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コラム

「広告」から「クリエイティビティ」へ【ACCプレミアムトーク】

ACC賞ラジオCM部門 嶋浩一郎審査委員長×BRUTUS西田善太さん×ホフディラン小宮山雄飛さん 座談会「え、今ラジオ聴かないの?ラジオでしょう普通!」

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ラジオならではの魅力とは?

西田:ラジオのいいところは早回しができない、テレビは流し見ができるし、雑誌はパラ読みができるんだけど、ラジオだけはじっくり聴いていなければいけないというのがいいところだなと。

小宮山 雄飛
GENIUS AT WORK
代表取締役/ホフディラン/渋谷区観光大使・クリエイティブアンバサダー

ミュージシャン/渋谷区観光大使兼クリエイティブアンバサダー。
1996年よりバンド「ホフディラン」のボーカル&キーボードとして活動を開始、数々のヒット曲を生み出す。音楽以外では映画や書籍など様々なカルチャーに精通。なかでも食通として知られ、食にまつわる連載や多くのテレビ、ラジオ番組に出演し”音楽界のグルメ番長”の異名を持つ。2015年に、自身が生まれ育った渋谷区の観光大使兼クリエイティブアンバサダーに就任。多彩な能力を発揮してさまざまな活躍を見せるマルチクリエイター。

小宮山:でも意外とラジオは逆じゃないですか?仕事しながら聴く人が多い、みたいなところがありませんか?

西田:「ながら聴き」というやつですね。そうですね、でも僕はものすごく集中して聴いていました。
ビートたけしさんの「オールナイトニッポン」なんかはメモりながら聴いていましたよ、ギャグとか。

小宮山:僕はこの場に呼ばれていてなんですけど、そこまでラジオを聴いてこなかったんですよ。ラジオとの関わり方としては、21年前に出るところからはじまって、そこから「オールナイトニッポン」のレギュラーなどもさせていただいて。

どちらかと言うと自分で喋っていたり、番組をつくったりしていく上で「ラジオって楽しいな」と感じました。 ラジオを聴く時も「へぇ、この人はラジオだと、こんなテンポで喋るんだ」とか、「この人、今困ってるんだろうな」とか考えてしまいます。

西田:つくり手の感覚で聴いちゃうんだ。自分の出た番組は、聴き直したりしないんですか?

小宮山:恥ずかしくて聴けないですね、かなり酔っていないと聴けないです。

収録だと自分が面白いと思った部分がカットされていたりするのが悲しくて、聴かなかったりもしますね。ラジオをしていて一番楽しいところは、リスナーとのファックス、メールでのやり取りですね。

嶋:僕はハガキ職人だったんで、パーソナリティとのやり取りは楽しかったですね。いろいろ読まれるためのテクニックがあったんですよ。蛍光ペンでハガキを縁取りする人が多かったんじゃないかな?僕はそれを良しとはしなかったですけど(笑)。

あのころは、郵便局で100枚単位でハガキを買う、おかしな中学生として認識されていましたね。郵便局に行くと黙ってハガキが出てくるみたいな。ハガキって中学生にとってみたら値段が高いんですよね。だからハガキ職人はハガキを手で持ったら「これは12枚だな」とか、枚数がわかるんです。なぜなら1枚が貴重だから、粗末に扱えないんですよ(笑)。

西田:番組で紹介されると、何か商品がもらえたりするの?ステッカーとか?

嶋:ノベルティグッズは、いっぱいもらいました。

西田:僕ら三者三様だよね、ネタ参加型と、演者側と、聴き手側。

嶋:ミュージシャンはじめ遠い世界の人なんだけど、1対1で繋がっているような感覚になれるところがラジオの魅力ですよね。ある意味、銀座のママと一緒ですよ。ママは不特定多数の相手をするけど、一人ひとりのお客が、全員ママは俺のことが好きだと思っている。

西田:テレビの人気女子アナが、初めてラジオに出た時の第一声が「ラジオをお聴きの皆さん」で、それを聴いていたラジオのつくり手たちが「それは違うだろう!」と。「ラジオをお聴きのあなた」って言うのがラジオのやり方で、常に1対1だと。それが20年前の矜持だったけどね。

嶋:ラジオというのは、つくり手がどうつくっているのか、それが想像できるというか窺い知れるところもいいと思います。ビートたけしさんの後ろで、放送作家の高田文夫さんが笑ってたり。中学生ぐらいの時からなんとなく、裏方さんがいて番組はこうしてつくられているんだというのが見えてきて、それでラジオがとても身近に思えて。いいな、いつかそっち側に行けたらな、とは思っていましたね。

