不祥事が起きた際、企業は「説明不足」と批判されることを恐れ、できるだけ多くの情報を一度に公表しようとしがちだ。しかし、情報量を増やせば、必ずしも説明責任を果たせるわけではない。
アステリア執行役員の長沼史宏氏が主催する広報勉強会@イフラボが7月14日に開催した緊急講座で長沼氏は、フジテレビの『夫婦別姓刑事』を巡る対応を分析した。
フジテレビが7月7日に公表したプレスリリースは5ページ、5000字を超えていたが、長沼氏は、情報量の多さに加え、時系列や論点が整理されていない構成が落とし穴になったと指摘する。後編では、複雑な問題を伝わる形に整理し、事態を収束へ導く情報開示の方法を紹介する。
情報量が多くても、伝わるとは限らない
フジテレビのプレスリリースは、出演前の情報共有から外部弁護士による評価、撮影継続の判断まで、事実関係や対応の経緯を詳細に説明していた。
一方、文章による説明が大半を占め、重要な出来事を時系列で一覧できる構成にはなっていなかった。日付の記載も限られており、読み手が事案の全体像を把握するには、文書を行き来しながら自ら経緯を整理する必要があった。
文章だけで数千字を費やしても、日付や主語、意思決定に至った経緯が埋もれていれば、読み手は状況を正確に理解しにくい。記者も自ら年表を作り、声明や報道内容を照合しながら事案を整理することになる。その過程で、企業が伝えたい論点と、報道側が注目する論点がずれる可能性も高まる。
また、一度の発表に多くの情報を詰め込めば、重要な事実と補足的な説明の優先順位がわかりにくくなる。企業側には説明を尽くしたつもりでも、読み手には「何が問題で、会社がどう対応したのか」が伝わらない事態が起こり得る。
長沼氏は、事案の発生から現在までの主要な出来事を日付とともに整理し、「いつ、誰が、何を、どのように対応したのか」という5W1Hを明確にする必要性を説く。
時系列表や図表、ポジションペーパーを用意すれば、メディアだけでなく、従業員、取引先、株主、顧客も同じ情報をもとに事案を理解できる。
情報を増やせば、説明責任を果たせるわけではない。何が起き、会社がいつ把握し、誰がどのような判断を下したのかを、読み手の視点で整理することが重要となる。
