メディアクリエイティブ部門は、一番ACCらしい場所
箭内:エントリーの提出動画がすごくいいなと思いました。カンヌライオンズだとあれの仕立てをすごくよくして、受賞に手が届くように頑張ろうみたいのがあるんだけど、このグランプリ・ゴールドの3つは、ある種の「寿ビデオ」みたいな感じがしました。
自分たちの打ち上げで、それを見ながら乾杯して、思い出を語り合って涙流して肩抱き合っている画が浮かぶような。エントリー動画をつくる作業っていうのも、自分たちは何を達成したのだろうということを、つくった本人たちがもう1回振り返って考える、味わい直せるすごくいい機会だなと思っています。この動画たちに3本とも感動しちゃいましたね。
村本:たぶんこの3つはこの部門用につくられたものだなっていう内容だったんですよ。でも中には見ていると、これ他の部門の流用だな、っていうのもあって。やっぱりどの賞とも違う狙いがこの部門にはあるので、メディアのアセットだったり、クリエイティブだったりというところをきちんと紹介しているもののほうをみんな推していましたよね。
大澤:エントリー動画もしっかりつくったほうがいいんだな、っていうのは、応募する側としてもすごく思いますね。
箭内:この動画はプレゼンテーションでもあるけど、これ自体が広告というか、メディアに携わる者たちの短いドキュメンタリー番組というか、そういう感じがしましたね。たしかに新たにオリジナルでつくるべきですね、いいアドバイスですね。たとえ入賞しなくても大事な宝物になりますもんね、それぞれのチームにとってね。
村本:1次審査は、オンラインでひたすら一人で作品を見続けるというものなので、1個1個の動画に感動しながらで面白かったですね。
大澤:応募素材が勝負なので、どれだけ想いや狙いを伝えられるかっていうのは大事ですよね。想いを込められたほうがいいなと思いました。
箭内:楽しみですね。去年の入賞作品には負けないぞっていうものが応募されてくるだろうし、何より新たな刺激を共有できる切磋琢磨の場になっている。ここだけじゃなく、実際に現場でも。
大澤:この部門は今年3年目ですけど、1回目はグランプリなかったんですよね。
村本:1年目は出す側も審査側も模索中だったので、議論の中で、あえてグランプリを次狙ってもらうためにも、ということで最終的にグランプリはなしになりました。もっとこれの上をいくものにチャレンジしてもらおうということで。
箭内:このメディアクリエイティブ部門は、僕は一番ACCらしい場所だと思うんです。ACCってなんとなく広告代理店という感覚がある人が多いだろうけど、広告主もいて、メディアもいてっていう場所が、ここですよね。KIRINのライブCMなんかは、誰かが思いついてもそれを実現するまでいかないと、ひとつの成果物にならないから、広告主と制作者と営業とメディアの総力戦ですよね。
どうなる、今年の審査会
箭内:小山薫堂さん(前審査委員長)のあととかいやだなあ(笑)。審査委員には去年と同じメンバーが多くいますよね。
村本:いや、ガラリと変わっています。
箭内:そっかそっか。なんかもう既に最強のチームがあって、田舎の分校から赴任してきたのが俺、みたいに思っちゃうな。
トヨタの大澤さんの前で言うのもなんなんですけど、なんかどうせみんなエリートだろっていうのがこういうメンバーからは感じられるわけですよ。日本を代表する企業ばっかりで。多分そこに対する反発を緩めるために僕みたいなインディーズを持ってきて中和を図っていると思うんですけど(笑)やっぱり物事を変えていくのって、真ん中に入っていかないと。外側から、何に反対だとか、もっとこうしろって言うのは、尊いんですけど、ラクチンじゃないですか。これちょっと危ないですね、こういうメディアでしゃべるとね(笑)
大企業で普段苦しんでいる人たちだからこそ持つ意見が重なり合ったり、拮抗するのがとても楽しみですよね。
ACCの審査、10年くらい前は何年間かやっていたんですけどね、ホテルに数日泊まり込みでね。今は会報の中でリビング・レジェンドと対談するっていう役目だけで(笑)それもとても楽しく対談させていただいているんですけど、いつまた審査委員に呼んでもらえるんだろうって思っていた時に、CMのほうじゃなくて、こういう、何が出てくるか非常にワクワクするする場に参加させていただけることは、とても幸せですね。
大澤:そうですね、多種多様に富んだメディアとクリエイティビティそれぞれを掛け合わせると、アイデアは無限大なんだな、と思い知らされる部門なので、「これは悔しい!やられた!」と思える作品が出てくるのを楽しみにしています。
村本:私は普段デジタル系に携わっているので、デジタルの面白い使い方みたいなのが、マスの強さに負けずにもっと出てきてくれるといいですね。デジタルに対して二の足を踏んでいる方ってまだ結構いるんですけど、デジタルは他のメディアとの融合も非常に上手くいくものなので、パワーを感じるデジタルの使い方にチャレンジしている作品があったらいいなと思いましたね。
箭内:審査委員長メッセージにも書いたんですけど、世界を平和にしたり、みんなを笑顔にしたり幸せにしたりっていう可能性を、このメディアクリエイティブ部門は明らかに持っているなと感じています。CMは平和な世界を描くことはできるけど、実際に平和な世界をつくることができるのはメディアクリエイティブだと思うんですよ。
お互いを思いやり合える社会を、メディアがつくる。そろそろほんとにそのことに着手しないと。世の中みんな勝手にバラバラにやるっていうだけでもないと思うんで。メディアっていう言葉にいま危機感を感じるじゃないですか。ワイドショーが会見で何を質問したとか、報道の在り方についてとか、メディアっていうものに今の世の中がそんな期待していないなとも思うんです。でも、メディアには本当は人々を幸せにする力があるんだぞっていうのを見せつけてくれるような鮮やかな逆転ホームランが見たいですね。そんな作品を楽しみにしています。
【箭内審査委員長メッセージ】
世界を平和に、幸せにする、新しいアイデアを。
みんなが笑顔に、元気になる、素敵なクリエイティブを。
違う互いを、思いやり合える、強く優しいメディアを。
よろしくお願いします。
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