デジタル時代に広がる音声コンテンツの可能性 TOKYO FMが目指す「デジタル戦略」の未来

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これまでは「デジタルVSマス」という敵対の構図で語られることが多かったメディアの世界。しかしデジタルを取り込んだことで、既存のマスメディアが新しい可能性を発揮するケースも登場している。その好例がラジオだ。スマートフォン経由での聴取というスタイルが広がったことで、ユーザーとの新しい接点が生まれている。音声コンテンツの企画・制作力にデジタルを組み合わせて、新たな価値を創造しようとするTOKYO FMデジタル戦略局長の嶋 裕司氏、デジタル戦略局データマーケティング部の常盤 一赳氏に話を聞いた。

(写真左から)TOKYO FM デジタル戦略局データマーケティング部の常盤 一赳氏、同社 デジタル戦略局長の嶋 裕司氏。

ミッションは「TOKYO FM、ラジオ業界、オーディオメディアの未来を作る」

—昨年2月に新設された「デジタル戦略局」について、その狙いを教えてください。

嶋:従来からあるラジオというビジネスモデルやスタイルにとらわれず、私たちの資産である「ラジオ番組」という音声コンテンツにデジタルを上手く組み合わせれば、新たなビジネスチャンスや、ラジオの価値の再発見につながるのではないか、との考えから「デジタル戦略局」を設立しました。

例えば、ラジオを無料(一部有料)で聴取できるアプリ「radiko(ラジコ)」が普及したことで、スマートフォンを使ってラジオを楽しむユーザーが増え、聴取率向上に大きく貢献するようになっています。こうした新しい可能性を積極的に開発していくことが私たちに課せられたミッションです。

—具体的な活動についてお聞かせください。

嶋:局の立ち上げに際し、私たちは「TOKYO FM、ラジオ業界、オーディオメディアの未来を作ろう」をミッションに掲げました。このミッションをもとに、現在は大きく2つの活動に取り組んでいます。

ひとつが、オンデマンドコンテンツの制作・配信。これまでのラジオ番組は、一度放送するとそのまま流れてしまう「フロー型」でしたが、オンデマンドでユーザーが聴きたいときに聴ける「ストック型」のコンテンツを増やすことで、ユーザーにとっての利便性を向上させることが狙いです。海外ではポッドキャストコンテンツの利用が拡大していますが、それと同様に日本においてもストック型のコンテンツによる聴取マーケットの拡大や、広告費を含めたビジネスチャンスの拡大・獲得への可能性を感じ、力を注いでいます。現在、当社では「JFN PARK」というプラットフォームを構築し、月間50本以上のオンデマンドコンテンツを制作・配信しています。

2つ目が、データマーケティングです。現在はラジオをスマートフォンのアプリで聴く人が増えているので、聴取ログをDMPに集約することが可能になっています。このログデータを分析することでリスナーの聴取態度を可視化することができます。またログデータとユーザーデータを掛け合わせることで、番組ごとのリスナー分析も可能です。そうしたデータを番組の企画・制作に生かしたり、広告出稿の費用対効果を示す資料としてクライアント企業に提供したり、といったことができるようになっています。

昨年2月に新設の「デジタル戦略局」で局長を務める嶋氏。

—どのような業種のクライアントに対して、どのような価値が提供できるとお考えでしょうか。

嶋:ラジオが持つ強みとは、「目に見えないものを音で語る」というところです。そうした意味で、ブランドイメージを大切にされているブランドとは、そもそも親和性が高いと考えています。例えば、エルメスなどの欧州のグローバルブランドは、ラジオなど音声のみのメディアへの出稿も重視されている印象ですが、その理由は“音だけ”だからこそ伝わるものがあるから、ではないでしょうか。

月間50本以上の新しいオンデマンドコンテンツが聴取可能なTOKYO FMのオーディオコンテンツプラットフォーム「JFN PARK」。

逆に動画だと消費者に伝えられる情報が多いがゆえに、それが「ブランドのイメージをきちんと反映できているのか?」といった難しい議論が生まれてしまうことがあります。一方、ラジオの“音だけ”という一見制限された要素が、アイデアひとつで動画以上のインパクトをもって消費者の心に響くこともあると思います。

常盤:昨今のユーザーのメディア接触の方法は多様化しているため、いかに気軽にアクセスできる音声コンテンツを制作できるかが重要です。そうした意味で、私は商材やブランドに制限はないと考えます。音声コンテンツ市場の成熟はこれからなので、むしろ既成概念にとらわれることなく、自由な発想でコンテンツを制作・発信していきたいと思います。

出版社ともコラボ、デジタルだからこそ実現したメディアミックス

—最新の取り組みについて教えてください。

常盤:私はデジタル戦略局に配属されてから、既存のラジオCM枠のセールスに加え、コンテンツのSNSなどでの拡散を狙った企画などを具体化しました。例えば、ラジオ番組をポッドキャスト形式に変換し、前述のJFN PARKにも配信しつつSpotify、iTunes Podcastにも配信することで、制作したコンテンツの聴取機会の拡大を狙いました。ラジオ番組をラジオ以外の複数のアプリケーションでも聴取可能にすることで、総合的な「オーディオエンタテインメント」を目指したのです。

また他のメディア企業と組んだ、聴取機会の拡大施策も実施。宝島社が刊行する雑誌『otona MUSE』と組んで、同社が主催した「otona MUSEクリスマスイベント」に協賛したり、同誌で人気のスタイリストの河北裕介さん、編集長の渡辺佳代子さんが出演するクリスマス特番を放送し、その番組のアーカイブもオンデマンドコンテンツとしてJFN PARK、Spotify、iTunes Podcastで配信したりもしています。

このような取り組みは、ラジオ局が長年培ってきたコンテンツ制作力と、いまの時代に求められるデジタル拡散力、そしてリアルな場の活用といった3つの要素を掛け合わせた成功事例として、ラジオ業界のOMO施策のヒントになると思います。

長年のコンテンツ制作の実績と「デジタル×リアル」の多層的なメディア展開が強みと語る常盤氏。

業界の第一人者として“王道パターン”を築き上げたい

—デジタル戦略局が目指す今後の方向性について教えてください。

嶋:2020年4月にTOKYO FMは開局50周年を迎えることもあり、「ラジオ局」から「オーディオコンテンツ事業社」に生まれ変わろうとしています。リスナーを可視化するデータマーケティングにも力を入れ、その結果を本業の放送にも反映できるような、両方をうまく成長させられるような局を目指しています。

すでに社内では「デジタルビジネスプロジェクト」が立ち上がり、部署の垣根を越えて横断的にデジタル戦略について議論する取り組みを始めました。デジタル上の音声コンテンツをどう収益化させていくかを営業や編成の人間が部署の壁を取り払い、一丸となって考えています。

日本ではまだ、ストック型音声コンテンツの“王道パターン”のようなものが見出せていませんので、業界の第一人者として幅広く、いろいろな方に聴いていただけるコンテンツと、その仕組みづくりをしていけたら、と思います。


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