アジアの危機は、空から突然起きる 対応を間違えれば中国の術中にはまる!
昨年9月の沖縄県・尖閣諸島の国有化以降、中国の軍用機が東シナ海上空で日本領空への接近飛行・侵犯を繰り返している。軍用機は「Y8」と呼ばれるもので、中国で製造された多用途ターボプロップ4発中型輸送機である。日本の領空への度重なる接近飛行で確認されている「Y8」は、情報収集のためのものと哨戒を目的としたものがある。
日本の領空に堂々と侵入し、我が物顔で調査やパトロールを行う挑発的行為は、日本人ならずとも、国際的世界では許されないものだ。政府はこうした状況を重く見て、尖閣諸島周辺での相次ぐ挑発行為に対して、「警告射撃など自衛隊の対抗措置を強化する検討に入る」と発表していた。そんな折、中国軍艦による2件の火器管制レーダー照射が明らかにされた。
現在の日本において、自衛隊法第84条では、領空侵犯は航空自衛隊が対応することになっている。同時に、海上自衛隊のイージス艦や陸上自衛隊の地対空ミサイル部隊もサポートする。
航空識別圏における識別不明機に対する対応手順は以下のとおりである。
- レーダーサイトが、防空識別圏に接近している識別不明機を探知する。
- 提出されている飛行計画との照合を行う。
- レーダーサイトが当該機に航空無線機の国際緊急周波数で日本国航空自衛隊であることを名乗り、英語または当該国の言語で領空接近の通告を実施する。
- 戦闘機をスクランブル発進させて、当該機に並走し、目視で識別する。
- 戦闘機からの無線通告をする。「貴機は日本領空に接近しつつある。速やかに針路を変更せよ!」
- 領空侵犯の無線警告と、当該機に向けて自機の翼を振る「我に続け!」の警告行動を取る。
- 「警告。貴機は日本領空を侵犯している。速やかに領空から撤去せよ。」
- 「警告。貴機は日本領空を侵犯している。我の指示に従え!」
- 警告射撃を実施する。この際、蛍光弾を発射。
- 自機、僚機が攻撃された場合、国土や船舶が攻撃された場合は、自衛戦闘を行う。
ただし、自衛隊法第84条には、「着陸させる」か「領空外へ退去させる」選択肢しかなく、軍用機による侵犯行為であっても、それに対する攻撃については明確な記述がない。しかし、自機や国土に対する正当防衛の観点から、2機編成で対処中に1機が攻撃を受けた場合などは、攻撃した対象に対して、もう1機が攻撃を加えることは可能と解釈されている。この際、「過剰防衛」とされないことが重要となる。
現在の習近平体制では、習近平自身がこれまでのカリスマ指導者としての経験や特別な能力がない一方で、領有権問題をフォーカスし、国民に対して領土拡大への期待や強い思いを急激に植え付ける戦略を徹底して情宣している。その勢いは、3月5日に開催される中国全国人民代表大会へとつながっている。領土拡大戦略の過剰なまでの情宣活動は、戦って勝ち取る意思を鼓舞し、政府の掌握の範囲を超えて、既に人民解放軍の暴発までもが噂されるまでに至った。
現在、最も危険視されているのは、前述の手順における(9)の「警告射撃」である。
安倍政権は「警告射撃など自衛隊の対抗措置を強化する」としていたが、現時点においても「警告射撃」を実施していない。この理由としては、蛍光弾といえども日本の戦闘機が「警告射撃」を行えば、中国軍が直ちに攻撃態勢に入る可能性を否定できないとする政府の分析があるからだ。これらの分析結果は米国の安全保障を担当する部署やCIA(中央情報局)からも寄せられている。
習近平体制は、当然ながら人民解放軍が一線を越えて、日本や韓国、アメリカと戦闘態勢に入ることを望んでいるとは考えづらい。そんな事態が現実に起こらないよう日本政府はあえて「警告射撃」を取らずに今のところ推移している。
そうした緊張関係が発生している日本の領空において、再三にわたり、スクランブル発進を繰り返している航空自衛隊戦闘機の操縦士のストレスは計り知れないものだろう。先般の鼻先3キロのところでロックオンされた護衛艦「ゆうだち」の艦員の緊張も大変なものであったと考えるが、戦闘機同士が同じ領空を飛行し、中国機に一方的にロックオンされた場合、果たしてどこまで冷静にいられるだろうか?
中国の挑発行動が今後もエスカレートし、中国戦闘機による火器管制レーダー照射が日本の領空で行われるような事態だけはどんなことがあっても避けなければならない。万一にも中国軍の挑発にのり、対応を間違えれば、日本はこれまで経験したことのない危機に直面することになる。
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