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#SXSW2017 VR時代のストーリーテリングには「双方向性」が求められる

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VR時代は“双方向の”ストーリーテリングが必要

前回触れたように、「ストーリーテリング」は今年のSXSWの注目テーマとなり、数多くの関連セッションが行われた。

Moment Factory社のセッションでは、ストーリーテリングの歴史を紐解いた。

なぜSXSWでストーリーテリングなのか?それはメディアやテクノロジーの進化とともにストーリーテリングも変化をしたからで、最近では特にVRによって大きく変わろうとしている。VRは視線の方向をユーザーが決められることで、今までのように直線的な時系列のストーリーテリングが難しくなる。

マーケティングにおいては、ブランドやプロダクトのコミュニケーションを行う時に、より双方向的かつ、送り手の想像がつかないユーザーの反応も、ストーリーそのものに取り入れていく必要がある。

「ストーリーテリング」を紐解く上で参考になったのが、Moment Factory社のSakchin Bessetteによる「Augmenting Reality, For Real」というセッションだ。カナダに本拠地を置くMoment Factory社は、世界最高峰のデジタル・アート集団と言われ、マドンナの最新ツアーやロサンゼルス国際空港のイマーシブ・コンテンツ環境(編集部注:immersive=没入)の設置を担当したことで知られる。

Sackchinは「ストーリーテリングの歴史は、焚き火で物語を話すことから始まった。それが2000年前のコロッセオ(闘技場)での剣闘士競技になり、400年前の演劇、100年前の映画、そしてテレビ、スマートフォンへと変化している」と自ら制作した物語風のグラフィックを用いて語った。彼が想像するネガティブな未来は、人がVRでバーチャルセックスにふける場面になっていた。

VRが最も先行しているゲーム分野でも、ストーリーテリングの重要性が高まっている。3月18日に開催されたSXSW Gamingの中で行われた「Storytelling in Games and Animation」というセッションでは、アメリカのアニメスタジオTitmouse社のファウンダーやLeague Of Legendの脚本家が、「オンラインゲームやVR時代のストーリーテリングは、今までの手法が通用しない」と語った。

テーブルトークRPG「ダンジョンズ&ドラゴンズ」のゲームマスターだった3人が、VR時代のストーリーテリングを語る。

ここで興味深かったのが、登壇した3人とも、かつて流行したテーブルトークRPG「ダンジョンズ&ドラゴンズ」のゲームマスターだったことだ。1974年に発売されたこのゲームは、コンピュータは一切使わず、サイコロや図面をもとにゲームマスターが提示した物語をプレイヤーキャラクターを通して体験する。ゲームマスターはプレイヤーとの会話を通じて事前に構築した世界を提示していく。

このような感覚は、個人的にはTwitterの企業公式アカウントに通じるところがある。企業公式アカウントは、企業のブランドを個性的なキャラクターを通して伝えており、時にはフォロワーからの予想もしないツッコミやタイムライン上のイベントに反応している。こうした活動は、アカウントのみならずブランドそのものの世界観にも影響することから”ゲームマスター”のような感覚が必要になるだろう。

「How Immersive Storytelling Explores Social Issues」というセッションでは、アメリカのテレビ・ラジオ・Webサイトの優れた放送作品に贈られる賞「ピーボディ賞」の主催者やゲーム「Life Is Strange」の脚本家によるトークが行われた。

1941年に始まった「ピーボディ賞」はメディア関連では最古の賞だが、2015年にはFacebookと組み「Futures of Media Award」を立ち上げた。受賞した5作品には、360°動画のプロジェクト「Ebola Outbreak(FRONTLINE)」が含まれており、Oculus社を買収したFacebookならではのストーリーテリングへの取り組みの本気度が表れている。

他にも「The Creator’s Handbook for VR & 360 Storytelling」のようなストーリーテリング関連セッションがあったが、なにせ全部でセッションが2000個あるカンファレンスなので、全てまわることは叶わなかった。

次ページ 「VRの活用を推し進めるプラットフォームの登場」へ続く