“火消し” 大失敗のフジテレビ 佐藤二朗の反論で声明は台無し、火に油を注いだ5つの理由 中居問題では遅すぎ、今回は早すぎた「反省」の空回り

フジテレビジョンは7月2日、4月期の連続ドラマ『夫婦別姓刑事』の撮影現場をめぐる週刊文春と文春オンラインの報道について、メディア各社にコメントを出した。同作でW主演を務めた佐藤二朗の撮影中の言動をめぐり、共演者の橋本愛へのハラスメントがあったと報じられた件を受けたものだ。フジテレビは「男性俳優の言動について、厳重注意を行うとともに、再発防止を求めたことは事実」と認めた。

写真 フジテレビ会見の様子

2025年1月27日のフジテレビ会見

元タレントの中居正広氏とフジテレビをめぐる一連の問題では、同社は初動対応や説明姿勢に厳しい批判を受けてきた。報道翌日のコメント発表には、その反省が生きているようにも見える。一方で、佐藤側が報道内容に反論する中、局と出演者側の見解の違いはより鮮明になった。

この対応を危機管理広報の観点からどう見るべきか。アステリア 執行役員コミュニケーション本部長の長沼史宏氏に聞いた。

問題点1「対応方針が定まらないまま回答」

まず目立ったのは、フジテレビの対応の早さだ。文春オンラインの報道は7月1日。佐藤二朗の所属事務所は同日中に反論し、佐藤も自身のSNSで思いを投稿した。その翌2日午前、フジテレビは報道に関して踏み込んだコメントを出した。

長沼氏は、メディアからの問い合わせに速やかに回答する行為自体は評価できるとする。一方で、そもそもこの件についての報道対応方針が事前に定まっていたのかどうかには疑問を示す。

「週刊誌で取り沙汰されてしまったために、方針が定まらないなかで仕方なく回答することとし、内容についても認めてしまったのかもしれない」と指摘する。

その結果、報道された内容について一部事実を拙速に認めてしまった可能性があるという。危機管理委員会などを通じて、広報にもリスク情報として事前に伝わっていたのかどうかも疑問だとする。異なる意見を持つ俳優の所属事務所から別の見解がメディアに明かされ、結果として騒動が大きくなっているためだ。

「これでは文春の思う壺になっている。ネガティブな情報については、イシューとして広報担当も早くから把握しておき、報道姿勢を事前に定めておきたいところ。また、意見が異なる関係者がいる場合は、そことの意識合わせも重要」と話した。

問題点2「争点を早く明確にしすぎた」

週刊誌報道を受けてコメントを出した点について長沼氏は、「従来であればノーコメントに徹していたような事案でも一定の説明を試みた」として、フジテレビの広報対応が「進化している部分」だと評価する

ただし、説明に踏み込んだことで、別のリスクも生じた。今回の声明で特徴的なのは、フジテレビが問題視した行為を限定的に示した点だ。

フジテレビのコメントでは「女性俳優の顔に触れた点」ではなく、「女性俳優が演技上の制約を有することになった経緯を認識しながら発した言葉等」が問題視されたと説明し、詳細を伏せつつも、認める部分と否定する部分を切り分けている。

長沼氏は、現段階で争点を明確にすること自体にリスクがあったと指摘する。特に、問題だったのは「あらぬ方向へ憶測や情報が独り歩きし、俳優への誹謗中傷にも発展してしまったことだ。その結果、当事者それぞれが立場や思いを主張せざるを得ない状況となり、誰にとっても不幸な展開を招いてしまっている」だという。

「フジテレビ、俳優が所属するそれぞれの事務所から異なる主張が行われているので、揉めていることが助長されることになる。文春の狙い通りに展開していることは残念」と強調。情報の独り歩きを防ぐためにも、現段階で争点を明確にしない方が安全だったのではないかと指摘した。

トラブルがあったことは認めつつ、その詳細は調査や検証を経て明かす方法もあったとする。「鋭意調査や検証をしていることを強調することで、企業としての義務を果たしていることを社会に発信することができる」と話す。両事務所を交えた調整を行い、意識合わせと足並みの揃った発表にすることが理想的だったという。

さらに、「結果論にはなるが、当事者らの連携ができていれば、文春報道に待ったをかける冷静なコメントもできたはずだ。事実関係を踏まえたうえで、三者間での十分な合意形成と広報連携が図られていれば、騒動を必要以上に大きくしない対応も可能性だっただろう」と付け加えた。

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