この「これから」の方を見ると、広告主としてメディアに何を求めているかがよくわかります。単に男性か女性か何歳かではなく、「どんな人か」を知りたいわけです。それは自分の商品が「こんな人」に買ってもらいたい像を持っているからですね。カードを見せ合って同じカードが多ければその広告枠を買うよ。そういう姿勢。

そしてこの「これから」に書かれたことと、さっきのビデオリサーチ社がACRと突き合わせて得ようとしている視聴者像が対応しているのもわかりますね。ニーズがあるから対応する、ということです。

だからもうテレビは「マス」じゃなくていいんです、と言っているのだと思います。むしろどんな人物が見る番組かをくっきりさせてほしい。その方が企業がスポンサードしやすいな。そしてそんな人物にアプローチするにもやっぱりテレビは役に立つ。ネットではセグメントしたらマスにならない。効率悪い。

これと非常に近い話があります。日本アドバタイザーズ協会の常務理事・小出誠氏は資生堂から出向して協会の仕事に常勤で専念されています。何をされようとしているのかお聞きしたくてインタビューし、私が運営するMediaBorderで記事にしました。その中で小出さんがおっしゃったのが「ゴルフ番組の価値」でした。引用します。

「(ゴルフ番組は)おっさんかもしれないし、女の人かもしれないけど、要はゴルフ好きで、基本的にゴルフをやってる人が見るわけじゃないですか。そういう人たちはゴルフのショップなり、クラブだとかボールのメーカーさんにとってはターゲットで、全く関係ない高校生は見ないですよね。見る人だったらおじいちゃんおばあちゃんでもいいわけだし。見る人が絞られている。(中略)そういう傾向がテレビ番組にはっきりしてたら、すごくいいんですけど。いまは、どうしても全体の視聴率をとろうとして、ワーッと誰が見ても面白いようで誰が見てるかわからないような番組が多い。だったら、はっきりこういう人たちが見てるとわかりやすい番組の方が広告主的にはよいと思います。」

テレビが進むべき道がここには示されています。牧野氏の話とも合わせて、広告主はまだまだテレビに大いに期待し頼りにしていることも感じられる。広告費でネットに抜かれても、「誰が見るのか」を示せれば、テレビは今後もメディアの王様なのではないでしょうか。

次ページ 「広告費でネットに抜かれても、テレビだからこその価値を示せるか!?」へ続く