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「多様化」と「個」の時代に即した 全社を巻き込むリブランディング――株式会社フラクタ

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これまで多くの企業のブランド構築、事業成長を支援してきたFRACTAの調査研究機関である「Research & Implementation」局。同局に所属する松岡芳美氏は、ブランド構築支援をするなかで、インターナルのコミュニケーションに課題を抱える企業が多いことに気づきを得、宣伝会議と共同で「インターナルブランディング研究会」を立ち上げた。7月24日には2回目となる研究会を開催。今回は「歴史ある企業の事業変革におけるインターナルコミュニケーションの実践」をテーマにFRACTAを含む5社が参加し、ディスカッションを行った。

写真 人物 Fracta Research&Implementation局 研究会参加者
研究会参加者 写真左から。松井証券 マーケティング部長 増田雄亮氏、 モスフードサービス 執行役員 社長室長 金田泰明氏、凸版印刷 広報本部 宣伝部長 佐藤圭一氏、チューリッヒ生命保険 コーポレート・コミュニケーション部 社内広報 担当 橘 裕子氏、 フラクタ ブランディングエデュケーター 松岡芳美氏。※社名・肩書きは2023年8月当時のもの。

カリスマ経営者からの承継 社内変革をどう進めるか?

「多様性が重要視される現代において、最適なインターナルブランディング手法とは?」をテーマにディスカッションを重ねてきた、FRACTA「インターナルブランディング研究会」。スタートアップ企業が多く集まった第1回、歴史の長い企業が集まった第2回に続き、第3回ではビジネスモデルをも変革するような新たなチャレンジをしている企業の担当者の参加を得た。

研究会の冒頭で、FRACTAの松岡芳美氏は「時代の流れに合わせて変革を迫られたとき、過去の強烈な成功体験があるほど、社内の意識を変えることは難しくなるのではないか。特にカリスマ的な経営者がけん引した企業には独自のカルチャーが醸成されているのではないか」と述べ、議論を促した。

この提示に対して、松井証券でマーケティング部長を務める増田雄亮氏は、「社長交代を機にブランドの再構築を行い、自律的な組織を目指している。しかし、トップダウン型の前社長に慣れた世代の戸惑いは大きく、なかなか統一感が出にくい状況にある」と述べる。

前社長は松井証券をネット証券事業に特化させることで、事業変革を実現したビジネス界の著名人。しかし、会社として次の成長のステージに行くため、新しい社長が事業を継承し、さらにリブランディング戦略にもチャレンジしているという。

増田氏の意見に対して、モスフードサービスで社長室長を務める金田泰明氏も、自社の現状を語る。「モスバーガー」をつくった櫻田慧氏は、カリスマ経営者として知られ、加盟店のオーナーからの支持も厚かった。「櫻田は1997年に亡くなり、すでに20年以上が経ったが、今でもオーナーさんから支持されている存在。しかし私自身もそうだが現在、モスフードサービスの中心を担う世代は、創業者に会うことなく育ってきた者たち。そういった状況で、創業者の思いやモスの文化をどう引き継いでいくかがミッションだと感じている」と話す。経営者個人の思想や哲学なども会社のDNAとして継承していくべきもの、逆に時代に合わせて変えていくべきもの、その判断が必要とされそうだ。

社名が変わるとき 必要な社内への説明

またモスフードサービスは、2022年に創業50年を迎えたタイミングで企業ロゴにあった「MOS BURGER」の文言を外す判断をしたという。昨今はECサイトでライスバーガー専門店を展開するなど、祖業であるハンバーガーショップにとどまらない事業展開を目指す意志を示す目的もあったという。

祖業にとどまらない事業変革に伴い、すでに大々的なリブランディングを行っているのが凸版印刷だ。2023年10月の持ち株会社体制への移行に伴い、凸版印刷から“印刷”の文字が消え、持ち株会社の商号は「TOPPANホールティングス」となる。同社の佐藤圭一氏は「当社は印刷テクノロジーをベースにしながら、情報コミュニケーション事業、生活・産業事業、エレクトロニクス事業と多岐にわたる事業を展開している。これまで大泉洋さんと成田凌さんを起用した広告シリーズ『すべてを突破する。TOPPA!!!TOPPAN』を展開し、印刷以外に広がる当社事業を知っていただく取り組みをしてきた。社名変更に際しては、社外だけでなく社内に対するコミュニケーションにも注力をしている」と話す。

参加企業内で今回、唯一の外資系企業となったチューリッヒ生命保険のコーポレート・コミュニケーション部で社内広報を担当する橘裕子氏からは、「多様性」を体現するグローバル企業ならではの社内広報の難しさが語られた。そもそも社内広報の担当が置かれていること自体、国内企業では珍しく、グローバル企業の方がインターナルブランディングの取り組みは進んでいると言われる。

しかし橘氏からは「グローバル企業だからこそ、逆に各拠点に100%合わせた形でのローカライズがしづらいという課題もある。スイスにある本社から下りてくるツールは、良くも悪くもヨーロッパの風土に即したものなので、日本でそのまま使うことは難しいケースもあり、工夫が必要」との悩みが語られた。

企業と個人のパーパスが重なるところを見つけよう

ディスカッションの中盤に佐藤氏から「紙の印刷は減りつつあるが、それが土台になって現在があるのも事実。社名から『印刷』が消えるとしても、当社の事業は印刷から始まったということは伝えなければならない。いま現在、印刷業に従事している人へのケアは大事」との発言があった。これに対して松岡氏も「統一感を出すことは大事だが、個人の気持ちをないがしろにしてしまっては、変革後にしこりが残りかねない」と指摘した。これに対して佐藤氏も「個人が主役となる時代においては、企業のパーパスを浸透させるのではなく、一人ひとりに自分が働く理由(マイパーパス)を考えてもらう働きかけが必要」との考えを示した。

会社と個人の関係の在り方にまで広がった今回のインターナルブランディングに関する議論。FRACTAの松岡氏は、「会社のパーパスと個人のパーパスの重なり合う場所こそが、その人の組織内における活躍の場と言えるのでは。一方的に従業員にパーパスを浸透させるようなスタイルではないコミュニケーションの方向性が見えてくる議論になった」と研究会を総括した。

第3回研究会を終えて

時代の変化と共に、固定観念的だったインターナルブランディングの考え方への変化も見られた今回。「浸透」より「共創」の流れを感じました。ただ、それもまた、いつか移り変わる時が来る。大事なのは、自社の文化や理念、人をよく認識し、自社に適切なやり方を考え抜くこと。エクスターナルブランディングにも多大な影響を及ぼすと認知され始めた今だからこそ、インターナルブランディングにしっかり取り組む価値があると確信できた会でした(松岡芳美)。

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