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「TBWA式いいアイデアの見きわめ方」/「SWAT」参戦記 前編

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いい別れが、いいアイデアと出会わせる。

テーブルにアイデアが乗った瞬間議論が加速する。左端が今回のSWATを主導したロブ・シュワルツ、右から二人目が筆者。

「お疲れさまでーす。」日本のミーティングは、必ずこの言葉で締められる。ヒドいときは、ため息混じりで締められる。でも、TBWAグローバル・クリエイティブ・プレジデントのロブは違った。「Have Fun!」 チームが会議室を去るときも、メールの文末もいつもそう。次のミーティングに向けて、新しいアイデアを生むことを楽しもうと声をかけるのだ。

SWAT中は意識しなかったし、その一言は直接アイデアに関係しないことだけれど、今思うと、れっきとしたクリエイティブディレクションの1つと言えるのではないだろうか。広告はチーム戦。チーム全体のモチベーションを気持ちよくアゲることで、きっと最終的にアイデアの質も量も高まっていく。

そして、この感覚は自己管理にもきっと活かせる。次はほめられたい!とか、採用されたい! とか、この競合に勝ちたい! とか何でもいい。これから企画することが少しでも楽しめるような気持ちでミーティングを去るように心がける。楽しむこと、ワクワクすることが、いいアイデアを生むコツかもしれない。

逆に、企画がつらくなったら、思い切ってサボった方がいい。弊社事例のフリスクのコピーを借りれば「Hello Idea」の前に、「Ideas! See you later!(アイデアたちよ、後で会おうね)」という気持ちのいい別れがあるイメージでしょうか。

嘘つきは、いいアイデアのはじまり。

日本人は謙虚だ。だけど、他国は違う。初回ミーティングの直前に遭遇したNYチームから「企画どう?」と質問を受けて、「いや~自信ないわ」と条件反射的に答えてしまう自分がいた。だが、彼らは正反対で「完璧だ!」と言うのだ。学生時代、試験前によくあった「やべぇ勉強してない」と言いつつ、ちゃっかり準備して高得点を取るといった心理戦が全くない。

その時は「自意識過剰な奴ら」だと思ったが、後に彼らから「Fake it till make it」という言葉を教えてもらった。訳は、「できるまで、嘘をつけ。」どんな状態であろうと、チームから進捗を聞かれたら、とにかくベストな状態だと言い張る。言葉に発することで、逃げ場がなくなる。それは、自分を追い込む魔法の言葉。このSWATで心に刻んだ個人的名言だ。みなさん、これから僕の企画は常に「完璧です」。(会社の上司に読まれると、バレるので効果ないが…)

いいアイデアには、ひな壇芸人が現れる。

ランチからワイン。が、顔に出るので遠慮気味に。

企画の良し悪しは、チームの反応でわかる。良い企画は説明をしている途中に、みんな何かを閃いちゃって「あんなことは?こんなことは?」と口を出したがるのだ。正直、「うるさいよ。まだ俺が説明してる最中なのに…お前ら、ひな壇芸人か?」と思うほど。

でも、これがTBWAの「Our Idea」という文化。一度テーブルに乗ったアイデアは、その時点でみんなのもの。他メディアでの施策に発展させてもいいし、考え方だけ残して別のデザインを掘ってみてもいい。企画が良くなるならすべて自由なのだ。「アレ俺詐欺」なんて存在しない。だって初めからみんなのものだから。

そして、そんなTBWAの中に身を置いてみて強く感じたことがある。それは、コア・アイデアを見つけることがプランナーの背負う使命だということだ。これはあくまで僕個人の感覚ですが、コア・アイデアとはジャンプ台のようなもの。小手先だけの360°企画なんて必要なくて、重要なのは360°に広がる円の中心。どんだけ高く、いろんな方向に飛べるジャンプ台を考えられるかどうか。

今回のSWATでは、最終的に日本チームのアイデアはポスターに限らず、店頭・屋外・交通・パッケージ・CM・Web・インスタレーション・スタント…と「僕ら」でアイデアを縦横無尽に進化させた形でクライアントに提案することになった。

ここでいう「僕ら」とは、もちろん日本チームのOurではなく全チームのOur。TBWA流を肌で感じられたことが大きな収穫です。

次ページ 「不正解のアイデアにも、意味がある。」へ続く(3/3)