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コラム

電通デザイントーク中継シリーズ

西川美和×谷山雅計×福里真一「コピーライターと映画監督が語る、アイデアを生む“脳の動かし方”」【前編】

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西川さん→谷山さんに質問
「シンプルなアイデアのよさが、考え続けるうちにかすみませんか?」

福里:次は西川さんからの質問です。「谷山さんの本を読むと、コピーを100本、300本、一晩で、などという言葉がたくさん出てきます。例えば『日本の女性は、美しい。』のような極めてシンプルなフレーズはどの段階で出てきたものですか。シンプルなアイデアは数を考えているうちに、そのよさが埋もれたり、かすんだりしてきませんか」ということです。

谷山:いいものが出るのは、たいてい最初の10本以内か、最後の最後。TSUBAKIの「日本の女性は、美しい。」は0本目かもしれません。0本目というのは「日本の女性は、美しい。」は商品のテーマだから。当時、アジアンビューティーやハリウッドビューティーをイメージしたシャンプーが売れていて、日本の女性をど真ん中に置いたシャンプーというポジションが空いていた。そこで「日本の女性は素晴らしい、美しい」と言い続けるブランドをつくろうと生まれたのがTSUBAKIです。1本目に書いたものって、結構いいなと一瞬思うけど、だんだん不安になる。試し算のような感じでどんどん書いていくと、「これだけたくさん書いたけど、やっぱり最初に書いたのでOKだった」と、不安が解消されるんです。

西川:私も台本をすごく書き直します。でも、いろいろな要素を足し引きして、そのプロセスが膨らんでいくと、シンプルなものに立ち戻る勇気が無くなることも多くて。

福里:『ゆれる』の脚本を書き直しすぎて、出演する香川照之さんに「前の台本に戻してほしい」と言われたことがあるそうですね。

西川:そうなんです。「監督に俳優がこんなことを言うのは筋違いだろうけど、人生で俳優が監督にモノ申していいチャンスが3回あるなら、そのうちのカードの1枚を切ります」と言って、「2つ前の台本に戻してくれ」と言われたことがあったんです。

福里:香川さん、カッコいいですね。

西川:カッコいいんですよ。いろんな説明を台詞の中に理屈で込めて行くうちに、感情そのものの流れや爆発力は反比例して弱まった、ということを指摘されて、初稿を読み直したところ、とてもシンプルだということに気づくことができました。

次ページ 「原作・脚本・監督を1人でする時、視点をどう切り替えているのですか?」へ続く