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コラム

世界で活躍する日本人マーケターの仕事

世界で活躍する日本人マーケターの仕事(フィリップス 藤井崇雅さん)後篇

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【前回コラム】「世界で活躍する日本人マーケターの仕事(フィリップス 藤井崇雅さん)前篇」はこちら

海外に出て世界で活躍する日本人のマーケターにオンラインでインタビューを実施する本コラム。インタビューを通じてコロナ禍の今、さらにAfterコロナの時代に、ブランドはどう行動していくべきか、そのヒントを探っていきます。4回目の“訪問”先は、オランダ。フィリップスのグローバル本社でシェーバーのマーケティングを経験された後、現在は空気清浄機をリードされている藤井さんに話を聞きます。コロナパンデミックに対してフィリップスがどの様に素早くアクションを起こしたのか、コンシューマーのニーズに応えるためにどの様にテクノロジーを活用されているのかなどを伺いました。

フィリップス(オランダ本社)
シニアコンシューマーマーケティングマネージャー
藤井崇雅氏

上智大学比較文化学部卒業後、パナソニックのグローバルマーケティング部門を経て、2012年フィリップス入社。日本市場における理美容家電のブランディング・キャンペーン展開等に従事。2017年よりアムステルダム本社にてグローバル商品企画を担当。

 

パーソナライゼーションのテクノロジーがグローバルマーケティングの突破口に

—オランダに来てから、シェーバーそして現在の空気清浄機の担当をされたと聞きました。具体的にどのようなマーケティング戦略を企画したのでしょうか。

オランダに来て最初に手がけたのは、シェーバー全体のリニューアルプロジェクトです。フィリップスのシェーバーは価格帯の異なる1000シリーズから9000シリーズまで展開していますが、シェーバー全体の戦略をもとに、それぞれの価格帯のシリーズでどのようなベネフィットをプロットしていくべきかを定めていきました。

フィリップスでは、これまで各シリーズごとに消費者調査を行っていましたが、この時に初めてシェーバーカテゴリー全体で消費者調査を進めました。今までは各レンジの担当が、それぞれに調査して、自分が担当するレンジの中で競合に勝てる商品を出そうとしていました。結果的に訴求ポイントが複数、打ち出されてしまっていたからです。同じフィリップスのシェーバーなのに言っていることに違いが出ていては、消費者の混乱を招く危険性もありました。

調査の結果、深剃りと肌へのやさしさが2大ニーズであることを再確認でき、ただ価格が上がることに伴い、そのパフォーマンスの精度が進化していく必要があることを整理できました。

グローバルのチームに入って最初に担当した案件だったこともあり、国ごとにことなる事情を踏まえて、バランスをとりながら優先事項を決めていくことは難しかったです。シェーバーはローカルのニーズが色濃く出てくるので、全体最適を考えながら各国のコンシューマーが喜んでくれる製品をつくるのは簡単なことではないのです。

そんな課題の突破口になったのが、パーソナライゼーションのテクノロジー。各国のユーザーの肌や髭のタイプ、剃り方がそれぞれ違う中、シェーバーがセンサーで状況をスキャンし、その人にあったシェービングを実現することを可能にしました。

—プロジェクトは、スムーズに進んだのですか?

パーソナライゼーションのテクノロジーが突破口になったのですが、当初はシェービングの動作センサーや髭密度の感知システムといったテクノロジーを搭載しすぎてコストが増えてしまいました。なんとかコストを削減するために目をつけたのが、シェーバーの洗浄器でした。当初洗浄器にもモーターやソフトウェアなどのテクノロジーが搭載されていたので、そうした技術は洗浄器からは全て取り除き、シェーバーだけに搭載することにしました。シェーバーが洗浄器に入ったら、シェーバーがそれを認識して、自分でモーターを回して洗浄するようにしました。これによりコストを抑えることができ、最終的な消費者テストで、競合他社に負けることのない消費者に満足いただけるポートフォリオをつくることができました。

さらなる衛生意識の高まりを受け、最新のシェーバーシリーズではより多くの製品に洗浄器を搭載している。独自の処方とマルチグリッドフィルターにより水洗いの10倍効果的に洗浄できる。

次ページ 「関係者の専門性を引き出すことがリーダーシップのありかた」へ続く