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コラム

共感デザイニング

声をそろえて、感動する。

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同じ目線で取り組む。

トヨタ自動車が「アクア」という車のプロモーションで行っている「AQUA SOCIAL FES!!」という活動があります。「アクア」という車名から「水」をテーマに掲げて、日本中の様々な地域の川・海・湖の保全活動を行っており、2012年から始まって累計で4万人以上の一般の方が参加したそうです。

「アクア」という車はハイブリッドカーですので、燃費が良い=ガソリン代が安いという機能的価値を持っています。さらに、その先にある天然資源の消費抑制やCO2の排出削減といった「社会的意義」を一般の生活者に対して広く、そして参加者の方により深く認知させるための非常に良く考えられた取り組みです。

参加された4万人の方は、「アクア」と同じ課題を日頃から感じていた人たちだと思いますし、同じ課題に対して一緒に取り組んだ「仲間」として、「アクア」に対する共感が高まったことが想像されます。

そういえば、故・永六輔さんがこんなことを仰っていました。
亡くなった直後にネット上で話題になった記事ですので、すでに多くの方がご覧になったかもれませんが、電話相談を行うラジオ番組「全国こども電話相談室(TBS)」に寄せられた質問に対する回答です。

小6・女の子
好きな人に告白する言葉を教えて

永先生
言葉は一番大切です。でも、好きな人に「あ、この子好きだな」とか「いい人だな」と思われるには、「おなべをいっしょに食べて同じものをおいしいと思う」、「夕やけを見て、両方が美しいなと思う」というような同じ感動を同じ時点で受け止めるのが一番効果があります。

例えば、「いただきます」とか元気な声で言っていると、それだけで「あの子いただきますって言ってるな。きっといい子なんだろうな」と思うじゃないですか。「あなたがすき」ですとか、「キミを僕のものにしたい」とか、「世界のどこかで待ってる」とか、そういうのはあんまり効果がありません。

「きれいだな、おいしいな、うれしいな」ということが同時に感じあえる環境が一番大事。だから、「好きです、嫌いです」という言葉ではなく、いい言葉を使っている子は好きになれる。「あの人ならこの言葉は好きだろうな」と思った言葉を何気なく使っているときの方がドキンとします。「あなたが好きです」というのは最悪な言葉です。

だから、いっしょの環境にいるときに同じ感動をする場面に出来るだけいっしょにいる。スポーツの応援でもいいです。そうすると、使いあっている同じ言葉にドキンとすることがあって、それが愛なんです。

自分でいうのもおかしいけど、ひとりでご飯を食べてておいしいことないです。ひとりで野菜を食べているときは本当にさみしい。やっぱり家族、好きな人といっしょのほうがいい。二人っきり、まずはふたりになること。きれいな言葉を使いあうこと、きれいなことに感動すること、ふたりで声をそろえて感動してください。 

放送タレント 永六輔 先生
 

この話は、企業が生活者との間に築くべき関係性においても、大きな示唆を与えてくれます。テレビやスマホの画面から一方的に気持ちを伝えるだけでは、共感を育むためには不十分です。生活者と同じ立場で、同じ景色を見て、同じ悩みを抱えて、同じ感動を体験するのが、これからの企業と生活者のあるべき関係性ではないかと、私は思っています。

次ページ 「我々にできること。」へ続く