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コラム

「広告」から「クリエイティビティ」へ【ACCプレミアムトーク】

なぜACC賞にデザインのカテゴリーをつくったのか。 「ブランデッド・コミュニケーション」部門 審査委員座談会Part1

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<参加者>

菅野 薫 氏
電通 CDC、Dentsu Lab Tokyo/エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター、クリエーティブ・テクノロジスト

イム ジョンホ 氏
mount/代表取締役、Art director

上西 祐理 氏
電通/アートディレクター、グラフィックデザイナー

小杉 幸一 氏
博報堂/クリエイティブディレクター、アートディレクター

中村 勇吾 氏
tha/代表取締役、デザイナー

八木 義博 氏
電通 CDC/クリエーティブディレクター、アートディレクター

 

左から、中村さん、イムさん、小杉さん、菅野さん、上西さん、八木さん。

ACC賞のインタラクティブ部門が、新しく菅野薫氏を審査委員長に迎え「ブランデッド・コミュニケーション部門」と新たな名称、新たなカテゴリーに生まれ変わりました。これから審査にあたってどのような観点で作品を見ていくのか。全2回の座談会のうち、今回は特に「デザイン」カテゴリーについて掘り下げます。

日本の賞ではまだ褒められていない領域を褒めたい

菅野 薫さん

菅野:最初にちょっとだけ説明させてください。かつて、インターネット広告推進協議会が行っていた「東京インタラクティブ・アド・アワード(TIAA)」という賞があり、4年前にACCに移管されて「インタラクティブ部門」になったんですね。今回僕に審査委員長をという話があった時に、即答で「改編したい」とお願いしまして。それで生まれたのが「ブランデッド・コミュニケーション部門」という新たな部門です。

クライアントのお題に対して正しいデザインを施していく、という日々のアイデアの仕事の中で、日本の賞ではまだ褒められていない領域があると感じていたんです。「普段の仕事」と「賞をもらう」ということが延長線上にないなあと。完全に一致させるのは、ま、ほぼ無理なんですけど。たかだか賞ですし。でも、「あれ結構いい仕事じゃん」とみんな思っているのにどこの賞でも褒められていない、というものを少しでも拾いたいと思いました。だからこの部門では、フィルム部門、ラジオCM部門以外の「その他の広告」全部を対象にしたい。ほかで拾われていないやつを、全部拾います、という感じで構想しました。

で、今日のテーマは、その「ブランデッド・コミュニケーション部門」に「デザイン」というカテゴリーを足しましたよ、ということなんですね。

八木:変な話、JAGDA賞(主催:グラフィックデザイナー協会、以下JAGDA)とかADC賞(主催:東京アートディレクターズクラブ、以下ADC)の目線じゃないものも褒められると認識されて、「自分も褒めてもらえるんじゃないか」という期待が生まれれば、すごい応募数になるんじゃないですか。

菅野:そしたらもう、分科会作ります。

一同:

上西:JAGDAやADCは、広告キャンペーンというより個人の作家性とか、どうアートディレクションしているかとか、そういうことも見ている気がします。広告キャンペーンとなればもっと匿名性が高くなるというか。個人というより「キャンペーンとしてどうか」ということで選ぶべきなのかな。

菅野:そうですね。この商品を表現するのに適切なアートディレクションである、という「ピントの当て方」が広告には求められる。作家性よりはそっちの方が大事ですね。カンヌやD&AD、ONE SHOWといった海外の賞にもデザインのカテゴリーがありますけど、そこではどうなんですかね? 作家性なのか、ブランデッドなのか、ということでいうと。

八木 義博さん

八木:海外賞のデザインカテゴリで評価されているのは、当然、ブランデッドのものだと思うんだけど、日本の作品で海外の審査委員に注目されがちなのは、作家性みたいなところがあるかもしれない。クライアントもわかんないけどなんかいいよね、と票が集まっていったり。一度ONE SHOWデザインでも、みんながいいねと言っていた日本のポスターが実は上下さかさまだったということもありました(笑)。

上西:グラフィックデザインなのか作家性なのかはよくわからないけど、人がもらう感じがするんですよね、日本の賞って。

菅野:視点の違いだけでなく、僕も審査委員をやったことがありますが、D&ADのデジタル・デザイン部門のような新しい領域での評価も日本ではまだ抜け落ちているのかなと感じていて。徐々に評価しようとされ始めていますけどね。

イム:結局この部門では、今までのTIAAの文脈をもっと広げると。インスタレーション的なものなど、全部ここに入るということですよね。

菅野:そういう意味では、TIAAや以前のインタラクティブ部門が引き受けていたものは「Aカテゴリー:デジタル・エクスペリエンス」に移行しています。インタラクティブ部門にも、今回増やした「Bカテゴリー:プロモーション/アクティベーション」や「Cカテゴリー:PR」で評価すべき仕事の応募もあったのですが、デジタルっぽさがないと点数がちょっと下がってしまっていたんですね。だから新たに別のカテゴリーが必要だなと思いまして。

イム:デジタルっぽいってなんですか?

