アカウントプランニングによる「クリエイティブ革命」
いずれにせよ、ここで再び聖域だった「クリエイティブ部門」に、ブランドと消費者の関係性という形で調査部門(特にインタビューなどの定性調査)がかかわり、「プランニング」という部門が生まれました。アカウントプランニングは、端的にはアカウントつまり営業部門付きの調査担当であり、同時にクリエイティブ部門に対しても調査などの発見をインプットし、広告が正しく機能するようにリードする役割を負います。
フェルドウィックは、自らの70年代のBMPでのアカウントプランナーとしての経験を振り返り、キングのJWTは当時、ロンドンでも大きな広告会社で巨額のメディア予算を扱っており、彼らと比較するとBMPのアカウントプランナーはクリエイティブに集中し、システマティックでも理論化もされていなかったと言っています。しかしながらフェルドウィックの述懐するアカウントプランナーの役割は、いまでも十分通用するアプローチです。
1. 初期の戦略から広告のキャンペーン評価まで一貫して担当する
2. 既存の方法や調査のプロトコルには従わず、オープンな状態でプロセスを組む
3. 自社外の市場シェアなどの現実のデータを数値化して把握する
4. 定量調査、特に定性調査はプランナー自ら実施する
5. 指示書のブリーフではなく相互的なクリエイティブとのやり取りを重視する
6. クリエイティブは実際の広告に近いものを使って調査する
特にBMPのアカウントプランナーとクリエイティブは、まるでバーンバックの言う「クリエイティブ革命」のようなコピーライターとアートディレクターのように協業する形となっています。フェルドウィックは、これが成立した要因としてBMPのクリエイティブディレクターのジョン・ウェブスターの調査に対する好意的な態度をあげています。彼はアカウントプランナーと調査をもとに意見を交わすのが好きだったこと、そのようなタイプのクリエイティブが実際には稀だったと言っています。
そして興味深いのは、クリエイティブとプランナーのやり取りが双方向的だったという例として、クリエイティブが出すアイデアに関してプランナーが後から戦略的な理論づけをすることもあったということです。
これは決して単なる後付けの戦略ではなく、そもそも広告コミュニケーション上のアイデアとは、「ブランドの全体性」からくるものであり、その理論的な根拠が、戦略という合理的な認識から生まれるだけでは不十分であって、クリエイティブから生まれることもあるということです。
「マーケティング・ジャーニー ~ビジネスの成長のためにマーケターにイノベーションを~」バックナンバー
- 「タイパ」はどのように活用できるか?顧客の体験価値を高める5つのパフォーマンス(2022/11/16)
- 個人について知らなくても集団の動きは予測できる パーコレーション理論がデータ利活用に規制のある時代にマーケターに与えるヒント(2022/4/04)
- なぜ日本企業は累計3000億ドル以上、「スタチン」の売上を得られなかったのか? 「偽の失敗」を見極めてイノベーションを育む(2022/3/01)
- 日本企業からイノベーションが生まれないのは、「失敗が足りない」から?(2022/2/25)
- 「ノイズ」を避けるために、マーケターが持つべき「統計的思考」と「判断の構造化」(2022/2/18)
- マーケターが知るべき人間の判断にまつわる「ノイズ」と「無知」(2022/2/16)
- ヴァージル・アブロー風“デジタルの現実をここに”-CES2022に新たな解釈(2022/2/08)
- なぜ、シニアよりミレニアルが重視されるのか?-メディアと所得の年齢別「格差」(2021/10/06)
新着CM
-
広告ビジネス・メディア
グーグル、Cookie廃止を延期 利害調整…年内に終わらず
-
広報
「ぽぽちゃん生産終了」綴ったnoteが1200スキ以上を集めたワケ
-
AD
宣伝会議
【広報部対象】旭化成のグローバル社内イベント成功事例を紹介
-
クリエイティブ
2008年から続く東京ガスの企業CM、ルーツはラジオCMにアリ
-
マーケティング
来店客が若返り、新規客増…食品との併せ買い1.4倍 イトーヨーカドー
-
AD
マーケティング
新規顧客を獲得するためには――飲食業とWeb広告業、それぞれの事例を紹介
-
広報
市長アバターが英語で情報発信 横須賀市の生成AI活用
-
販売促進
友人同士の宅飲みを再現した居酒屋 若年層へのブランド戦略、サントリー
-
特集
CMO X