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りゅうちぇる流 SDGsの伝え方とは?

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2030年に向け活発化するSDGsの取り組み。実践には “未来” の姿を描くことが不可欠です。本コーナーは多様なフィールドで活躍する人たちと共に、理想の未来を考えていく、連載企画です。今回インタビューしたのは、NHK『家庭総合』のMC就任をきっかけに “SDGs” を勉強しはじめたというryuchell(りゅうちぇる)さん。自身が幼少期から抱いていたジェンダーへの考えや、父親として子どもたちに残す未来を見据え、積極的に活動を行っています。SNSでの発信を通じて感じたryuchell流の “伝え方” を聞きました。

*本記事は11月1日発売の『広報会議』12月号掲載の「SDGs未来会議プロジェクト」との連動記事です。

 

メディアが変えた次世代の“当たり前”

──ryuchellさんがSDGsを知ったきっかけはなんでしたか。

NHKの『高校講座 家庭総合』のMCをさせていただくことになり、はじめて今の高校生が授業でSDGsを勉強していることを知りました。SDGsの項目には僕自身そもそもすごく興味はあったんです。僕の高校時代にはSDGsをはじめ、生き方の多様性について学校で習うことはありませんでした。本当にここ数年で変化したんだな、という衝撃がありましたね。専門家や家庭総合の先生などとコミュニケーションを取りながら、より理解も興味も深まっていきました。

今の家庭総合の授業って、料理や裁縫の時間は5分の2ぐらいなんです。多様性や今からどう生きていくか、どういう時代になっていくかっていうことを考える時間。これからの時代、そういう知識や経験を学生のころから触れてきた人が活躍して、新しい考えが広がっていくのはすごくいい流れだなと思っています。社会が変わっているのに授業では全く取り入れないことも多いと思うんですけれども、家庭総合は本当に進んでいて、MCをしながら楽しかったですね。

──次世代へのアプローチ、特に教育の強化は非常に重要ですよね。実際ご自身の高校生の頃と比べて考え方は変わってきているように感じますか?

ジェンダーについてのSDGs目標もありますが、今の若い子の方が違和感を覚えないですよね。やっぱりメディアの影響が大きいと感じます。多様な生き方をしてる人っていうのは、僕もでしたが割と色物扱いされてしまったり、バラエティ番組ではオチや面白い芸人の方っていう枠だったと思うんです。だけど、最近は全くウケを狙わなくてもインフルエンサーとして、若い子の中でも当たり前に浸透してる。僕は世代によって区別するのは好きではないですが、単純に思考が固まっていないので様々な意見が入ってきやすいんだろうなとは思います。「別にこの人が幸せなら」「この人にとってこれが愛だったらいいんじゃない」と、いい意味で人に関心がない。人にそこまで強要しない、という考え方に変化しているのは感じました。

──メディアでの扱い方が、子どもたちの“当たり前” も左右しますよね。知識や考えを人に強要しない、というのは今の社会の流れのような気がします。

プロギングに夫婦で挑戦!
ゴミ拾い(Plocka Upp)とジョギング(Jogging)を合わせた新スポーツ「プロギング」を夫婦で実践し、自身のInstagramで投稿。3万超のいいねがつくなど反響を得た。「自分の中でテンションの上がるウェアを着てランニングをしながら道のゴミを掃除する。そしたら街のゴミの多さや日ごろ気にならなかった部分も見えてきて考えはじめる。自分も楽しく、気づきが得られるのはいいなと思って、みんなにも共有したくて投稿しました」(ryuchell氏)。

ご自身はSDGsに対してのお考えをいつごろからお持ちだったのでしょうか。

服が好き。中でも古着が好きでした。服を廃棄するにもすごくエネルギーがかかるじゃないですか。だからこそ、古着や自分でアレンジをして着続けるということにはすごく意識を高く持っていましたね。

テレビに出させてもらうようになった最初のころは本当にTheお馬鹿タレントみたいな立ち位置だったので、SDGsに関するお仕事や自分の意見を言う仕事も全くなかったんです。でも2、3年ぐらい経って自分の意見を発信するお仕事がなぜか多くなったんですよ。それこそ古着好きの僕のバックグラウンドなどを発信していくにあたって、自分も勉強し始めたし、自分の考えを強要するんではなくて、共有したいなという風に考えるようになりました。

敵をつくらない意識

──共有する際に、発信者として意識されているポイントはありますか?

