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コラム

澤本・権八のすぐに終わりますから。アドタイ出張所

ニコ動時代の経験が、映画『一度死んでみた』の劇伴に活きている(ゲスト:ヒャダイン)【前編】

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『一度死んでみた』は音楽に貢献してもらう作品に

中村:今回の劇伴はどういう経緯で?

澤本:ヒャダインさんを薦めてくれたのは、松竹の方と監督ですね。恥ずかしながら、僕はヒャダインさんが映画の劇伴をやってるって知らなかったので「やってくれるんだ!」っていうのがまずびっくりです。

ヒャダイン:映画の劇伴は2014年の『海月姫』っていう作品だけしかやったことがなかったので、映画としては2作目ですね。嬉しかったです。ありがとうございます。

澤本:音楽がつく前とついた後でこんなにも変わると思わなかったぐらい、いいんですよ。決して持ち上げているわけじゃなくて。あの、少し持ち上げてますけど(笑)。

権八:どっちなんだ(笑)?本当にそう思ったわけでしょ?

澤本:本当にそう思ったの(笑)。監督と言ってたのは「今回はコメディだから、上映時間を短くしたい」と。「なるべくボロに気が付かれる前に終わりたい」と(笑)。人がダメだって気が付く前に終わっちゃえばダメじゃないじゃないですか。

それで言うと、『スター・ウォーズ』シリーズって、全編でずっと曲ついてるわけですよ。『スター・ウォーズ』は、実は感情を左右してるのは音楽であって、画的にはそこそこちゃっちい画がいっぱい続いてるのよ(笑)。でもそれがダース・ベイダーのテーマとか……音楽に感情が持っていかれて、画も面白いから、引き込まれる。あれも1作目ってそんなに長くないんだけど「すげえな」って思うじゃない。だから『スター・ウォーズ』って音楽なんですよ、僕の中では。

中村:確かに、ダース・ベイダー初登場とかで、完全に無音だったらちょっと面白いかもしれないですね。

ヒャダイン:一気に解釈も変わりますよね。

澤本:だから今回監督とは「『スター・ウォーズ』みたいに、音楽にものすごく貢献してもらう作品にしたいね」って話をしていて。ほんとにまんまなってる!ずっと音楽がついてるの。

ヒャダイン:そうですね。結構べったり付けたイメージはありますね。

澤本:頼むときに、たぶん脚本を読んで解釈できないとさ、つくれないと思うんですよ。

中村:そうそう、そこも聞いてみたくって。映画の中のプロセスで映画音楽を頼むときって、どんなタイミングでお願いするものなんですか?脚本が完成してから?

澤本:そうですね、完成してからだと思います。

ヒャダイン:完成してましたね。ほぼほぼ。

権八:逆に、撮影よりは全然前?

ヒャダイン:全然前です。

中村:じゃあ画があるわけではないから、世界観は台本を読みながらヒャダインさんの中である程度咀嚼して「こんな感じかな」と先行してつくっていく感じなんですか?

ヒャダイン:そうですね。前回やった『海月姫』では画ができてたので、画を流してそれにあてながらスケッチとか引いて行ったんですけど、今回は全く画がなかったので、スタッフさんと一緒に脚本を見ながら「ここはどういう風にしようね~?」とか曲調とかを相談しながら決めて、持って帰ってつくっていったという感じですね。

澤本:脚本最初読んで、ヤバいと思わなかった?

ヒャダイン:めっちゃくちゃ面白いと思いましたね!

澤本:ありがとうございます……。

ヒャダイン:「これはやりがいがあるな」と思いました。キャラクターが生き生きとしてたので「この人につける曲、この人につける曲」っていうふうにキャラクターソングみたいな考え方で曲をつくっていった感じですね。

澤本:本当に見事に、悪い人に悪い曲が当たっていて。とてもありがたいんですよ。本当にありがたかった……(笑)。

ヒャダイン:楽しかったですね。今回は異例中の異例で、広瀬すずさんが歌うテーマソングの『一度死んでみた』っていうデスメタルの曲を、1番最初に録らなきゃいけないってことで、もう2年前ですかね?それを先につくって、広瀬さんに練習してもらって、それをレコーディングすることから全てがキックオフしたって感じですね。

澤本:その曲もさ「死ぬって話だから、デスメタル」っていう、ある種ベタな話じゃない。歌詞も相当ベタなんですよ。でも、本当にデスメタル、デスメタルしちゃってもすずちゃんと合わないし、その感覚をものすごくいいところで掴んでくれてました。最初に曲聴いたときにびっくりして。

権八:デスメタル過ぎず?

ヒャダイン:デスメタルではあると思います(笑)。すずちゃんの声のチャーミングな部分もあると思うんですけど、歌よりもシャウトが多いんです。そこでやっぱり「広瀬すずさんは役者だな~」って思うのが、そこの解釈がものすごく上手で、シャウトの上がり方だったり熱のこもり方が「ずっとやってたのかな?」って思うレベルの歌唱で本当に素晴らしかったですね。やりがいがありました。すっごく練習してきてくれて、トレーナーもつけてやってくれたので、やればやるほどうまくなってましたね。

澤本:最初にすずちゃんが歌ってるのを聴いたとき「あれ?こんなに上手かったっけな?」って思ったぐらいでしたね。

中村:すずちゃんたちが組んでいるバンド「魂ズ」の『一度死んでみた』っていう曲は、主題歌でもあり、映画の中心的な存在になっているんですけど、それが初めにつくられたってことは、ここが方向性を決めるうえでも一番大変だったんじゃないですか?

ヒャダイン:そうですね。歌ものをガチっと決めてつくってから、劇伴をつくったので不思議な感覚ではありましたね。

中村:今回の新作映画『一度死んでみた』の劇伴で言うと、何曲ぐらい作られたんですか?

ヒャダイン:記憶にないんですよね(笑)。何曲でしたっけ?20?20じゃすまないか (笑)。

権八:トラックで言うと、42と。

ヒャダイン:ですね、40ぐらいつくった気がします。

中村:そろそろ終わりの時間だ……。次回も引き続き、ヒャダインさんゲストでお迎えします。よろしくお願いいたします!

ヒャダイン:お願いします!

<後編につづく>

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