初めまして。アーキセプトシティの室井淳司です。僕は今年の4月に13年間務めた博報堂から独立しました。博報堂では、空間ブランディングをおこなうチームを設立し、携帯会社やアパレルの店舗・空間領域のブランディングや、自動車やビールの、ポップアップスペースを利用した体験コミュニケーションを実施していました。
僕は、デザイナーは経営者のパートナーとしてあるべきだと思っているので、そのために小さくても経営を実践し、経営の肌感覚を身につけるべきだと考え、独立に至りました。そして、この「経営者のパートナーとしてのデザイナーの役割」が、このコラムで皆様と一緒に考えていきたいテーマでもあります。
僕は、大学で建築意匠を専攻した後、広告会社というコミュニケーションの領域で空間デザインを仕事にしてきました。いわゆる空間の正統派でも、広告の正統派でもなく、両者にとって傍流的なポジションを取ってきました。店舗や空間はクライアントの事業のコアであり、戦略の形態化であり、会計上は固定資産になります。広告は、マーケティング活動であり、戦略のストーリー化であり、会計上は経費になります。空間エントリーの僕にとって、デザインとはクライアントの資産をデザインしていくことでした。つまり僕に求められるデザインは、話題形成(コミュニケーション)より資産形成(ブランディング)でした。
僕の主なデザインの対象である店舗・空間のデザインは、作りかたでその後のオペレーションコストが変わったり、これまでに無い新業態が生まれたりします。そういった提案は、経営コンサルティング会社にはできない、デザイナー特有の新価値創造提案だと思っています。そしてそれは、M&Aや経営効率化の文脈では生まれない、イノベーティブでわくわくする、これからの事業を作るベクトルとなります。デザイナーは今、枠の中から飛び出し、クライアント事業の本丸に潜り込み、右脳と左脳と直感で仕組みを変え、根こそぎデザインして価値を創れるかが問われます。そんな航海士のようなデザイナーがいたら、経営者は彼を手放すでしょうか。
このコラムでは、経営におけるデザイナーの役割や、空間を創る仕事を通して僕が意識的に取り組んできた価値創造のことを、隔週12回に渡りショートコラムでお届けしたいと思います。半年間宜しくお願い致します。
「「経営のとなりにあるデザイン」〜デザイナーに何をさせるべきか〜」バックナンバー
- デザインをクライアントの経営資源にしていく。(2014/2/06)
- 「表参道布団店。」という、イノベーションの実験場。(2014/1/23)
- 体験デザインにイノベーションの未来を探る(2014/1/09)
- 「一番搾りフローズン<生>」制作秘話――(3)「空間デザイン」編(2013/12/19)
- 「一番搾りフローズン<生>」制作秘話――(2)「体験開発」編(2013/12/05)
- 「一番搾りフローズン<生>」制作秘話――(1)「ブランディング」編(2013/11/21)
- 「青山フラワーマーケット」に見る、購買体験から考える新業態の始め方。(2013/11/07)
- スタバがデザインした「コト」―体験デザインがブランドをつくる。(2013/10/24)
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