小宮山:ハガキ職人から、アシスタントに入ろうとは考えてなかったんですか? 僕のリスナーだと、「今日から手伝わせてもらいます!」と言って、学生の子がある日、突然スタジオに来たこともありましたね。

それから、オールナイトニッポンのときに、すごく面白いことがあったんですけど、最終回でディレクターがスタジオ直通の電話番号を言っちゃって。「ここから一番遠い人にプレゼントをあげよう!」って話しになって、リスナーにかけさせて。

嶋:「世田谷です!」「近いわ!」ガチャン、みたいな(笑)。

小宮山:その次は「沖縄です!」とか放送されてないところからもかかってきて、段々、エスカレートして「今宇宙です」とか、「自分の心の中です」とかメチャクチャなことを言うようになって、それは面白かったですね。

嶋:ラジオは元祖ソーシャルメディアだと思いますね。リスナーを集めてフラッシュモブをしたり、そういう、パーソナリティとの1対1で繋がっている感覚を味わえるだけじゃなくて、同じ番組を聴いている人たちとの一体感がありますよね。特に生放送の場合は。

西田:ハガキや電話を通してだけど、唯一の通信手段だったからね、ラジオって。その一体感が上手くいくときは、パーソナリティが喋ってリスナーが「俺、こいつの言っていることがわかる」というときに、ぽっと光が付くとするじゃない。それを上空から俯瞰で見ると、段々光が増えていってやがて日本の形になる。光自体は繋がっていくけど、そのリスナーの一人ひとりは「自分だけがわかっている」と思っている状態が繋がっていくのがいいんだと、それは吉本隆明さんが思想に対して言ったんだけど、ラジオも同じだと思う。

嶋:フラッシュモブもそうだし「お前、どこ住んでんだ!」と、どんどん電話をかけさせたり、ラジオは完全にコンシューマージェネレーテッドメディアですね。ハガキやメールの投稿で成り立つ参加型メディアですよ。

西田:昔は名前も住所もどんどん言っちゃってたし。鶴瓶さんも「ぬかるみの世界」っていう関西の番組で、リスナーに呼びかけて「新世界ツアー」を企画したら、通天閣に5千人くらい集まっちゃって、警察沙汰にまでなって(笑)。でも、ラジオを基本に置いている人って、とても信用できると僕は思います。

嶋:ラジオの喋り手は人の惹きつけ方がわかっていますよね。声だけなのに。あれはすごい。ラジオが人を惹きつける秘密は何なんでしょうね?

西田:テレビというのは、けっこう大人の常識の世界だけど、ラジオは「悪場所」、ちょっと悪い遊び場的なイメージがありますね。夜一人で聴いたりして、下ネタもバンバン出るし。繋がるはずのない人のハガキを聴かされたり。

嶋:タレントさんもラジオに出た方が本音を出せますよね。

小宮山:そうですね、僕もラジオでは本音が言いやすかったです。

嶋:優等生だと思っていた人が悪口を言ったり、あの感じがいいんですよね。

西田:タモリさんと近田晴夫さんが2時間罵りあっているだけということが「オールナイトニッポン」であったんですが、それを聴いてて不安になって、青ざめちゃって、いったい何があったんだろうって。それが10何年後に何かのエッセイで、あれは遊びだったんだとわかって、ただ2人とも能力があるから非常に怖い雰囲気が出てて。そういうのを通しでやれる楽しさとか、そういう答え合わせがなかなかできない現象がいっぱいあって、それが後でわかるというのも楽しいよね。

嶋:実験的な番組構成もたくさんありました。そういうある意味ふざけたことができるのもラジオのいいところですよね 。

小宮山:ただ最近は、ラジオの収録でも同時にネットで動画配信したり、収録場所にカメラを入れて写真を撮ったりもするんですよ、番組のブログ用とかに。それが昔はなかったんですよ、だから散歩するときみたいな服で局に行ったりしていたのが、今はできない。

西田:片乳出してても、怒られない。

小宮山:そうですね(笑)。伊集院さんは放送中にズボン脱いじゃったりする。そういうのが今はできないですよね。ゲストで収録に行くにしても、ヒゲを剃ったり、身なりを気にするようになってしまいましたね。

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