駅員の胸にはウェアラブルカメラ、コールセンターでは顧客の怒鳴り声をAIで「穏やかな声色」に変換――。従業員をカスタマーハラスメント(カスハラ)から守る企業の対策が進化している。
10月1日、改正労働施策総合推進法が施行され、すべての事業主にカスハラ防止措置が義務付けられる。これまで現場の従業員個人に委ねられがちだった「困った客」への対応を、企業全体で担うことが求められる。SNSでは、こうしたカスハラ行為に及ぶ人を「カスハラー」と呼ぶ投稿も見られる。
一方、企業が直面する苦情のあり方も変わりつつある。クマの駆除をめぐって自治体に長時間の電話が寄せられたり、生成AIでつくられた大量の論点を含む文書が企業側に持ち込まれたりする事例も現れた。カスハラ対策の義務化を前に、企業や自治体はどのような「防衛策」を講じているのか。
猛襲する「カスハラ―」(イメージ)。AIで生成
小田急は全70駅に「ボディカメラ」
小田急電鉄は4月16日、小田急線全70駅で駅係員用のウェアラブルカメラを導入した。カスハラや駅構内でのトラブルが発生した際など、駅係員が胸部に装着して現場を記録する。全駅合わせて90台を導入した。
導入後約1カ月の時点では、同社が「第三者行為」として把握した事案は0件だった。ただし、カメラとの直接的な因果関係については「不明」としている。一方、駅係員からは「心理的負担の軽減」「安心感の向上」につながったとの声が多く寄せられたという。
カメラの役割は証拠を残すことだけではない。「撮影されている」という状況自体がトラブルの抑止につながる可能性があり、駅係員の安心感向上にもつながっているという。
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怒鳴り声を「怖くない声」に
ソフトバンクは2月、コールセンター向けカスハラ対策サービス「SoftVoice」の提供を開始した。顧客の怒鳴り声や感情的な声をAIでリアルタイムに処理し、発言内容は変えず、声のトーンや抑揚を「穏やかな声色」に変換してオペレーターへ届ける。
約300人を対象にした実証では、音声変換後の「怒り」の印象に関する評価指標が平均30%以上低下したという。暴言や長時間の電話が続いた際には、管理者の承認を経て警告メッセージを流すことができ、状況に応じて3段階の警告レベルを使い分ける。