毎回気をつけてるのは、「敵にならない」ということ。ついやってしまいがちですが、自分の意見を言うときに「君は間違ってる」「私はこういう生き方が正しいと思う」とあからさまに敵対してしまう。僕はそういう言い方はしなくて、「そういうのがあってもいいんじゃないかな」と、言葉を“ふわふわさせる” ことを意識しています。

あと、一時の感情で書かないこと。SNSで自分の考えや思いを発信するときは下書きに入れて2、3日は眠らせます。やっぱりそのときの感情で更新してしまうと、「怒ってるな、寂しそうだな」という感情だけが伝わってしまう。すると、本当に持ってる言葉のパワーや本心が伝わらない。それはとてももったいないことだと思うんです。しっかり2、3日眠らせて、これなら僕の気持ちが正しく伝わると思う形で出すようにします。そうすると敵対する文章じゃなくて「こうするといいんじゃないかな」「少しでも楽になるんじゃないかな」という提案の文章に自然と仕上がるんですよね。SDGsの発信でもちゃんと理解できていないままに、「絶対これがいいよ」って強要しているものを見かけます。僕は確かにSDGsを習ってるから知識はある。そこで思うことはある。だけどペットボトルで飲んでる人に「マイ水筒にしなよ」というとそれは多様な価値観を認めていないと思うんです。実際僕もマイボトルを持ってはいるんですけど、全然ペットボトルも買ったりしちゃう。なるべくごみを減らそうと意識する姿勢が大事だと思います。否定しないで「敵にならない」。そこは意識してますね。

感情を乗せないために一回寝かせるというのは、SDGsに関してだけではなくて様々なコミュニケーションで重要だと思うんです。夫婦、友人など人間関係でもそうでしょう。仕事でも1回発言する前に一呼吸おいて考えることは大事だと思いますね。

 
──否定するコミュニケーションになっていないか、冷静になって考えることは広報担当者も意識したいポイントですね。ryuchellさんは1児の父親でもありますが、そこで変化したことはありますか?

子どもが生まれて、育児セラピストと食育インストラクターを取得しました。日ごろから栄養表示を気にしたり、興味あるニュースの分野が広がったり……。本当に子どもに僕たち親も成長させてもらっている感覚があります。僕たちが今つくっている生活が、知らず知らずに次の世代、次の次の世代につながっていく。森に行って深呼吸できるとか、海に行っていっぱいはしゃげるとか、そういう当たり前のことが当たり前じゃなくなる前に、僕たちが一人ひとりの意識でもいいからやっていきたいなと思います。僕も子どもが生まれたからこそ「この子の世代のためにも」というふうに思うようにもなりました。興味のある分野から調べてみたり、自分の子どものための情報であったり、難しく考えず身近な部分から始められればいいと思いますね。

自己啓発本を発売!
10月7日発売の初の著書『こんな世の中で生きていくしかないなら』(朝日新聞出版)では、ryuchellさん自身の過去の経験もふまえ、SDGsの目標でも掲げられる「ジェンダーの平等」の実現への想いやこれまでの葛藤、そこでの気づきなども書き綴られている。

