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コラム

四苦ハック人生 in Sanfrancisco

なぜイノベーションがサンフランシスコで生まれるのか?ベイエリアの通勤事情に起業家精神の土壌をみる。

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サンフランシスコはカリフォルニア州ですのでヤシの実やビーチといった暖かいイメージがあるかもしれませんが、それはロサンゼルスのある「南」カリフォルニアの話。サンフランシスコは湾とその周りを取り囲む複雑な海流の関係から、夏は霧と風の影響でものかなり肌寒くなります。日によってはマフラーとコートを纏うほどに。ただ一方で冬はそれほど冷え込みません。雪が最後に観測されたのは1976年だそうです。例えばこれを書いているのは2月中旬ですが、この一週間は最高気温が20度をずっと超えています。と思ったら8月でも最高気温15度になったりします。そんな時でもイーストベイは20度〜25度の陽気な気候であることが多いです。距離にしてたった15キロほどしか離れていないのに、ほんとに不思議な気候です。イーストベイの紹介はほどほどに、そんなわけで引っ越しに伴いサンフランシスコへの通勤生活がはじまりました。

イーストベイからサンフランシスコ市内への通勤手段は大まかに3つ。
ひとつはBARTと呼ばれる電車。これは湾の下のトンネルを通ってサンフランシスコへつながっています。乗車時間およそ20分。

次にフェリー。オークランド港からサンフランシスコ港までおよそ35分。朝からちょっと優雅な気分になれますが、残念ながらフェリー乗り場が自宅からはちょっと距離があります。でもフェリーで通勤っていいですよね。まだ試したことがないですが、いつか挑戦したいです。

最後に車。渋滞がなければ早くて快適なんですが、橋の入り口の料金所での渋滞がとにかくひどい。おまけに通行料に6ドルかかります。(ちなみにサンフランシスコからイーストベイへの帰り道には料金所がありません。「普通往復するよね、だったら片側だけで料金を徴収すれば人件費も減るし渋滞も少なくなるし効率的だよね。」というエフィシェンシーを重視するアメリカならではの発想です。)

ただこの通行料と渋滞を回避できる画期的な方法があります。それが「カープール」。今回のコラムではサンフランシスコにおける通勤事情を例に、なぜスタートアップをはじめとするハッキングカルチャー(今風に言えば「アントレプレナー」つまり起業家精神)がここベイエリアで盛んなのかを考えてみたいと思います。

車社会のアメリカ。そのだだっ広い国土には、まるで蜘蛛の巣のようにフリーウェイと呼ばれる高速道路が張り巡らさられています。多くの人が一人で車を運転するため、それが引き起こす渋滞や排気ガスが深刻な社会問題になっています。僕がはじめてアメリカに来て最も衝撃を受けたのが、片側5車線の巨大なフリーウェイと、それが車でパンパンに渋滞している光景でした。

そのため多くの都市には一定以上の人数が乗車している車のみが通行を許されている「カープール」(Car Pool)と呼ばれる車線があります。政府は相乗りを積極的に奨励していて、ラッシュアワーの時間帯には複数人(場所によって異なるが、2人もしくは3人以上。サンフランシス周辺は基本3人)で乗っている車はこの専用レーンが使えて、渋滞にはまらずに移動が出来ます。

加えてサンフランシスコの場合、カープールしている車は橋の通行料が安くなります。一般車が6ドルに対し、カープールは2ドル50セント(つい数年前までは無料でした。)渋滞を回避できるうえに料金まで安くなる、まさに一石二鳥の政策です。

ちなみに排気ガスが少ないエコカーだと一人でもこのカープールが使えます。プリウスなどハイブリッドカーも昔はOKだったのですが、ハイブリッドが今や一般的になったため、現在は電気自動車だけになりました。高級電気自動車のテスラや日産のリーフがベイエリアで人気を博していますが、それにはこのカープールレーン政策が一役買っているのは間違いありません。

次ページ 「このシステムをうまく「ハック」して生まれたのが」へ続く