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コミュニケーションは「コスト」ではなく「インベスト(投資)」である

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ナガオ考務店の代表でファシリテーションの専門家・長尾彰さんと、『予定通り進まないプロジェクトの進め方』著者の前田考歩さんの対談後編。
前回は、「賢者風リーダーと愚者風リーダー」「shouldではなくwantで語る」「目標(Goal)と指標(indicator)の違い」について語っていただきました。今回も「Whyから始まるゴールデンサークル」「指標をアップデートする」など、プロジェクトを円滑に進めるための興味深い視点が示されます。

長尾彰氏(ナガオ考務店)

前田:ちょうどこの対談の数日前に、代官山蔦屋書店でプ譜制作ワークショップを開催したんですが、その時に、今までずっと経理部門で働いてきたんだが、ブランド刷新プロジェクトチームにアサインされて、プロジェクトの進め方というものがわからないので参加したという方がいらっしゃいました。

この方はわからないから情報や知識を求めて主体的に行動されていて素晴らしいと思うんですが、先ほど長尾さんがおっしゃった「他者が目標設定してしまうと受け身になってしまう」というのは、上司などの他者から目標を与えられると、より受け身になってしまうという意味だと受けとりました。そうならないように、目標ではなく指標の意味も共有にしようというのが先ほどのメッセージだとして、この指標も与えられていては受け身になってしまわないでしょうか?

長尾:目標も指標も一方的に与えてしまってはいけないですよね。

前田:私たちは義務教育時代に多くの目標を一方的に学校から与えられて、社会人になってからも「今年度の売上目標は何億円なので、個人目標は何百万円!」という感じで目標を与えられています(苦笑)

長尾:目標や指標を与えられて、それらの一方的一義的な評価を偏差値化されるという9年間の経験が「評価嫌い」を生み出しているのんじゃないかと思います。だからこそ、目標と指標の意味を上司や部下、教員や生徒が共有しながらつくるというプロセスをともにする必要があります。そのためには「指導」ではなく「対話」が必要で、相談する相手として僕のようなファシリテーターが存在しています。

前田:目標と指標の意味を合わせる作業というかプロセスを、プロマネとメンバーの双方が自分ゴト化していくために、私はプ譜をプロジェクトメンバーが一人一人つくってみて、互いの頭の中にあるプロジェクトの進め方のイメージやプランを外在化することをワークショップや研修で行っています。そうすると、同じ方向を向いているように見えるプロジェクトメンバーであっても、考えることが全然違っていて、特にプロマネはその違いに愕然とすることがあります。長尾さんがこのプロセスで大事にしていることはありますか?

 

長尾:サイモン・シネックの 「優れたリーダーはどうやって行動を促すか (How great leaders inspire action)」というTED動画でも紹介されていましたが、「Why」から始まるゴールデンサークルというものがあります。「Why」→「What」→「How」の順番で考えることが、リーダーがメンバーに行動を促すことになるというものなのですが、多くの人は、whatやhowから入ってしまいます。期限や成果責任を伴わない「遊び」であれば手段が目的になることはまったく問題ありませんが、仕事はそうはいかない。だとすればなおさらwhy、「なぜ(なんのため)」という目的をお互いに理解しておくことが重要です。

前田:たしかに、プロジェクトでも目的ではなく手段から入ってしまうものがけっこうあります。「他社がこれこれの施策やマーケティング手法を導入し手うまくいっているから、それを取り入れよう。ついては、それはどのようにやればいいか」というヤツです。我々もプロジェクトが行き詰ったら、一度さかのぼって、「そもそも」や「なぜこのプロジェクトをやろうとしているか?」を問うことを推奨しています。



完璧なリーダーはもういらない
チームづくりの専門家でもある著者・長尾彰氏が、TVアニメや実写映画にもなった人気マンガ『宇宙兄弟』に登場する数々のエピソードやセリフを引用し、自分の強みを活かしながらリーダーシップを発揮する方法や、理想のチーム作りを指南する!

次ページ 「対話を通じてプロジェクトの指標をアップデートする」へ続く