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コラム

パーソナライゼーション時代-メディア企業のマーケティング戦略

世界で起きるメディア環境の変化を4つの視点で読み解く(後編)

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「場」をマネタイズする枠売りから、「人」を中心にしたレベニューモデルへ

トレンド④:マネタイズ
放送と通信の垣根がなくなると、従来のメディア産業においては、これまでの広告の「枠売り」というレベニューモデルに限界が訪れるかもしれない。多くの人が集まる「場」としてのメディアの枠をマネタイズするという従来のレベニューポリシーでは説得力が弱くなるからだ。そこで、「場」のマネタイズに加えて、「人」という概念が導入されて新たなレベニューモデルが形成されるようになるだろう。

この「人」の概念はすでにネット広告では導入されており、行動ターゲティングなどの広告モデルが存在する。TVや現状の紙媒体がデジタル化され視聴実態がアドレッサブルになったとき、その視聴ログをベースとした行動ベースの広告配信が成立する。TVに関してはハイブリッドキャストTVのシェアが徐々に増えてきており、近い将来、理論的にはこのアドレッサブル方式の広告モデルがデフォルト化されると考えられる。

また、ネットでのコンテンツ配信のビジネスモデルではNetflixのようなOTT型のサブスクリプションのレベニューモデルが標準になっている。サブスクリプションビジネスは、あくまで主人公は「人」であり、「人」の嗜好性がビジネスの中心に存在する。コンテンツや広告に人が合わせるのではなく、「人」の趣味嗜好に応じてコンテンツやサービスを届けることができるビジネスモデルであることが、サブスクリプション事業の大きな可能性の背景にある重要な要素であるからだ。

この「人」中心型のビジネスモデルは、メディア業界に限ったトレンドではなく、マーケティング手法全体の大きな流れだ。送り手の都合に人が合わせるのではなく、「人」の行動や嗜好性が明らかになってきたがゆえに、「人」を中心に据えた情報の流布を前提にしないと競争優位は得られなくなってきた。このビジネスモデルの中心にあるキーワードが「パーソナライゼーション」である。

いずれにしても、枠を売るという従来のメディアのビジネスモデルだけでは、消費者のメディアリテラシーに合致したレベニューモデルとは言い難く、コンテンツそのものへの課金、視聴データ等のDBそのもののマネタイゼーションが必要となっていく。VODのモデルでも広告型(AVOD)、サブスク課金型(SVOD)等の選択肢があるが、当面は広告モデルとコンテンツそのものへの課金モデルがベースとなり、様々な応用マネタイズモデルが勃興してくると予測される。

OTTサービスの利用者も、実は多くがいわゆる広告需要型のVODを選択しているという話がある。一定程度の広告を受け入れて、定額の支払いコストを下げるという消費者の合理的な選択がもたらした結果といえる。消費者の価値観や嗜好性が固定化されることなく移ろっていく今の環境下では、これらのビジネスモデルをプロトタイピングしてPoCを繰り返すなどアジャイル型のマネタイズモデルの模索が要求される。

メディア産業に関してのマネタイズを考える際に「パーソナライゼーション」がキーワードになると前述したが、メディア産業がコンテンツ配信のパーソナライゼーションに活用するために収集した視聴ログや消費者のコンテンツ嗜好性といったデータ自体もマネタイズ可能な宝の山となる。

消費者の購買データを豊富に持つマーケットプレイス・プラットフォーマーにとって、喉から手が出るほど欲しいのが消費者のコンテンツの嗜好性データやコンテンツ視聴といったコミュニケーションレイヤーの情報である。彼らは当該情報を自社プラットフォームから得にくいため、独自のコンテンツ配信ビジネスを立ち上げたり、買収したりして、それらを自身のプラットフォームの上でトラッキングを上げる手段として活用したいと思っているのである。

これらの視聴データを豊富かつ体系的に持つことが出来れば、このデータベース自体がメディア企業の資産となり、これからのビジネス環境を優位にドライブできる可能性が出てくる。そもそもメディア産業こそが、これらのコミュニケーション系のデータを豊富に持っているべき産業であり、「人」起点のマーケティングを志向して、宝の山となりうるデータベースを集める方向に舵を切るべきと考える。