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いま、人の心を動かすものとは~ 岡本欣也×原野守弘×チャイ子ちゃん®

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岡本欣也×原野守弘×チャイ子ちゃん®

正統派コピーライター・岩崎俊一さんに弟子入りした岡本欣也さん、そして34歳から独学でクリエイティブの仕事を始めた原野守弘さん。全く違うキャリアを歩んできたお二人ですが、GODIVAをはじめ、これまで一緒に仕事をする機会が多くありました。そんなお二人が今年、著書を刊行。原野さんの著書『ビジネスパーソンのためのクリエイティブ入門』(クロスメディア・パブリッシング)と岡本さんの著書『ステートメント宣言。』(宣伝会議)を軸に、ブログライターとしても知られるコピーライター・チャイ子ちゃん®が聞き手となり、下北沢B&Bでトークイベントを開催しました。

ステートメントとは何か?

チャイ子ちゃん®:岡本さんの『ステートメント宣言。』、そして、原野さんの『ビジネスパーソンのためのクリエイティブ入門』、ご出版おめでとうございます!普段から一緒にお仕事をしているお二人がほぼ同時期に本を出したわけですが、原野さんが岡本さんのゲラを見たとき「驚くほど、似ている」とおっしゃったと聞きました。

まずは『ステートメント宣言。』から。そもそも「ステートメントとは何ぞや」というところから、岡本さんに伺いたいと思います。

岡本:キャッチコピーの下にある数百文字の文章を、一般に「ボディコピー」と言います。これまでボディコピーは広告の中でキャッチコピーを補足説明する意味合いが強かった。でも、この10年くらいの間に企画書の冒頭で“全体を指し示す設計図”として、“1枚の手紙”のように書くことが増えてきています。それがステートメント、あるいはマニフェストと呼ばれているものです。

ここ何年か、その役割が高まっているのを感じていたこともあり、それをきちんとまとめて、みんなに伝えられたらいいなと思ったことが、この本を書くきっかけになりました。ちなみに、ステートメントは日本語では「宣言・声明・約束」といった意味なので、この本は『宣言宣言。』という変なタイトルになるのですが、意図的にそうしています。

発行:宣伝会議
定価:1980円(税込み)
ISBN:978-4883355174

チャイ子ちゃん®:原野さんは、このタイトルに感銘を受けたそうですね。

原野:『ステートメント宣言。』というタイトルを見て、そう来たかと思いました。もしかしたら僕が書いた本と近いことを書いているんじゃないかと思って、ゲラをパラパラとめくってみたら、本当にそうだったから面白いなと思って。

この本について簡単に説明すると、ベテランの岡本さんが若いコピーライターに向けてボディコピーの書き方を指南する、ということが核としてあるんですけど、「コピーライターだけに向けたものか?」というと、決してそうではないんですね。

チャイ子ちゃん®:と言いますと?

原野:僕と一緒にPARTYを立ち上げた伊藤直樹君は、以前にワイデン+ケネディに在籍していたので、あるとき「ワイデンではどうやってプレゼンしているの?」と聞いたことがあるんです。そこで、僕は初めてマニフェストというものを知りました。マニフェストには、キャンペーンのテーマ、時にはその構造を含む全てのことが書いてあって、プレゼンの冒頭ではまずその一文を朗読する。それによって、全員が今回やろうとしていることの全体像を把握することができるんです。それがグラフィックや映像など、全てのベースになります。

それから、岡本さんの本で感銘を受けたのは、ステートメントを“人の心をまとめるもの”と捉えているところです。例えば学校や会社、もっと大きく言うなら政府や国が何かを始めるときに、最初にステートメントを伝えることによって参加している人の心がひとつになったら、あらゆる物事が運びやすくなりますよね。この本はコピーライターのための勉強の本を超えて、そこに拡張できることに気づいて、大変感銘を受けました。

岡本:ありがとうございます。原野さんがアドタイに寄せてくれた原稿の中で、僕の本の中から「言葉をまとめると、心はまとまりやすくなる」というところを拾ってくれて、「あらゆる組織の運用に役に立つ」と書いてくださいました。僕もステートメントをできるだけ広げていきたいと思っていたんですけど、自分の頭の中ではそこまで広げてなかったんですね。原野さんがそう言ってくれたことで、改めて気付かされました。

原野:米国・バイデン大統領就任式やNFLのスーパーボウルの開会式でアメリカの詩人 アマンダ・ゴーマンが詩を朗読しましたよね。岡本さんの本に出てくる、キング牧師の「I have a dream.」も詩であり、ステートメントです。それを見て思ったのが、ステートメントというものは理屈で計画を説明する文章ではなくて、心を動かす、心をまとめることが重要だということ。

人間って心が動かないと結局、行動は変わりません。だから、ステートメントは頭で理解させるためにあるんじゃなくて、みんなが「それいいな、素敵だな」と思って自然と後を付いてくるようになるためにある、ということですね。その辺りも僕の本と似ているなと思ったところなんです。

広告の話で言うならば、クリエイティブだからということではなく、マーケターやストラテジストが書く文章にもステートメントがあれば、もっと伝わるものになるはずだし、何枚にもわたる資料も必要なくなる。

岡本:原野さんの本に「越境せよ」と書いてありましたが、クリエイティブだから、マーケターだからと線引きするのではなく、お互いに溶け合って共通の言葉を持ったほうがいい気がしますね。

次ページ 「言葉のユニバーサルデザインを考える」へ続く