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データを集めるだけでは「分析」と言えない

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蛭川速

データ分析をストーリーで学ぶ書籍『社内外に眠るデータをどう生かすか ~データに意味を見出す着眼点~』が発売になりました。今回は、発売を記念して、本書のストーリーを少しだけアドタイで公開していきたいと思います。日々、データに向き合い、企画やプレゼンを行っている方は、主人公の遼平に共感しながらお楽しみください。

前回のストーリーはこちら

2次データはビジネスチャンスの宝庫

翌朝、緑川が遼平のデスクの隣に座り、唐突に話し始めた。

「昨夜のミーティングで、データの重要性について理解したと思う。今日は新事業について具体的に検討するプロセスを考えていこう」

「はい!今日もよろしくお願いします」

「新事業を検討していくには、いくつかのプロセスがある。アイデア一本で勝負するやり方もあるが、新任のマーケティング課長さんには基本をしっかりと学んでもらおう。まずは市場の環境を分析していく」

「我が社を巡る経営環境を分析していくんですね」

「そうだ。今回のミッションは新事業だが、当社がいきなり不動産事業や観光事業を手掛けるというのは、あまりにも突飛だ。あくまでも菓子周辺での新事業開発と限定しよう。市場環境を分析するにあたっては、統計データを収集し、そこから環境変化の要因を探索するというアプローチがオーソドックスにとられる。ではどんなデータを収集していったら良いだろうか?」

緑川は遼平のデスクに自分のノートパソコンを広げ、遼平にいくつかのチャートを見せ始めた。

「インターネットで検索するとたくさんの情報を収集することができる。ただその中身は玉石混交だ。まずは、Factつまり事実を示しているデータに着目すべきだ。そして何より重要なのは、価値ある仮説を設定するには、“定量データ発”の方が望ましいということだ」

「定量データですか?」

(筆者作成)

「データには数字で表されている定量データと、主に言葉(言語)で表されている定性データがある」

「その定量データから仮説の発想を始めるということですか?なぜ望ましいのですか?」

「仮説は他者に納得してもらって初めて価値がある。定性データを使って、それはたまたまの意見に過ぎないと言われてしまったら終わりだ。疑問の余地が残ってしまう。定性データは解釈によって何とでも変わってしまう。定性データの活用範囲は広いが、仮説を設定する初期段階はFactをベースにした定量データが望ましい」


【解説】
企画を立てる上で最も大事なことは「仮説を立てること」と私は考えています。当たり前のことに聞こえるかもしれませんが、企画が成功するかどうかは、実行した後でないと分かりません。ですから、どうしたら成功するかをじっくりと考えなくてはなりません。

市場がどのような状況にあり、将来どのように変化していくのか、いくつかのパターンを考え、変化に備えることが重要なプロセスになります。精度の高い仮説を立てるには、まず現状をしっかりと認識することから始めます。大事なのは、ただ単に情報を集めれば良いというのではなく、何が重要なことなのかをしっかり考えること、重要なFactを見出すことです。

次ページ 「Factから要因を考察する」へ続く