──SDGsの発信を行う人にアドバイスがあれば教えてください。

先ほどの「敵にならない」「一呼吸おく」というのは前提で、あとは「誰に伝えたいか」で変わってくると思います。全然興味のない人に伝えたいなら、そのためのやり方がある。僕がYouTubeで自己肯定感について話した動画は90万回ほど再生されていて、タイトルは『自己肯定感なんて言うけどさ…..』。これが『自己肯定感って大事だよね』というタイトルだったら見られていないと思ったんです。ファッション誌なら「これをしとけば大丈夫」という正解パターンを提示できていれば、読者が関心を持つことは多いと思うんですけど、SDGsみたいな新しい概念では、読者に寄り添った表現じゃなきゃ関心を持ってもらえない。「自分も分からなかったんだけど、意外に簡単だった!」というニュアンスがタイトルで表現できるといいと思います。入口でそこが伝わらなきゃ見ないですもん。相手が知識として入れて、それをまた行動に移すか移さないかも自由だし、できるときにしようっていうふうに余裕を持ってやるのもOKだし、多様性の意識も忘れず、SDGsに取り組んでほしいなと思います。

聞き手:白田範史
 (学校法人 先端教育機構 SDGs総研 主任研究員)
ryuchell(りゅうちぇる)さんへのインタビューの様子、メイキング動画を公式YouTubeで配信中!
 

 
*SDGs未来会議プロジェクトについて詳しく知りたい方はこちらから

広報会議2021年8月号

月刊『広報会議』8月号の巻頭特集は「SDGs実践!経営変化と企業コミュニケーション」。サステナビリティ経営に取り組む意義や発信のポイントを識者に聞いた。
 
また、サステナビリティ経営、SDGsに取り組む、アディダス、P&G、KDDIらの事例や、サステナブルサイト制作のポイントなどを収録している。
 
月刊『広報会議』8月号は、全国の書店・Amazonなどで販売中。
 

【特集】
SDGs実践!
経営変化と企業コミュニケーション

 
GUIDE 広報力が企業のサステナビリティの強さを決める
本物のサステナビリティ経営で
企業はどう変わるのか、広報の役割は?
坂野俊哉、磯貝友紀(PwC Japanグループ)
 
CASE1 社内浸透と部門連携
「やらされ感」から「納得感」へ
全部門が絡むSDGsプロジェクトにするには
KDDI
 
CASE2 サステナブル・コラボレーションの可能性
ブランドの方向性を直感的に認知させる
コミュニケーション設計の鍵とは
アディダス ジャパン
 
CASE3 専門部署ではなく、皆が貢献する組織づくり
LGBTQ+層へのアライ育成研修を開発
アライの人たちが実務を担うまでに浸透
P&Gジャパン
 
INTERVEIW 事業を根底から覆す目標を掲げてのコミュニケーション
たばこ会社が「煙のない社会」を
どのように実践、発信しているのか
フィリップ モリス ジャパン
 
元ディレクターが教える テレビ番組制作者の本音 特別編
安易にSDGsを謳うのはNG
社会的な文脈で新しさを打ち出そう
下矢一良(PRコンサルタント)
 
COLUMN テレビは今、SDGsをどう扱っているか
視聴者の行動変容が目的のキャンペーン
番組とのタッチポイント増やす工夫も
NHK
 
CASE4 新商品から採用まで 多角的なメリットがSDGsに
循環可能な「SDGs制服」で
地球品質を目指す企業の理解促進
明石スクールユニフォームカンパニー
 
CASE5 本業ならではのSDGsへの貢献
素の自分をさらけ出せる企業目指し
トランスジェンダーのモデルをアンバサダーに
田谷
 
GUIDE 中小企業のSDGs広報
気づけば選ばれない会社に
正しい手順で自社のSDGsの芽を見つけよう
青柳仁士(一般社団法人SDGsアントレプレナーズ代表理事)
 
危機管理に詳しい弁護士が解説
リスク広報最前線 特別編
浅見隆行(弁護士)
 
GUIDE DX時代の情報開示のポイント
サイトでの情報開示は企業の存在感へ
ステークホルダー・ファースト視点が鍵に
安藤光展(一般社団法人CSRコミュニケーション協会代表理事)
CASE STUDY
日立製作所/ローム/大阪ガス