データを集めるだけでは「分析」と言えない

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40代世帯の特性を整理する

遼平率いるマーケティング課は、環境分析で明らかになった菓子業界の課題を踏まえ、新事業の前提となる新商品のコンセプトを整理しはじめた。

葵は昨日作成したグラフを見せながら説明した。
「先日はカテゴリーごとの家計支出を出したのですが、次は、世帯年齢ごとに調べてみました。40代世帯が最も菓子購入金額の多い年代だったのですが、なかでも洋菓子の購入金額が多いことが分かりました。特に40代のレート・シェア分析から、ビスケットとスナックが特化係数、拡大係数ともに高いことがわかります(※)。どちらのカテゴリーも昔からあるのに他の年代よりも特徴的な購買をされていることに不思議に感じています」

※・・・レートは変化率、即ちどの程度増加したのかということ。拡大係数という指標で判断する。シェアは文字通り割合のことを言い、特化係数という指標を使う。

40代世帯のレート・シェア分析の結果(2016年)

「難しいな、ここ5年間でビスケットやスナック菓子の爆発的なヒットというのは聞いたことないし」

そう遼平が言った瞬間、葵が思いついた。

「あっ、もしかしたら働いているのかも・・・」

「なるほど!有職主婦が増えたから。日中に主婦が家にいないからスナック菓子やビスケットを子どもが食べるという構図か・・・あり得ますね」

「でもチョコレートでもいいわけなのに、バブルチャートでチョコレートは右下にある。夕食が遅くなるから夕食代わりにビスケットとスナックというのは少し強引だな。よし、仮説をこのように整理しよう」

遼平はホワイトボードに仮説を書き始めた。

40代世帯は食材購入の担い手である主婦が働く比率が高く、ビスケットやスナック菓子を常備することで子ども達の空腹を満たしている。購入は、職場と家の生活動線上で行われるが、和菓子よりも洋菓子のほうがチャネルが多く、洋菓子の購買比率が高まっている。

「この仮説を検証するために、どんな情報があればいい?」

「年代別、未既婚別の女性就業率ですかね」

まずは、「40代世帯は主婦が働く比率が高い」ということの検証を行おうと葵は考えたのだ。

「そうだね。過去と比較できると尚いいね」

「分かりました。あとビスケットやスナックが増えた要因についても考えてみます」


【解説】
ポジショニングとは、顧客の頭の中に自社とはどんなブランドなのか、しっかりと位置づけることです。世の中の流れを掴んで、方向性を見定めることで見えてくるものがあります。そうした流れに沿って、まずはターゲットを設定します。ここでのターゲットは仮説の仮説ですから後で修正することも織り込んで柔軟に設定します。

ターゲットを設定したら、ニーズ仮説を抽出していきます。ここでは顧客の潜在ニーズを探ることがポイントとなります。潜在ニーズは「顧客が気づいていないもの」や「当たり前とあきらめていること」です。デフレ時代、モノが溢れている現在では顕在ニーズだけでは顧客のハートを掴めません。潜在ニーズは顧客の実態データから探索することができます。Fact度合の高い定量データから潜在ニーズをどう抽出したら良いか本書では解説しています。

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