2023年度グッドデザイン賞（主催：日本デザイン振興会）は10月25日、最高賞となるグッドデザイン大賞に高齢者向けのデイサービス施設「52間の縁側」（千葉県八千代市）を選出したと発表した。受賞者はオールフォアワン、山﨑健太郎デザインワークショップ。

「52間の縁側」は2022年12月、千葉県八千代市にオープン。高齢者向けの施設でありながら地域の人たちが気軽に立ち寄ることができる、縁側のような場所となっている。“共生型”のデイサービスを目指しており、介助が必要な高齢者とともに、さまざまな事情で家庭や学校に居場所のない子どもたちなど地域の住人も食事や風呂といった時間を共に過ごすことができる。住人はそこで生活する代わりに、施設の手伝いをするというシステムになっている。

施設を手がけたのは、千葉県で民家を借り、そこで小規模の宅老所・デイサービスを運営している「オールフォアワン」代表の石井英寿氏と、山﨑健太郎デザインワークショップ代表取締役で一級建築士の山﨑健太郎氏。

10月25日の記者発表会で登壇した石井氏は「皆さまのおかげです。それ以外に言葉もありません。ありがとうございました」と述べ、感無量の様子を見せた。

齋藤精一審査委員長は、今年度の審査でテーマとしてきた「アウトカムのあるデザイン」について、「北極星をみつけること」ではなく、その「北極星に対して一歩踏み出すこと」と定義した。今回の大賞については「まさに一歩を踏み出し、その先まで向かっている取り組み」として評価している。

「大きなマーケットがあるからつくるべき、という経済の合理性を求めるだけではない。そこには地域固有の課題があって、熱意がある事業主体と、建築家、プロジェクト趣旨に賛同し参画している方々、そして居場所として利用されている方々がいる。“まずはやってみよう”というところから始まったかもしれないが、どんどんアップデートして活動体として最終的に利益を生み出し始めている。マーケットは小さくとも、必要とされているところにデザインの力が届いたのではないか、と感じられる取り組みでした」（齋藤氏）。

10月5日に発表された、大賞候補となったほかのファイナリストと得票数は以下のとおり（得票数順）。

・学校法人神山学園、神山町「神山まるごと高専」／3230票

・日本放送協会「NHKシチズンラボ」／1801票

・トヨタ自動車「プリウス」／1701票

・パナソニック「Panasonic ラムダッシュ パームイン ES-PV6A」／1479票