菅野:テクノロジー度合いなんですかね。高度とか、新しい技とか。例えば「10分どん兵衛」なんかのソーシャルメディアで話題になったり、シェアされたりしたおもしろいコンテンツが、インタラクティブ部門ではそこまで高く評価されてこなかった。れっきとしたWebの施策にもかかわらず。それがひっかかっていて、デジタルなのかアナログなのかは別にして、プロモーションとして褒める、PRとして褒める、という視点も必要なのではないかと思ったんです。

だからこの部門では、カテゴリー間でかぶるのはOK、とにかく漏れが少ないように、いろんな角度から褒めてみようと。だから「プロモーション/アクティベーション」の下のサブカテゴリーで、「デジタルメディア/ソーシャルメディア」が置いてありますし、「デザイン」の下には「デジタル/インタラクティブ」「ムービング・イメージ」などもある。実は主語が逆転しているだけで、両方に出せるじゃないかとなるものを敢えて入れているんです。

イム:部門概要を読んだ時に、どういう考えでこうなっているのかと思いました。

菅野:そこらへんはね、細かい話ですけど、僕は2年ほど「フィルム部門」と「インタラクティブ部門」の両方を審査していた時期があったんです。するとね、フィルム部門のBカテゴリーとインタラクティブ部門の「オンラインビデオ」に同じ作品が応募されたりするんです。でも、全然結果が違うわけです。審査するときに何部門なのか、で褒めることが違ってくる。褒め方が全然違うから、どっちもあっていいなというのが結論。だから、今回も「デジタル・エクスペリエンス」カテゴリーの中にWebムービーを応募できるようにしているし、なるべく多角度から褒めるようにしてみました。

上西:両張りして応募もできるということですね。

菅野:できます。

上西:Aカテゴリーを審査しているときはその視点から、Dカテゴリーの時はその視点から、審査する。

菅野:まさにそうです。「実はどっちとして見ても良いじゃん」というケースだってあるかもしれない。

イム:クリエイティブイノベーション部門に出しているものが、こちらにも出されるという可能性もありますよね。

菅野:ありますあります。クリエイティブイノベーション部門は、広告の領域を越えた、企業や大学やベンチャーが発明したものなんかも対象として褒めていくという定義だと思いますが、厳密な線引きは難しい。制作者とクライアントが同じ、というものでも、それがブランドのためになっている、広告として機能しているなら審査しようと思います。カンヌでたくさん評価されるGoogleの施策なんかもそういう感じですよね。Google Chrome ExperimentsはWeb GLの広告です、として応募されるとやっぱりすごく点数が高くなるから。ほぼ自社クリエイションですが、広告と呼ぼうと思えば間違いなく広告なんで、いいと思うんです、出せば。杓子定規なことを言っていていると、新しい可能性をみつけられない。

小杉: 出品という目線での質問です。「Dカテゴリー:デザイン」の中に11個サブカテゴリーがあるじゃないですか。審査する時はサブである「雑誌広告」として審査されるのでしょうか、それとも「Dカテゴリー:デザイン」全体としてなのでしょうか?

菅野:Dです。……なんか対談の前にまず勉強会みたい。すみません(笑)。

実は最初は、サブカテはいらないと思っていたんです。でも「デザイン」というタイトルだけで何を出品していいのか想像するのは難しいのではないかと。応募する時に、例えば「雑誌広告も出していい」とガイドとなるようにサブカテをつけました。それから審査する時も、なんとなく雑誌は雑誌、新聞は新聞で並んでいた方が審査しやすいだろうと考えまして。雑誌の中からひとつはゴールドを出さなくてはということではないです。最終的に絶対的に強いやつが上に行けばいい。

小杉:日本のデザインにおけるだいたいの賞は、カテゴリーごとの「一点」で評価されたあとで、そのある一定のレベルに達したその「一点」たちがガッチャンコされて評価する、というのが多かったと思うんです。なので、キャンペーンとして世の中に機能している部分がごっそりなかったり、メディアによって偏りがあったりとアンバランスな見え方で評価されることもありました。世の中とクライアントを繋げる機能性を複合的にプレゼンテーションできるものになっているというのは、広告として評価する姿勢は、すごく健全だなと思いました。

菅野:一つの応募にサブカテを複数チェックありなので、「新聞」「ポスター」「グッズ」「Webサイト」を全部ひとまとめにして応募できるようにしました。

上西:それは、まとまって置かれるということですか?

菅野:そうですね。

八木:解説映像が出せるということですよね。

菅野:そうです。

上西:いくつ賞が出せるかは決まっているんですか?

菅野:割合なので、どれくらい応募されるかで、どれくらい褒めることができるか決まるみたいです。インタラクティブ部門がはじまった時に、「こんな少ししか褒めないの」という意見もあったみたいですが。

ACC:本当はフィルム部門では、ブロンズ以上が部門総エントリー数の約3%で、ファイナリストが約7%。ただ、初めての賞なので、そこは多めにしても…

菅野:20しか応募がなければ、1つしか褒められない。

中村:それでいいですよ、一瞬で終わる(笑)。

次ページ 「どこが評価されたのかを、しっかり公表したい」へ続く

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