GMOインターネットグループの熊谷正寿代表は7月14日、グループで続けてきた在宅勤務の推奨を、13日付で完全に廃止したと明らかにした。
同社はコロナ禍で、約4000人規模の一斉在宅勤務に踏み切った。GMOは当時、この規模での一斉在宅勤務を「日本初の試み」と説明していた。コロナ収束後も従業員のQOL(生活の質)などを考慮し、週1日の在宅勤務を認めていたが、今回その推奨を終了した。熊谷氏はXへの投稿で、在宅勤務によって生産性が上がる人の存在は否定しないとした一方、社内データでは時間当たりのPCタイピング数が減少していると説明。全体として在宅勤務はマイナスだと判断し、「負ける要素は排除する」と述べた。
タイピング数を計測した期間や対象職種、他の生産性指標との関係は明らかにされていない。また、在宅勤務そのものを制度上禁止するのか、育児や介護、健康上の事情などに例外を設けるのかも現段階では不明だ。
「未来家賃削減」構想も、6年半で出社回帰
GMOが早い段階で在宅勤務へ移行できた背景には、事前の備えがあった。当時、AdverTimes.が取材した際には、東日本大震災以降、リモートワークを含むBCP訓練(災害時などに事業を止めないための訓練)を毎年実施していたことが、早期の判断を可能にしたと説明していた。一方で熊谷代表は当時、4000人規模のリモート化を「将来の組織のあり方を見るための壮大な社会実験」とも位置付けていた。
2020年2月に実施した従業員アンケートでは、回答した2800人の87.2%が在宅勤務をプラスに評価。業務への支障についても、70.1%が「なかった」「あまりなかった」と回答した。ただ、一般事務や管理部門、営業管理部門、金融系のグループ会社では相対的に評価が低く、自宅の通信・作業環境、紙を使う業務、電話対応、社内コミュニケーションなどが課題として挙がっていた。
2020年5月には、出社勤務を再開しつつ、週1~3日を目安に在宅勤務とするテレワーク体制に移行した。2021年にはテレワークの実施率を週次で公表し、5月10~14日の全拠点平均は67%だった。同年12月には、出社とリモートワークを組み合わせ、従業員増加に伴うオフィスの増床を抑える「未来家賃削減」を発表。オフィスコストの削減や、RPA、AI、ロボットの導入による生産性向上分を、給与として従業員へ還元する構想だった。
2022年時点でも、熊谷代表はフルリモートを最適解とは見ていなかった。GMOのオウンドメディア「i4U」では、4カ月にわたるフルリモート期間中も業績は上がった一方、それは過去に蓄積してきた「コミュニケーションの貯金」や「組織の習慣」が源泉だったとする見方を紹介している。熊谷代表は当時、リモートワークと出社のどちらか一方ではなく、両者の利点と課題を理解した上で、ハイブリッド体制を構築することが最適解だと位置付けていた。
その後、2023年2月には「週3日出社・週2日在宅勤務」の推奨を廃止し、グループ各社で出社勤務を原則とした。当時は、全員が顔を合わせることによるコミュニケーションの円滑化・活性化を理由に挙げている。この段階では、在宅勤務を、より高い成果を出すための「武器」として使うことや、オフィス賃料の削減を目的に計画的に活用することは認めていた。今回、その後も残っていた週1日の推奨を終了したことになる。
GMOは、2020年の全面的な在宅勤務からハイブリッド勤務、原則出社、週1日の在宅勤務推奨の廃止へと、約6年半をかけて段階的に出社重視へとかじを切ってきた。
