会社は、施策によってのみ動くものではありません。人が集まり、日々の意思決定と行動を積み重ねることで、組織としてのあり方が形づくられていきます。本連載では、企業における意思決定を、個々の判断にとどまらず、組織や文化として、そして企業価値にも影響を及ぼす経営の営みとして捉え、そのあり方を並木将仁氏(テロス・エロス・エトス)と考えます。
テロス・エロス・エトス 代表取締役
並木将仁氏
マッキンゼー、PwCを経て、インターブランド ジャパン代表取締役を約9年務める。現在はテロス・エロス・エトス創業者・代表として、人間的判断に寄り添う経営支援を実践。
第1回はこちら
企業が社会に提供する価値や存在意義が、ブランドを考えるうえで重視されるようになりました。一方、価値観が多様化し、「何が正しいか」をめぐる共通認識が揺らぐ中では、パーパスを掲げるだけでは答えを出せない場面も増えています。
第2回では、企業が自らの「正義」をどう定め、意思決定として示していくか。その積み重ねがブランドに与える影響を考えます。
ブランドに問われる「正義」
かつてブランドは、商品の機能や品質、価格といった価値を中心に語られてきました。その後、情緒的な価値やブランドをめぐるストーリーが重視されるようになり、現在では、企業が社会にどのような価値を生み出すのか、何のために存在するのかというパーパスや社会的な意義も、ブランドを形づくる重要な要素になっています。
ただ、ストーリーテリングそのものは、どちらかといえば技術的な問題です。創業者の思いや事業の背景をどう伝えるかはもちろん重要ですが、より本質的なのは、その企業が世の中にどのような価値を生み出そうとしているのか。そして、何を「正しい」と考えているのかということです。
前回、より良い意思決定を考えるための視点として「Good」「Right」「Fitting」を紹介しました。企業における倫理とは、唯一の正解に従うことではなく、複数の視点から自分たちにとっての正しさを考えることです。
この視点は、ブランドにおいても重要になっています。
対立の中で立場を示す
以前であれば、違法行為や明らかな不正をしないことが、企業に求められる「正しさ」の大きな部分を占めていました。しかし現在は、ステークホルダーが持つ価値観そのものが多様化し、ときには互いに対立しています。
正しさについて共通の答えがない以上、企業は「自分たちはどこに立つのか」というポジションを取らざるを得ません。
例えば、ある企業が新たなサービス方針を打ち出した際、その方針をめぐってさまざまな意見が生まれることがあります。そこに単純な正解があるというより、異なる価値観がぶつかっていると見ることができます。そうした状況で問われるのは、批判を避けることではなく、自分たちが何を大切にし、何をよりどころに判断するのかを示せるかどうかです。
